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今年もっともヤラかした話だ

保護司と雑談を終え、ファミマでメルカリで売れた商品を出し、カミさんのスイカ買って帰宅。

いい歳して保護観察の身だから、月二回保護司との面談がある。しかしそう苦痛でもない。保護司の方も上から目線で話す人じゃないし、コーヒーとお茶菓子いただきながら、近況報告と、彼との共通の趣味である「山」の話しをする時間は心地良いものだ。

今日、先日行った飯能の話をしたらアニメ「ヤマノススメ」の話題となり盛り上がる。保護司の方も結局なお歲だが、アニメなんて見てんのね!
更に「山と食欲と私」という漫画を勧められ、帰ってすぐググッててみたところ。

さて、その保護観察処分、僕は小説でいうところの利根川と仙道とともに、併合の裁判で判決を頂戴し、僕だけこの処分が付いた。それは僕が主犯と認定されたことからなのだろうが、もう一つの要因がありそうだ。

裁判官にくってかかったからだ。
被告人質問で「事件関係者との今後接触」について触れられた時に、僕は
「こちらからコンタクトは取りませんが、関係者に『謝れ』と言われたら頭を下げなければいけないでしょうね」と答えた。

これに対して裁判官が「犯罪者と関わりを持とうとするのは反省していない」と断じた。

僕は「そもそも積極的に関わるとは言ってないし、第一彼らは反社会勢力の人間でもなく、普通の人間だといことは、証拠の調書を読めばわかるでしょ」と反論。
すると裁判官は「あなたには犯罪傾向が強い人間が集まる。それはあなたが普通じゃないからだ」とネチネチといたぶり始めた。ここで僕の戦闘モードに火がついた。

そもそも普通って何なんですか!

ただでさえ、被告人質問の前にあった、情状証人の尋問で、検察と裁判官が、利根川と仙道の家族をいたぶるのを見てイラっときていた。

「じゃあ旦那さんは、貴方が監督すると言う訳ですね」
「はい。私がしっかりと見守ります」
「じゃあこれまでは、見守ってなかった。そういう関係だったんですね」
「いえ、そういう訳ではありませんが、忙しくて会話が不足していたかもしれません」
「じゃあ今後は会話すると」
「はい」
「じゃあなんでこれまで会話しなかったんですか。それにこれまでできなかった事が、どうして出来ると言いきれるのですか」
「それは、こういう事がありましたから、今後は主人に対して疑いの目も持って臨みます」
「疑いの目を持つと仰いましたが、そうであればご主人は会話しなくなるんじゃないですか」

そんな具合の吊し上げだ。検察なら分からなくもないが、裁判官もだ。しかも犯行を行った人間に対してではない。

怒りが爆発した僕は、あなた方の「普通」は普通じゃない!とまくしたて、弁は熱を帯び、傍聴席がザワつくと、裁判官は

「ほら、貴方の意見を聞いて、聞いてる人も呆れてる」と半笑いで煽りを入れてきた。ここに至って

しまった~!やらかした。

と気付く。それから僕は黙った。

裁判が終わって、地下の仮監獄に向かう廊下で、僕を連れて歩く老刑務官が言った。

馬鹿だなぁ。お前の言ってる事は正しいけど、これは儀式みたいなもんだから、ごめんなさいしときゃいいんだよ。

言われなくとも分かっとる。あの場で自己主張しても意味はなく、ハイハイ言っておくのが身のためだ。

やらかした!

とほぞを噛む思いだった。裁判後には弁護人も接見しにきて、「執行猶予だと思うけど、演説ぶっちゃったからねぇ。どうなることやら」とボディーブローをカマしてくる。

拘置所に戻って、恥ずかしいことに、声を上げて泣いた。動揺したまま友人に手紙も書いた(この手紙こそ黒歴史だ)

一夜明けるとスッキリもして、他の二人のように吊し上げ食らってシュン太郎のままでいるより、人間としてはマトモかな。言いたい事も言えて良かったと思えた。

吹っ切れはしていたが、判決前はそこそこ緊張した。結局、執行猶予判決。僕だけ保護観察処分。

とまあ、今年一番やらかした話だ。裁判官は主文で「犯罪傾向が高いから」とのことで保護観察処分に付すとのたまい、またイラっとはしたが、執行猶予で釈放というのに気を良くし、締めの発言の機会でブチ切れるまでの事はなかった。

でも、裁判官には感謝です。おかげで良い保護司の方とも巡り会えて、月二回、山の話をしたり、愚痴を聞いてもらえたりするわけだから。

そこまで見通していたとしたら、その裁判官は偉大だね。

保護観察はあと三年半続く。

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