指す将順位戦7th自戦記 B級3組 6回戦 (vs naoki 7級[919])
指す将順位戦ももう折り返し地点。
長丁場になると思いきや、振り返ってみると早く感じる。光陰矢の如し。
【対局前】
◇対局相手の印象
オールラウンダー
初手さえ固定化されておらず 居飛車振り飛車どちらも指し、相居飛車・対抗形・相振り飛車どれも指しこなす。最も対策を立てづらいタイプ。
相居飛車の場合は相掛かりを好む他 矢倉や雁木などの手厚い将棋を好み、相振り飛車の場合は三間飛車を多用している印象。
◇対戦成績
初手合。
棋風も一局指してみないとわからない部分もあるので そういうのを考慮した戦型選択もなかなかやりにくい。
◇事前準備
[▲先手番]
オールラウンダー相手の場合 こちらがいつも通りに指すと相手だけが対策を一方的に立てることが出来てしまい分が悪い。
そこで今回は初手56歩からの先手中飛車を採用。
理由は以下の3点
・流石にこれを対策されていたら未来予知のレベル(24での初手56歩の採用は今まで一局のみ)で、事前準備の段階で逆に有利を取れる可能性が非常に高い
・先手中飛車対策がわからないので実際に指して教えてもらう
・普段の指し方から思いっきり外すことで、以降 キメ対策を立てるモチベーションを低下させ、より作戦勝ちを狙えるようにする
元々裏芸として極々ゴクゴクごくごく稀に飛車を振ることがあり、指す将順位戦でも成績に関係なくどこかで最低一回はやろうと決めていたので 居飛車を指すと対策が立てづらい本局がちょうど良いと思い 採用に至った。
中飛車であればある程度作戦を絞ることができる。
想定される戦型は①対超速 ②対一直線穴熊 ③対左美濃 ④対三間飛車 ⑤相中飛車 ⑥対向かい飛車 辺り。中飛車対策としては他にも右玉や角交換ミレニアムなどもあるがnaoki7級がやってくる可能性は低そうな戦型はスルーする。それぞれ対策を考えていく。
①対超速
ゴキゲン中飛車対策最有力の作戦。
naoki7級も採用している棋譜があったので割と本命の変化。
中飛車が先手番の場合は居飛車側の手にほとんど余裕がなく、一手逃すと中飛車が抑え込める形になる。
また居飛車が仕掛けのタイミングを逃さなかった場合は評価値的には居飛車が有利になるが 玉形がかなり薄く逆転が起こりやすい。
自分もこの指し方をするとよく捲られるので本局への準備を通して色々学べればと思う。
②対一直線穴熊
これも有力な中飛車対策。
naoki7級が指している棋譜もあったのでこれもあり得る変化。
超速と比べて玉形がとにかく堅いので安定した戦いになる……と思いきや組んでいる間に中飛車からの猛攻を受けることになるので実はめちゃくちゃ激しい戦型。
中飛車からの全ての攻めに対応しなければならないので自分は採用に至っていないが、もし本局現れたらその指しまわしに注目したい。
③対左美濃
これも有力な先手中飛車対策。
超速と組み合わせることもあるが、naoki7級の棋譜からは見つけられなかったので、先ほどの一直線穴熊を志向したときにいかにも先手が居玉のまま何かを狙っているのを察知して途中で左美濃に作戦変更するという展開を想定して対策を練る。
この場合は中飛車ミレニアムで対抗する。左美濃相手にも固さ勝ちが見込める。
正直左美濃になる可能性はあまりないと思っているが面白い作戦だったので取り上げてみた。
④対三間飛車
naoki7級は相振り飛車の場合 三間飛車を指していることが非常に多かった。
「居飛車党の貴方が相振り飛車を指せるんですか??」と吹っ掛けられることも十分にあり得るので、これも出現確率がかなり高い展開。
三間飛車相手にはbsp流を採用。
