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【ボーイ戦術書】No.29 「ボーイ的確定申告マニュアル Vol.2 収入の仕訳」

 Vol.1は確定申告の下準備について書いた。今回は実際の記帳について書いていく。


 早速だが本題に移る。確定申告は大変な作業と言われるが、たかだかボーイ個人がやる分にはよほど色々な事に手を出していない限り大した労力ではない。基本的に現金商売なのだから。

 大変だとしたら、毎日の記帳をサボって一年分を一気にやろうとしていたり、売上の管理や経費に関わる領収書などの扱いが雑すぎるのではないかと思う。

 という事で毎日の記帳がとても重要になってくる。今回はその具体的な例を紹介。

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 『やよいの青色申告 オンライン』で青色申告をすると仮定して解説する。

記帳時の前提、基本的知識

記帳のお作法

 青色申告で求められるのは「複式簿記」。それをするにあたりまず出てくる謎の「貸方」と「借方」について。貸方負債と純資産、借方は資産に該当するもの……とあるのだが、そんなややこしい事は覚えなくてOK。やよいの青色申告では「かんたん入力」というものがあるので意識しなくてもできる。

https://support.yayoi-kk.co.jp/product/aoiro_ol/kantan_m.html

 いつ、いくらを、何の名目で、どんな手段(現金、クレジットカード等)で、誰(どこ)から受け取った/支払ったか、を入力すればいいだけ。とても分かりやすい設計になっている。

 続いて求められるのは、「発生主義」で記帳すること。発生主義とは、金銭のやり取りに関係なく、取引発生時点で収益等の記帳をすることを指す。

https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/accounting-principles/

 ボーイ業はほぼ現金商売なのであまり関係はないが、クレジットカードによる消耗品の購入等を行うことがあるだろう。クレジットカードの買い物で実際に支払いが行われるのは引き落とし日だが、引き落とし日ではなく買い物をした日にその額を記帳する、というもの。特段難しい話ではない。

 以後、複式簿記と発生主義をもとに入力例を解説する。


プライベート資金と事業用資金は別

 ここで注意してほしいのが、会計ソフトに連携した口座のお金はデータの上では全て事業用という扱いであるということ。プライベートの資金とは事業用に登録した口座以外のお金を指す。登録していない口座のお金も、財布の中のお金(タンスやアルフォート貯金も含む)も、全てプライベート資金扱いだ。

 ただし全てを記録する必要があるわけではなく、1回でも事業が絡んだお金や事業用口座の入/出金(経由しただけでも)を記録すればいいという話。

 当たり前だと思うかもしれない。ただ、完全に分離して扱えるかとなると話は別だろう。ボーイ業くらい小規模な事業で口座を分ける人は少ないだろうし、そもそも複数の口座を持っていない可能性もある。

 財布の中のお金も事業用とプライベートに分けておくと後々楽。何かのクーポンやポイントカードで札入れ部分でも区切っておけば良いだろう。その辺りは意外と適当でも何とかなる。

 

 これらを意識しておくと少しは分かりやすくなるだろう。

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 入力方法自体はこちらを見ていただければ分かると思う。

https://www.yayoi-kk.co.jp/users/beginner/aoiro_ol/hajimeni/index.html


収入編

 やよい青色申告のかんたん取引入力で「収入」タブにあるものを使用する。

売上の入力

 店がお客さんに請求する金額ではなく、ボーイが店からもらう額(手取り)を入力する。指名ごとに分けなくてもいい。1日分まとめてでOK。まとめる場合、内訳は指名ノートか何かを使い自分でしっかりつけておくこと。

科目:「売上」
取引手段:「現金」や「売掛金」
取引先:店の名前
※売掛金は後日入金の場合のみ

 基本的にウリセンは現金商売なので取引手段は現金に限られる。「現金」は事業用現金、「現金(個人用)」は自分のポケットマネーを指すので注意。先程述べた通り事業用の財布とポケットマネーは分けて考えるのが事業のお約束。万が一店が口座に直接入金するようなことがあれば自分が申告ソフトに連携した預金口座を取引手段に選ぶこと。

 (売)掛金とはツケ払い。売掛金の場合はツケ払いされる方と考えてもらえれば。売掛金の取引に関しては回収時に必ず回収取引を入力すること。

 実際に記帳した売掛金取引のデータをクリックすると「回収取引を入力」のボタンが出現し、簡単に回収取引の入力ができる。しておかないと未回収のお金が存在している事になり、後々頭を悩ませる原因に。

 回収取引で出てくる振替入力は「何から何へ変換」の記帳。たとえば泊まり指名の手取りを後日店から受け取るようなケースだと、振替元が「該当の売掛金」、振替先が「現金」となる。


 ウリセンは基本的に日払いだが、ボーイによっては一定期間分をまとめて渡してもらうケースもある(浪費防止のためなんだとか)。そういった場合も売掛金による入力を行うのがベター。

12/2:科目/売上 取引手段/売掛10000円
回収予定:12/30
12/3:科目/売上 取引手段/売掛14000円
回収予定:12/30
12/4:科目/売上 取引手段/売掛8000円
回収予定:12/30
12/30に全ての回収取引を入力
※取引先は全て店なので省略

