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第1話 お金の不思議

 資本主義の問題点を指摘する人たちはその欠点ばかりに目を向ける。しかし、資本主義には長所があるからこそ世界中に広がった。資本主義の長所に目を向けず資本主義の改変を考える事は危険である。長所を保持しない変化は改悪となる事があるからだ。ここでは、まず、資本主義の根幹をなすお金が一体どういうものなのかを考察することで資本主義の長所と限界を考察する。

 お金は不思議なものである。古代、お金は金貨や銀貨など、それ自体で価値があるものだった。それが、金との交換が保証された証書(兌換紙幣とよぶ)になった。そして、現代では、何との交換も保証されていない不換紙幣になっている。さらに、現在、普及している電子マネーでは、お金はコンピュータ上の数値でしかない。このように、現在ではお金の価値を保証するものがなくなっている。お金は、単体では価値がない。お金を原料に何かを作る事はできない。お金を加工しようとすると貨幣損傷等取締法で罰せられてしまう。お金は本当にそれ自体は全く役に立たない。しかし、それで物を買え、サービスを受ける事ができる。財やサービスと交換できるのだ。なぜ、無価値のはずのお金と交換に有益な物をあげる人がいるのだろうか。お金と交換に何かしてくれる人は損しないからだ。その人も、もらったお金と交換に、何か別のものを買う事ができる。「お金は価値ある」と思う別の人がいて交換に応じてくれるからだ。結局、「お金は価値がある」と皆が思うから価値があるのだ。これがお金の価値の源泉である。これは経済学の基本中の基本でもある。

 お金が価値をもつこの不思議な状態は、経済学でいう「均衡」である。均衡は経済学の専門用語なので分かりにくいが平たくいうと皆が「思い込み」を持った状態である。どんな思い込みでも均衡となるわけではない。まず、均衡であるためには、ある思い込みを皆が持っている必要がある。さらに、その状態から、一人だけそれを信じず違う行動をとっても得しない事が必要だ。「お金は価値がある」と皆が思い込んでいる時に、一人だけ「お金なんて無価値」だとお金を捨てると、その人は損するだけだ。お金が価値を持つ状態は、均衡の条件を満たしている。だからこそお金は価値を持ち続けるのだ。

                   次話でお金の正体があきらかに!

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