手厚い陣形で狙いもわかりやすく居飛車党でも指しやすそう。
⑤相中飛車
最近羽生九段が採用し界隈を沸かせた戦型。
naoki7級が採用している棋譜もあったので登場する可能性はある。
⑥対向かい飛車
相振り飛車における飛車の位置は中央から遠いほど強いと言われるように向かい飛車は有力な戦法。
naoki7級の棋譜でも1局確認。
正直この戦型は苦しいが本局での出現率が低めなのは救いだ。
この場合玉を左に囲う必要がありそうだ。
[△後手番]
後手番での中飛車は先手番居飛車側に余裕があり無数の有力な仕掛けがあるのであまり指す気になれない。
普通に居飛車でも良かったのだが、普段と違うことをやるのが今回のコンセプトなので後手番でも工夫してみる。
初手76歩の場合2手目は94歩で相手が端歩を受けるか受けないか、居飛車か振り飛車含みかの組み合わせで作戦を変えて対応する。
初手26歩の場合はまた別の作戦。
~初手76歩~
⑦94歩-受 14歩-受
94歩に対して即96歩と受けられた場合はすぐ14歩も突く。
これも受けられた場合は一旦向かい飛車を経由してから九間飛車に移行する作戦でいく(4→3戦法ならぬ8→9戦法?)。
⑧94歩-受 14歩-受× 居飛車
94歩を受けて14歩を受けなかった場合で、5手目26歩から居飛車を明示してきた場合は変則的な阪田流向かい飛車を狙っていきたい。
⑨94歩-受 14歩-受× 振り飛車含み
94歩を受けて14歩を受けなかった場合で、5手目66歩などで振り飛車も含みにしてきた場合は向かい飛車を経由してから九間飛車に移行する。
⑩94歩-受× 居飛車
94歩を受けずに居飛車で指してきた場合は95歩と突き越して一間飛車。
一見奇襲のようにも映るが、リンク先の記事でも軽く触れたように、実は後手番における超優秀な戦法。
ただ端歩を突き返されると発動できないのが最大のデメリット。
⑪94歩-受× 振り飛車
94歩を受けずに振り飛車できた場合は端角向かい飛車。相振りではやはり向かい飛車が強い。
~初手26歩~
⑫相掛かり
初手26歩の場合はかなり作戦の幅が狭まるのでこちらも素直に84歩から戦う。
相掛かりになった場合は24でも度々採用している62金型を採用する。
◇対局前まとめ
先手番なら中飛車で対策を教えてもらう。
後手番なら先手に合わせて色々やる。
先手中飛車が指したいというのが一番の願いなので後手番になった場合は積極的に千日手を狙う(特に相居飛車から雁木になった場合等)。
【対局開始ッ!】
先手:ntkwmk(919)
後手:* 最速キメ(850)
初手(▲2六歩)~10手目(△6二金)
初手26歩は実は少し意外。
持っている作戦の幅を活かして76歩からギリギリまで撹乱してくると思っていた。
得意戦法の相掛かりで勝負しようということか。
対するこちらも相掛かりは実は指す順以外の棋戦も含む全てのTwitter棋戦でこれまで無敗の戦法。
エース戦法の激突に心躍る。
naoki7級が飛車先交換を保留するのはこれまでの棋譜からわかっていたこと。
62金型がこちらの用意した作戦。
後手番の相掛かりではこういうことをする必要があると思っている。
この指し方の初出がどこなのかはわからないが、私はV王将戦本戦リーグの 葛山わさび-梨山海玲 戦を踏襲している。
葛山わさび氏といえば現代相掛かりを体系化した動画を公開されていることで有名だが(大変参考にしています!)、その葛山わさび氏を撃破した作戦ということで非常に有力視している。
11手目(▲7六歩)~19手目(▲2六飛)
えっ、ここで76歩!?
いつも58玉決めてなかったっけ??
