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集中力

通訳初心者向けのセミナーで、よく私は質問を投げかけます。

「通訳者の集中力、どれぐらいだと思いますか?」

この答えを聞くのが実は楽しいのですね。色々出てきます。5分、10分、15分、30分、60分などなど。聞きながら内心頷いたり「無理無理っ!」と思ったりします。

で、答えは?

実は絶対的な正解はありません。ケースバイケース、業務によりけり。国際会議やセミナーの場合、10分が割と多いですが、たとえば放送通訳では重要なニュースの場合、5分交代になることもあります。最近の例では、大統領就任式などが5分でした。

一方、「60分」はさすがに難しい。何しろ同時通訳をしている間は音と話者の表情などに神経を集中するため、60分ずっとそれに全体力を傾けるのは難しいのです。ただ、CNNの放送通訳現場は30分交代ですので、かなり長い方になります。もっとも、途中でCMが入るのでそこで一呼吸入れられます。

さて、昨日、大宮で落語に行ってきました。好楽・昇太・たい平師匠の三人会。「笑点」でおなじみ3名の豪華イベントです。こうしたホール落語の場合、たいてい2時間なのですが、では観客として観る場合、私自身の集中力はどれぐらいかなと思いながら楽しみました。

で、わかったこと。それは最初の前座さんとお一人目の時はかなり集中力が高かったのですね。最寄駅からホールまで歩いてきて座ったばかりですので、血の巡りも良く、「さあ、今日は落語を楽しむぞ!」と意気込んでいることもあり、集中力も高くなります。

そして大いに笑ったところで休憩。おそらくここまで1時間ぐらいでしょうか。15分ほどの休憩が入ります。手を洗いに行ったり、フォワイエで一服できる時間となります。そしてその後、残り2名の噺となりました。

噺家さんの素晴らしいところは、観客の反応を見ながら緩急を付けつつ噺を運ぶところ。間(ま)の取り方も笑いへの誘いも実にお見事。私自身、授業で「はなし」をする立場ですので、何か頂けるヒントは無いかなと思います。

さて、集中力の話に戻ると、私の場合、休憩から座席に戻って少し経ったあたりで意識が途切れがちとなりました。たまたまこの日がそうだっただけかもしれません。でも人間は機械ではないので、どれほど睡眠をたっぷりとっていても、体調が万全であったとしても、永遠に100パーセントの集中力を持続するのは難しいのだなと改めて感じました。

というわけで、もうすぐ新年度の授業が始まるのを念頭に、今年もどう授業を運営していくか考えているところです。何しろ1コマ100分授業ですので。

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