![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/91518576/rectangle_large_type_2_4b7311e30c8a1492aa52e1d0320080ff.png?width=800)
色はビタミン
子どもの頃から大人になるまで、あまりオシャレに関心が無かった。高校時代、仲良しグループで原宿へ買い物に出かけたものの、何を買って良いのかわからず、手持ち無沙汰になってしまった。おしゃれな女子たちは、とても上手にコーディネートを考えてあれこれ購入していた。引け目を感じた。
大学時代は日本が好景気でブランド物が華やかりしの頃だった。有名なロゴの入ったバッグを持つ子、上から下までとても素敵な装いの子などが大勢いた。相変わらず私はおしゃれに縁遠かった。それは社会人になってからも続いた。
通訳者になりたての頃は、黒子のような仕事ゆえ、いつも黒ばかり着ていた。とりあえず黒スーツを着ていれば無難。フリーで仕事をしていたので、同じスーツが続いても、お客さんは毎回異なるし、ご一緒する同僚通訳者もその都度別の方々。よって「着た切り雀」でも目立たなかった。
その考えが変わったのは数年前。色が心理にもたらす好影響について知ったから。明るいカラーが自分の視界に入ると気持ちが上向きになる。たとえば明るめのシャツ。目が前を向いていても、視界の下の縁あたりに自分の着ているシャツの色が入ってくる。地下鉄で立っていると、窓に映る自分がいる。街中を歩けばショーウィンドーに自分が投影される。そんなときに明るい色だと嬉しくなる。
以来、自分なりにルールを設けている。それは「曇天・雨天時こそ明るい色を着る」というもの。逆に「好天時は暗い色もOK」という具合。これをずっと実践している。
現代アート界で目下、大いなる注目を集めている杉田陽平さんは、色についてこう述べている:
「鮮やかな色って、心のビタミンではないでしょうか。ビタミンには、人が生きるのに欠かせない栄養=力があります。」
色は日常生活でややもすると無意識の範疇に追いやられてしまう。だからこそ、その存在をありがたくとらえながら、心が元気になる色に囲まれて生きていきたい。
(「日経マガジンスタイル」2022年11月18日号)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?