62金をふまえて変えられてしまったか……。
ということで想定局面⑫からは外れていった。
ここで外れるのはかなり予想外。
毎回96歩と58玉は確実に指しているイメージだった。
(確認できていない棋譜で違う指し方をしていたらゴメンナサイ)
角道が開いた瞬間に飛車先の歩を交換するのはこれまで何度も記している流れ。
対するnaoki7級もここで飛車先歩交換。
浮き飛車に構えることで横歩を取られるのを防いでいる。
浮き飛車+居玉が62金型で一番嫌な対策なので初見(持ち時間の使い方から多分そう)でここまで対応されるとは驚愕。
先程貼った24局面分析の前例からも76歩で外れている。
流石は相掛かりの使い手。これは手強いぞ。
20手目(△8二飛)~25手目(▲3六歩)
浮き飛車には引き飛車に構えるのが相掛かりの呼吸。
64歩が62金型が62金型であるための手。
飛車で回収されたときに即63銀と上がれるようにしている。
後手は一歩を犠牲に加速し、素早く好陣形を構築する狙い。先手も歩得は大きいのでどうかという勝負。
これにnaoki7級は乗ってこない。
飛車先の歩交換をした直後だったのでもう一度やるという手順は手損になってしまい抵抗があったか。
となると代わりに何か手を指さなければいけない。
ここで58玉としてきてくれるのではないかと密かに期待していた。
……が2分かけて指された手は14歩。
この辺りの感覚に相掛かり上級者の風格を覚える。
こちらも16歩と返してやはり58玉を引き出させようとする。
そこで指されたのが36歩。
これが相掛かりにおいて重要な意味を持つ手。
ここで後手は選択を強いられる。
①34歩と返さないと35歩と位を取られる
②34歩と返すと互いの角が向かい合う展開になる
次の一手が今後の方針を決める手となるので ここはじっくり考える。
26手目(△6三銀)~31手目(▲3六銀)
62金型の狙いに忠実に指そうと、陣形整備を急ぐために34歩と受けずに63銀と指したがこれが微妙だった。
62金型の狙いはそもそも“64歩を取らせている間に”陣形整備を急ぐというもので若干ズレているし、3筋の位を取ることで先手の方も好陣形に組めている。
一応構想としては42銀から銀多伝の形を目指してこちらも逆側の位を取りつつ 角も引いて活用できるようにしようとしていたのだが、これは後々破綻することになる。
局後の検討では34歩を突くべきだったという結論に。
さて画像の局面だが36銀というのが地味に見逃していた手。34歩を突くか突かないかを考えているときに46銀から歩を狙われる変化も考えていて、その思考が残ったままだったため46銀としてくると思っていた。
36銀は位を確保しつつ棒銀の狙いも秘めている。
先手から仕掛けを見せられてこちらがどう対応するか
──── なんとなく前局と同じ流れを感じる。
32手目(△8一飛)~39手目(▲2四歩)
81飛と飛車を引いて、玉側(になる予定)の歩を突いて、61→72玉と構える一連の手順で右玉に。
61玉の瞬間が中途半端なので52金→62玉の形も考えたが、62金型を否定することになるので指したくなかった。
玉周りを広くするための一手として94歩は必須だと思っていたが、95歩から突き捨てを食らって逆に争点を与えてしまっている可能性を感想戦で言及された。
評価値的にも94歩と突かない方が良いようだがそれはそれで心許ない。
どうにも35歩とされてからこちらが良くなる手順が見つからない。
61玉の瞬間にやはり25銀と動いてくる。
そしてこれにて42銀から銀多伝に組む構想は崩壊した。
銀がそっち側にいくと棒銀に対する防御力が著しく低下してしまう。
というかそもそも手数的に銀多伝に組むまでの余裕がない。
72玉となんとか右玉に組めたが既に左辺は24歩から攻められようとしている。
右玉は もし仕掛けられず持久戦になったとき千日手になればと選んだ意味も少しあるのだが(事前準備で述べたように先手中飛車が指したかったので)、これで千日手の目もかなり薄まったと悲しくなった。
40手目(△2四同歩)~41手目(▲2四同銀)
銀の進出が止まらない。
ここで結局角道を開けるならあの時34歩としておけば良かったんだ。
仕掛けられていて形勢も悪く反撃の手段もないという
最悪な序盤戦にしてしまった。
過ぎたことを悔いても仕方ないので今出来ることを考える。
34歩を突いて22角成なら同銀で23歩には31銀と引いておく。単に23歩にも88角成。
これで何とか耐えているのか……?
