見出し画像

【映画の感想】シンドラーのリスト(1993 アメリカ)


スティーヴン・スピルバーグ監督、スティーヴン・ザイリアン脚本、1993年公開のアメリカ映画。リーアム・ニーソン主演、195分と長尺、モノクロ。
制作費 $22,000,000 (30年前なのでインフレを加味するとざっと2.2倍、ちなみに日本は1.1倍)、潤沢な予算(!)と思いきや『パイレーツ・オブ・カリビアン』とかゼロが一つ多い(億ドル)。


さくっと言うと

ドイツ占領下のポーランド。実話がベース。ホロコーストからユダヤ人を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラー(1908〜1974)が主人公。他の主要人物は収容所の所長、ユダヤ人会計士、ユダヤ人メイド、脇役多め、モブたくさん。ゲットーにて、収容所にて、人が人を家畜のように扱う、貨車に詰め込む、気まぐれに射殺する、同胞の遺体を焼かされるユダヤ人、ユダヤ人女性を殴る親衛隊将校、生産性のない病人は死ぬしかない、などなど。陰惨、胸糞映像多め。しかしまったく救いのない話ではない。事業で成功したいだけのシンドラーにとってユダヤ人はコスパのいい労働力でしかなかったのだが……という話。感動した、泣いたという人もあるらしい。一方でごく少数だがプロパガンダ映画だという指摘も(具体性がないけど)。


ロッテントマト

https://www.rottentomatoes.com/m/schindlers_list

SCHINDLER'S LIST
R 1993, History/Drama, 3h 15m
98%
TOMATOMETER
137 Reviews
97%
AUDIENCE SCORE
250,000+ Ratings


印象に残ったところ

「力とは正義ではない、皇帝が罪人を赦す、慈悲である」とシンドラーが所長に語るシーン。罪人は罰せられ、人々は溜飲を下げる。人は正義を求めるものだが、赦しを可能にするのが力であると。
劇中の文脈でいえば罪人とはユダヤ人であり、ユダヤ人は殺されて当然という含意がある。強者側(ドイツ人同士)の了解事項といってもいい。異常である。しかしホロコーストを行ったナチスは異常である、と片付けていい話ではない。ナチスを選んだのはドイツ人であるといってみたところで何の意味もないように。ナチスは人間が生み出したのであり、ホロコーストは人間がやったことなのである。またやるかも知れない。高が八十年前の出来事。他人事だと思う方はウイグルやチベットを想起されたい。


まとめろ

水は低きに、人は易きに流れる。集団の中にいて「正しい」行い(慈悲)をするのが難しいのは、誰も皇帝のように絶大な力を持ってはいないという点に尽きる。我々が持ち得る力とは相対的なものであり、だからこそ劇中ラストでシンドラーは「もっと金があれば」と嘆いてみせる。
レビューを覗くと、ユダヤ人はこんな酷い目にあったのに何故パレスチナ人を虐殺するのか、といった趣旨のものがあった。むしろ逆だろう。ホロコーストがあったが故に、同じ悲劇を繰り返さないために、強者であろうとするのが生存戦略としては「正しい」。強者であると示すためには力を見せつける必要がある。これは倫理の話ではない。3時間を超える大作。あっという間だった。