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1節 ステージ4

彼女にメールを送ったのは、ある夏の日だった。イラストを描く依頼のメールだ。なかなか返事は帰ってこない。再度、メールを送ってもダメだ。彼女のホームページをみるとしばらく活動してなさそうだ。もう活動をやめてしまったのだろうか?でも、私の直感は、「この仕事を任せられるのは、彼女しかいない」と告げていた。あきらめきれない私はホームページにある問い合わせフォームからもメールを送ってみた。

無理だったかとあきらめかけていたある日、返事のメールがやって来た。それは驚くべきものだった。

ご連絡ありがとうございます。
この仕事を引き受けたいという気持ちはあります。しかし、ご要望どおりにできるか分からない状況です。こちらの事情を理解した上で、本当に依頼するか否かをご判断下さい。
実は、私は3年前に肺がんステージ4の診断をうけました。新薬でかわらない日常をおくれていたのですが、薬の効きが悪くなり、別の薬を試すべく入退院を繰り返している状況です。
そのため、納期が短いと対応できない等、ご不便をおかけすることが出てしまうかもしれません。
このような状況にもかかわらずご依頼したいとおっしゃって頂けるようでしたらスケジュール等について話を詰めさせて頂ければと思います。

メール要約

彼女に残された時間は、もうそれ程多くないのかもしれない。貴重なその時間を割くような依頼をしてもよいものだろうか?私は悩んだ。しかし、メールからは、この大変な状況にあっても、絵を描きたい、仕事をしたいという意欲が感じられた。そして、当時、自信過剰だった私は、自分が書くコンテンツが彼女にとっても誇りとなるものになると確信していた。

そこで、是非ともお願いしたい。と依頼することにした。


依頼したイラストで作成したサイトの方もよろしく


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