42手目(△3四歩)~45手目(▲8八同銀)
と思ったら単純に23銀成とする手を派手に見逃していた。なんかもうヤバイ。
ひとまず88角成として画像の局面。
ここで長考に沈む。
ここでの長考は決め手を探したり方針を定めたりする思考時間ではなく単純にどうにも出来なさそうな気がして悩んでいる時間で、一番やってはいけない類いの長考。
しかし手が見えないのはどうしようもないので考えるしかない。
誤魔化そうにも先手陣に取っ掛かりがなく、単純な手をうっかりした直後なのもあってかここはかなり形勢を悲観していた(点数にして1000~2000点くらいは悪いと思っていた)が、naoki7級は 右玉相手だから棒銀で突破しても敵玉が遠い故にあまり上手くいっていない と捉えていたようで、実際こちらが不利ではあるものの大差ではないようで 自分の形勢判断が間違っていたようだ。
画像の局面では35歩としておけば互角だったらしい。
以下32成銀同銀22飛成に23銀打とする手が指しにくい。持ち駒の銀をここに使うとますます攻め手が無くなってしまいそう。
しかし以下11竜36歩45桂に37歩成と出来るのが大きい。同金には55角で金と龍の両取りがかかる。
よって58金と逃げて互角の形勢。右玉の遠さが活きている。
ここからは27角や44歩で高跳びした桂馬を狙っていくのが良い。
本譜はどうにか誤魔化せないかと25歩から棒銀に対応。
同桂なら23金と取れて逆転だがそんな簡単な手を見逃してくれるはずもなく……。
46手目(△2五歩)~53手目(▲2二飛成)
25歩は約3分の長考の末の着手。
この手くらいしか見えていなかった。
複数の手の比較ではなく0手から1手を探す、マズイ時間の使い方。
対して普通に25飛と取られてしまう。
これで33桂と飛車に当てながら跳ねることはできたが24飛とされてどうしたものか……。
ちなみに24飛に代えて33同成銀とこちらの唯一の攻め手を消して95歩から攻められていたらこちらが劣勢に陥っていたようだ。
ここらへんの攻防はどうやってもこちらが有利にならないのでやはり序盤で63銀を急いで35歩と位を取らせたのが悪手ということになる。
本譜24飛に対して約2分で35歩と指す。
先手陣の唯一の取っ掛かりは桂頭で、そこを目掛けた一手。
本当はもっと考え込みたかったが、ハッキリこちらが悪いと感じていたのでせめて時間だけは勝っておかないとと思い そこは意識していた。
飛車を成り込まれて画像の局面。
銀が丸々取られてしまうのは辛いので21銀打などと受ける手も一瞬考えたが、26龍と引かれるとやはりこちらの攻めが消えてしまう上に打った銀が勿体ない。
前述のように相手からの攻めを右玉で受けるという展開は前局を彷彿とさせる。
そういえば前局の振り返りにて「仕掛けに対して より強力な攻めを見せる+相手の攻め駒を攻めることで結果的に攻勢をとれる」という考え方を学んでいた。
今まさにそれが活きる展開ではないか!?
