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推し活ということ。

 小学6年生から高校を卒業(中退だけど時間的に)するくらいまで、XJAPANのYOSHIKIが人生の全てだった。小さい頃から身に付けたYOSHIKIイズムは今でも行動の指針になっている部分もある。「天才は1%の才能と残りの努力」だとか、「演(や)ってやれないことはない、演らずにできる理由(わけ)がない」とかね。ステージでドラム壊してカレーが辛くて帰っちゃうだけがYOSHIKIじゃないんだよ。お酒の飲み方もYOSHIKI(とhideちゃん)に倣った(習ったわけではない)お陰で散々な目にあって最終的に禁酒するまでになった。ロックの神様ありがとう。
 アンバランスにビジュアル系を駆け抜けた後、新世紀エヴァンゲリオンの綾波レイのコスプレを経て一旦そういう所謂追っかけとかファンとか言われる活動から離れる時期が長く続く。
 そして、2020年末である。ただ1つのツイートから大変な世界に迷い込むことになるとは誰が思おうか。当該ツイートは広大なTwitterの海に飲まれて探し出せなかったが、概要は「『昔、電話番号を書いたファンレターを送ったことがある。』という事を晒された。」というツリー。勝手にフォローしているだけなのでそのやり取りを面白く拝見していた矢先、一体どんな相手にファンレターを書いたのか興味が湧いてついに検索してしまうのである。

その名は「鳥肌実」。

 聖子ちゃんがビビビ婚だなんて言ったのはいつの事だったか。脳天直撃セガサターン(古い)!!!ピカチュウ!!!10万ボルだ!!!ピッカー!!!文字通り雷が落ちた。脳から脊髄を抜けてブラジルを超えて宇宙空間まで。視界に星が弾け、目に映る全てが極彩色に輝きを取り戻す瞬間。恋である。まさしく今ここに恋に落ちた、私は(強調の倒置法)。
 やばいやばいやばい。好きになっちゃいけない匂いがする。これは大変な事になる予感。もう中高生ではない立派な大人である。金も時間も足(自分は免許無いけど)もカードもある。何だってできる。いざ!!集え同士よ!!推し活という御名の元に!!!古の勇者よ!!!…っと、勇みに勇んで最新情報と愛を語り合う同胞を探す為、検索に検索を重ねた。無い。情報が無い。ヒットする記事は数十年単位で過去の物ばかり。ええええ…誰か…彼の今を教えて…。のたうち回りながらAmazonとメルカリ、ヤフオク、まんだらけを漁り音源と写真集、当時の雑誌やグッズをあるだけ取り寄せる事数ヶ月。2021年6月。遂にこの日がやってきた。全く動かなかった公式ホームページに熊谷公演の日程が載った。熊谷!遠い!2時間かかる!いや、2時間で行ける!!!迷う事無くすぐさまチケットを予約。会える。探し求めていたご本人に…!!!
 Twitter及びブログでライブの所作を予習し、開場15分前に到着。誰もいない。え、オープン待ちで並んだりしないのかな?入り待ちのファンとかは?本当に今日ここであるのかな???…5分前。誰もいない。半ベソである。不安をよそにとうとう定時に開場し、自動的に一番乗りの私は心臓が口から飛び出しそうになるのを必死で堪えているのをおくびにも出さず涼しい顔で最前列中央の席を確保する。
 鳴り響く軍歌。ライブハウスの匂いが妙に懐かしい。地元でピストルズのコピバンやってたこともあったなあ…などと緊張を通り越して現実逃避しているとぼちぼちお客さんが入ってきて安心する。よかった。ミナサンコンニチハ。シンザンモノデス。ドウゾヨロシクオネガイイタシマ…突然大きくなるSE。三島由紀夫の演説とノイズ。混乱する脳内。不意に暗闇を照らすスポットライト。我が麗しの君、降臨。
 今日(こんにち)まで生きててよかった。2時間電車乗ってきてよかった。あの日、何気なく検索さえしなければ。こんなにも胸を抉る出会いが今生であり得るなんて。神様ありがとう。空よ大地よありがとう。この方を育んだすべての奇跡にありがとう。同じ時代に生まれてくれてありがとう。愛よ。鼓動よ。我が血潮よ。
 あゝ民衆よ、これが推し活である。苦悩と享楽の日々をしかと見届けよ。




 

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