カミングアウトの価値は
先日、変わった事をするのが好きなある友人が「マイノリティー座談会」なるものをやるから参加しないか。と声をかけてきた。自分が何のマイノリティーに該当するのか、心当たりあるような、ないような。
なので訊いてみると。
「お前は前科者だからな」
だそうだ。
それは間違いないのだが、声を大にして言いたくない事実であるわけで、参加を丁重にお断りしたところ。
「百合が来るぞ」
という一言に好奇心が負けてしまい、一撃で陥落した。
これも時代だなぁというZOOMでの座談会当日。参加者のリストを見て若干引く。
セクシャル系ばっかしやん!
主催者に聞けば、様々なマイノリティーに声をかけてみたが、ことごとく断られ、この面子になったらしい。
そうであれば、自分は恐らくマジョリティー側の人間であろうから、場に相応しくないだろうし、参加を見合わせようと思ったが、まあ百合の人の顔も見てみたいし、黙っていれば良いかなとも思い。とりあえずやってみることにした。
最初に、最近のセクシャルマイノリティの分類についての話題があって、それによると、肉体的性別と自分の精神的性別と性的指向で立ち位置が違うらしい。
例えば、僕が興味津々であるところの「百合」も、女性が男として女を好きになるパターンもあれば、女性が女として女を好きになるパターンもあって、これは似て非なるモノらしい。
これに男と女という選択肢だけでなく「分からない」「どっちも」「その他」などが加わるという。カオスだ。
座談会は見た目の男女比率は半々くらいで、世代的にはややアダルト。
自己紹介から始まって、それぞれ自分のセクシャルについてカミングアウトする流れで、ついに自分の番となる
「真田と申します。前科者です」
場違い感ハンパねぇー!
ピーンと張り詰めた空気となったが、次の人が自己紹介に入ってくれたおかげで、座が再び温まる。
それから主催者が進行役となり、各自に話を振るかたちで、マイノリティーと気付いたキッカケ。パートナーとのこと。社会とどう折り合うか。などの話題が進んでいく。
「で、真田さんはどうして前科者に?」
オレにそれ振るんか〜い!
「最初は覚醒剤ですよ。20年くらい前に、クスリをアチコチ配って色々便宜をはかってもらうようなことをやっちゃって。だから営利ではないということで軽かったんですが、実刑で。2回目はパチンコ屋で若造ひっぱたいちゃって、ああ。これは前歴ですね…」
そこから、質問雨あられ、なんだか僕の独演会のような様相になってしまい、盛り上がったことは間違いないけど、趣旨から大外れしたし、百合の人用に考えたギリ失礼じゃない質問も不発に終わってしまう。
なんだかなぁ。
僕も基本的には聞かれたらホイホイ喋っちゃう性分だし、親しい友達ならみんな知っている話なのでカミングアウトというほどの事ではないけど、座談会の人々は「衝撃のカミングアウトでした!」と口々に言っていた。
カミングアウトというのは基本的に、社会に隠していたマイナス要素をおおっぴらにすることなので、かなり心理的ハードルは高く、座談会参加者が様々な経緯を経てカミングアウトした時の感情の高ぶりに比べれば、僕の昔話などたいしたものではない。
セクシャリティについては、身近にゲイの友人がいたり、若い頃にはニューハーフとお付き合いしたこともあるので、偏見なくありたいんだけど。
「スーパーの半額シール狙いでよく出くわす女装したオッサンがキモい。はい。僕は差別主義者です」
ああ。カミングアウトしてしまった。
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