受ける手がないなら攻め合うしかない。
銀をボロッと取られるのは痛いが、相手の陣形も一度届いてしまえば火が回るのは早い。
35歩からの流れに従って36歩と桂頭を攻める。
25歩の効果で33に跳ねた桂馬もはたらいている。
54手目(△3六歩)~57手目(▲9三角)
ここでnaoki7級は秒読みに突入。
時間に関しては何とか目論見通りになったが、それでも長考一回分くらいの差なので作戦成功!という気分ではなかった。
37歩成には同金で桂馬を跳ねてどうかと読んでいたところに93角!
これは完全に読みの外にあった手。
一瞬何かのクリックミスまで疑ったが、なるほど同香に左右挟撃形を作ろうという狙いか。
感想戦では先に95歩の突き捨てを入れていれば歩で代用できたと後悔されており、その展開になっていたら厳しかった。
繰り返しになるが、右玉にする上で必須だと思っていた94歩が実は争点を与えており 94歩を突けないようでは右玉にする甲斐もなく、そもそも右玉になったのは先手が棒銀を見せてきたからで、棒銀の変化を与えたのは先手に35歩と位を取らせたからなのでやはり35歩は指させてはいけないというところに帰結する。
さて本譜に戻って93角に対してはまず王手で金を取る。一番良いタイミングで角を取れるようにしたい。
58手目(△4八と)~65手目(▲9二銀)
36桂、49角まで入れてから角を取る。
次に59角とすることで上部への脱出を防ぐ狙いだ。
対して92銀から早速左右挟撃態勢に。
スピード感溢れる指しまわしだが、ここで詰みが発生していたようだ。
58金か59銀が一手目で、どちらも意味は同じ。
一見上部に抜けられてしまいそうだが、77玉には55角66歩65桂(一手目58金とした場合は以下67玉57金)で詰んでいる。
「駒は取られる寸前が一番はたらく」と言うが、今にも取られそうな飛車がちょうど逃げ道を塞いでいる。
77玉だと詰むので79玉と逃げるが68に金駒を打って清算してから59角78玉68金77玉67角成までで詰みとなる。
壁銀の形を上手く咎めており 上部に逃げられても飛車桂が控えているという見切りが必要だったが、本譜ではまず59角と打って上部脱出を防ぐという発想から抜け出せず この詰みを逃す。
66手目(△5九角)~69手目(▲8一銀不成)
59角には79玉の一手。
ここで飛車を逃げる手も考えたが83金などから寄ってしまうと思い(しかし51飛と逃げておいても83金に61玉であとは金駒で防御していれば耐えているようだ) 逆にこの位置に留まっている方が良いと判断し58銀と指した。
次に69金までの簡単な詰めろで、仮に77銀と壁銀を解消しても67銀成から角と連携して先手玉を寄せる狙いの手だが、この手が大悪手で一気に逆転してしまった。
58銀以下77銀67銀成には81銀不成同玉61飛71金91金82玉62龍72銀打71飛成83玉82金84玉83金打同銀同龍85玉86歩までの詰みで負けてしまう。
61飛と打つ手は非常に見えにくいので、この詰みが発見できなかったとしても58銀以下77銀67銀成同金同角成の瞬間に81銀不成同玉82金同玉62龍72金71銀で、以下83玉には82飛同金同龍、その他92玉などには82金同玉同龍で詰みとなる。
ということで58銀からの寄せは本来成立していなかった。
本譜は58銀の瞬間に81銀不成と王手で飛車を取られた。
これには同玉で、依然69金までの詰めろ状態なので62龍などは通用せず 何とかなっていないかと考えていたが、例の61飛から負け筋があった。
