見出し画像

勉強に救われる

日経新聞の日曜版には"My Story"という見開きカラー版の記事がある。各界の著名人が写真付きで登場。人生論や仕事への思い、趣味などが書かれている。10月2日はイーパーセル社長・北野譲治さんであった。

北野さんは、30代に人生の師と出会い、大切なことばを受け取った。その意味するところは、

「欲を捨て去り考え抜いた先に、自分の本当になりたいもの、やりたいことが見つかる」

であった。以来、自分が社会に対して何ができるかを考え続けてきたという。そして仕事を変え、起業もしてきた。50歳を超えた北野さんは、今、

「半白を過ぎたら自分にしかできない仕事、公に尽くす仕事を」

をモットーにしておられる。「半白」とは「50歳」のことだ。

社会に目を向けてみると、たとえば大学の場合、入学直後からキャリア指導がある。いや、大学どころか今は中学生ぐらいから将来の仕事について考える機会が多い。就きたい職業について考え、そこから逆算して高校・大学を選び、今の勉強に反映させる。とてもロジカルな解釈だ。

ただ、私自身を振り返ってみると、今の通訳や講師の仕事に「子どもの頃から強烈になりたかったから就いた」わけではない。むしろ、程遠い。

では、なぜ今、私はこの仕事をしているかというと、実に多くの偶然や出会いがあったから。前にも書いたが、私は育つ過程において様々な課題を抱えてきた。だから勉強を通してでしか自分を証明できなかった。自分を慰め、寄り添ってくれたのも勉強だった。だからその結果、たまたま好きだった英語を通じて通訳の仕事を始めた。デビュー当時、「世の中のお役に立ちたい」との言葉を口にしたことはある。けれども実際は、とにかく家での人間関係がしんどかったから、勉強に逃げただけ。それが通訳という仕事に結びついたに過ぎない。要はすべて「たまたま」の結果だったのだ。

だからこそ、今、私は、「自分を救ってくれた勉強」というものが、「心に課題やしんどさを抱える人にとってセラピーになる」ということを伝えたいのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?