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手を洗うジプシー

読書

昔々
「ジプシー生活誌」小野寺誠 NHKブックス ( 1981年 )
という本を読んだ。
北欧のジプシーの生活を記した本だったが
その中で特に印象深かったのがいわゆる「血の復讐」の他に
手洗い、洗濯の習慣だった。
というのは
結婚して新たにジプシー社会の中に入った女性は
まず、石けんと洗面器とタオルを渡されて
ひとたび外に出たら、帰って来た時に必ず石けんで手を洗い
外出時に着ていた服を洗うように言われるのだと。
洗濯する女性たちの負担は大変である、とあったので
いやー、これは大変だ!と思いつつ
で、ナンでそういう習慣になっているのだろか?と。
筆者の小野寺氏は,
南国の疫病の記憶がそうさせたのでは?
といったことを記していたが
それは本当に病原体に対する手洗いなのだろうか。
(ゼンメルワイスでおググりあそばせ)
自分たちの暮らしを振り返ってみると
家庭や学校で手を洗うしつけや教育はされるものの
我々一般人の「手洗い」は医学的知識に基づくというよりも
トイレの後は手を洗わないとイヤだ、というような
しないと落ち着かない・気持ち悪い、という“ 文化 ”なのじゃなかろうか。
ジプシーは、自分たちはヨソとは違う集団である、という強い自覚を持ち
長い年月ヨソから差別・排斥されてきたことから
自分たちを差別・排斥してきた社会を同じく差別・排斥してきたワケで
彼らの“手洗い、洗濯”の文化は
外の世界の穢れを落とす意味があるのでは、と。
神社の手水のような?
確かに、家を一歩出たら、そこは“ ヨソ ”なのだ。

ちなみに“ ジプシー ”というのは蔑称なのでイマドキは「ロマ」と呼ばれるのだが、この本が「ジプシー生活誌」なので、“ ジプシー ”のままにした。

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