61飛の意味だが、同金と取ることはできず、また二段目に浮くのも62龍が王手で入ってしまい これが飛車の紐がついており取れない(これが6筋に飛車を打つ意味)ので、71に何か駒を投入するしかないが 91金と打って強引に玉を浮かせて(同玉は71飛成から一間龍の形)62龍を王手にし、83玉に92龍が91の金と連携した好手で84玉83金85玉に77銀が先手玉周りを広げながら後手玉に86歩までの必至をかける最強の攻防手で、後手はどうやってもこの必至を解除できず(75歩には63飛成でまた必至。75金と強引に86の地点に利きを足しても同歩で更に同歩と逃げ道を開けてもさっき渡した金を84に打たれて詰み)、先手玉も広くなっていて詰まないので先手が勝ちになる────というのを見越した超難解な一手。
次の一手問題で出されても見えないくらいなのに秒読みの中でこれが発見できたら強いとかいうレベルを超越している。
70手目(△8一同玉)~75手目(▲7七桂)
本譜は21飛でとりあえずの詰みは免れる。
どこかで飛車を引いて自陣龍で寄せを妨害される展開を予め回避するために一旦31歩から飛車の筋をずらしてから72玉とした。
ここでnaoki7級は77桂から玉周りを広げてきたが、感想戦では77銀の方が良かったという結論に至った。
77銀の場合67銀成と迫りたくなるが、77銀によって86歩に紐がつくようになっているので82金から後手玉が詰んでしまう。
77桂も同じように上部を圧迫しているように見えるが68金から詰みが生じていた。
68金同金同角成89玉78金98玉88金同玉77馬同玉67銀成88玉77銀98玉89銀同玉78成銀98玉88成銀97玉85桂が手順の一例。
手数自体は長いものの駒を取りつつ確実に寄せていく指し方なので進めていくうちに辿り着くような手順だ。
途中67銀成に代えて85桂打からの方が早く詰むのだが(以下66玉65歩55玉44銀46玉35銀打56玉67銀不成まで)、中段玉を巧みに寄せていく手順でこちらは読みにくい。
本局はここに至るまでに秒読みに突入。
詰みを読みきれず、69金からの詰めろがなくなったので金を自陣に投入しようと考え 71金と82金を同時に受けるために71金と指した。
しかし83金を受けられていないので、同じ方向性で考えるなら61金打の方が良かった。
76手目(△7一金)~79手目(▲8四香)
71金に83金は同玉71龍には68金から前述の詰みがあるが、ここで詰ませられるならさっきやっているので 72金打と受けてどうか。
飛車を手に入れられれば69飛からの詰めろがかかる。
67銀成に84香と手に入れた香車を打ってきたが、代えて同金で先手優勢だった。同角成と取ると82金が成立してしまう。以下同金62龍同玉71銀72玉82銀成同玉84香83歩81金72玉71龍までの詰み。
よって52銀89玉の交換を入れてから67銀成をソフトは推奨している。
本譜84香には後手の勝ち筋があった。
ここらへんは評価値がジェットコースターで遊んでいる。
秒読みの醍醐味を凝縮したような終盤戦だ。
80手目(△7八成銀)~83手目(▲8九玉)
画像の局面で78金と打っていけば先手玉に詰みがあった。
以下98玉88金同玉に77馬が好手。同玉に85桂と跳ねて、86玉と逃げると75銀同歩77銀で角が利いており綺麗に詰む。これは凄い詰みだが75銀に代えて77銀85玉73桂でも詰みなので指し進めれば勝てそうだ。
86玉だとダメなので88玉と逃げると77銀98玉97銀89玉88銀成で詰み、66玉は54桂55玉44銀56玉45銀打で詰み。
これを読みきれず、本譜は77角成から王手で迫るがこれは詰まない。
観戦者たちも詰み無しと判断していたようなので自分が弱かっただけという話ではないようだが……こういう直感的なものは詰将棋の積み重ねによって育まれるんだろうなぁ。
秒読みの中で膨大な変化を読みきれないのは当たり前だから読まなくても直感的に急所に手がいくようになりたい。
84手目(△6七角成)~87手目(▲9七玉)
67角成に98玉で先手玉が詰まないことを悟る。
こうなったらどうにか紛れを生むしかないのだが、どうするのが良いか。
89銀を決めるのが得なのかどうか考え、97玉とさせた方がこちらに手番がまわってきたときに端攻めの脅威が増すと考え89銀97玉を入れる。
そしてどうやって再び手番がまわってくるようにするか。
83歩や82金などと受けてココで粘るのは王手されまくって二度と手番がまわってこないかもしれない(実際は尻金の形で詰みが生じていた)。
ならば52銀から上部脱出に一縷の望みをかける。
桂馬や馬が地味に利いているので即詰みはないはず。
歩の壁に阻まれて入玉は厳しいにしても、必至をかけられたときに最後の足掻きで暴れて勝つか負けるか……しかない。
88手目(△5二銀)~97手目(▲7四銀成)
52銀には71龍から先手に勝ち筋があった。
同玉は並べ詰み。
よって63玉と逃げるしかないが、55金で必至がかかる。仮に放置すると72銀同金同龍同玉52龍62金82金までの7手詰。
72銀を受けるなら「敵の打ちたいところに打て」で72金打がわかりやすいが、そうすると65歩が次に64歩までの必至。同歩は一手詰なので同桂とするよりないが同桂がまた必至(放置すると73金同金同桂成同金62金まで)。71金と龍を取りつつ詰めろを解除するが85桂がまた必至(放置すると73金から三手詰)。
この詰めろが解除不可能(72金上には73金同金同桂成同金同桂成同玉83金62玉73金打51玉62銀まで)で、先手玉は52銀と指す前と何も変わっていないので先手が勝ちになる。
71龍63玉55金の手順は指摘されている観戦者がいらっしゃったので、もしそうなっていたら敗戦濃厚だった。
本譜は83銀で63玉と上に抜けていく。
33龍に「端玉には端歩」の95歩が詰めろ。
これが89銀を入れた効果。
55桂から王手がくるが詰みはない。
14龍には、21飛に31歩と受けたときみたく34歩を入れようか迷ったが、龍が近づくのは逆にこちらの不利にはたらくと考え 単に44金と受けた。
74銀成とされて画像の局面。
遂にもう一度手番がまわってきた。
74銀成に代えて95歩と取られていたらまだ勝負はわからなかった。
例えば同香とすると86玉78銀成95玉から相入玉模様となる。
よって95歩には素朴に78銀成がソフトの推奨手。以下35金と詰めろをかけて55玉96玉66玉44金78成銀と入玉していく。
歩のバリケードで入玉は困難かと思いきや意外と入玉を狙えるようだ。
評価値上は後手が勝勢だが、すぐの詰みはお互い無いため更なる混戦が予想される。
本譜は96歩から詰みが生じている。
端は89銀としたときから狙っていたこともあってか詰み筋にも気がついた。
ようやく見えた。
98手目(△9六歩)~終局
85歩は馬が玉を睨んでいるため同桂と取ることができない。
紆余曲折、二転三転あったがこれにて決着。
【対局後】
◇本局の振り返り
序盤で上手く指されてから形勢を悲観していたが、前局の検討からの学びを活かしてなんとか手を作れたのは良かった。
93角は本局では決定打にはならなかったものの強烈で、右玉を指す上で、また相手にする上では知っておいて損のない手だと思った。
怪しい局面も色々あったので相掛かり全勝記録をのばすことができてひとまずホッとしている。
先手中飛車を指せなかったのは残念だがまたどこかの機会でやってみたい。
◇最後に
3回戦で想定局面を10個も出して、これを超えることはもうないだろうと思っていたらまさか今期中に超えることになるとは……。
文字数も12000字を超えてこれも過去最長かな。
特に後手番のときの捻った指し方はオールラウンダー相手に用意するんじゃなかったね……正直かなり骨が折れた。
これで不戦勝含めて6勝で勝ち越し確定!
ここで満足せず 1つでも多く勝ち星を挙げられるように頑張ります。それじゃあ。
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