 ……といった具合である。正直回収取引の入力がかなり面倒くさいのでこういう受け取り方はおすすめしない。12/30に一括で現金売上入力で良いじゃんと思うかもしれないが、発生主義なのでダメ。まぁそれで辻褄を合わせられるならやればいいと思う。


売上を○○した時

 ウリセンの場合受け取った売上は基本的に現金(事業用)だろう。これを入金した時などの処理がこちら。「振替」のタブから振替入力を行う。

現金→事業用口座の場合
振替元:現金(事業用)
振替先:事業用口座
摘要:売上入金
※摘要は分かりやすいように書けばOK

 毎日入金するのが口座にも記録が残せて良いが、正直面倒くさすぎるので財布の事業資金が貯まってきたらでOK。「口座連携とスマート取引取込」を済ませておけば入金の入力し忘れも防げて非常にやりやすい。


現金→プライベート資金の場合
振替元:現金(事業用)
振替先:現金(個人用)or事業主貸
摘要:生活費、クレジットカード支払の為など
※摘要は分かりやすいように書けばOK

 個人事業において事業用資金から一切抜かずに生活するのは困難を極めるため、普通によくある入力。摘要に何目的なのかだけは書いておこう。

 ちなみに、事業用ではない別の口座に移しても入力は同じ。プライベートで使用している証券口座に入れてもこれでOK。「事業主貸」は事業主に貸すで覚えておいてくれればOK。

 事業用口座からお金を引き出してプライベート資金にするときも振替元を事業用口座にするだけで入力は同じ。


出張時や待機保証の交通費

 交通費ではあるが、実際に使った額ではなく支給されている額の方。貰った交通費と実際に使った交通費に差がある場合の辻褄を合わせるために入力する。誰が交通費を出しているか、でほんの少し変わる。

例:店から待機保証としてもらう交通費

科目:売上or雑収入 取引手段:現金
摘要:待機保証として
取引先:店

 待機保証は一応出勤の対価であり、店が直接ボーイに渡しているので売上で問題ないと思われる。または雑収入。正直どちらも大して変わらない。摘要はあってもなくても良い。待機保証額が交通費ピッタリなら差し引き0円で記帳しなくても良いとは思うが、そんなケースは少ないだろう。

例:出張交通費(お客さん負担)

科目:売上or雑収入 取引手段:現金
摘要:出張交通費として
取引先:一般消費者

 お客さんの事は一般消費者という。お客さん負担の出張交通費とは、出張料金17000円+往復交通費1000円の1000円部分のこと。実際の交通費が1000円より少ない時に残りをボーイが貰うケースで使う。

 例えば往復で400円なら残り600円はボーイのものになるが、この1000円は店に一度預ける事もしないのでお客さんからの支払いという事で処理している。経費の方で交通費を入力するが、こちらと差し引き600円ボーイの資産が増えたことになる。その辻褄を合わせるための入力。

 店側がどういう会計処理をしているかで変わるが、ボーイ個人としては誰が出した交通費か分かった方が後々楽なのでこのやり方を推奨。

 もし店がかかった交通費と同額を支給してくれたのなら差し引き0なので正直記帳しなくても良いとは思うが、記帳するなら取引先を店にして収入側で入力し、経費側でも同額の交通費を入力すればOK。


チップの扱い

 お客さんからチップを受け取ることもあると思うのだが、これの扱いについて。チップの仕訳は解釈が分かれるため明確な正解がない。

 売上・雑収入あたりで仕訳をするのが良いかとは思うのだが、一時所得・雑所得にするやり方もある。そこまで詳しくはないためどれが絶対にダメというのは言い切れない。

売上や雑収入で処理する場合

 売上と雑収入は事業に関わる収入なので特に問題はないと思われる。雑収入は説明が難しいのでこちらを参照いただきたい。

 製造業でいうと、製造した製品そのものの売却収入が「売上高」、製品を製造する際に出た作業くずの売却収入が「雑収入」になります。

上記サイトより引用

 本業に付随する収入を雑収入として扱うため、売上扱いするのでなければこれが妥当かと思われる。売上や雑収入で入力するならこんな感じで。

科目:売上or雑収入 取引手段:現金
摘要:心付、チップなどで入力
取引先:一般消費者


一時所得で処理する場合

 一時所得として処理するのは若干微妙。チップが一応事業に関わる収入だというのも理由の1つだが、もう1つ大きな理由がある。一時所得には50万円の控除がかかるからだ。要は一時所得扱いにしてしまえば50万円までならチップには課税されないということ。

 一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

※上記サイトより引用

 「営利を目的とする継続的行為〜以外の所得」とは要するに仕事関係ない所で得たお金以外が一時所得ということ。これと控除の関係で指摘されたら流石に弁解は難しいだろう。絶対にダメとは言わないが、上手く説明できるならやってみては。

 一時所得にする場合、口座に入金しないなら入力は必要ないことになる(事業と全く関係ないので)。もし口座に入金した場合は収入タブから……

科目:普通預金(事業用の口座)
取引手段:事業主借
摘要:事業資金の補填

 あたりで入力することになるのだろうか(辻褄合わせのため)。あまりオススメはしない。

 それか自分でしっかりまとめておいて確定申告の時に一時所得に記入する。チップなので必要経費はゼロ、支払われた相手は一般消費者、で。


雑所得で処理する場合

 雑所得は何が該当するかと言われると難しい。仮想通貨をやる人ならお馴染みかもしれないが……。

 一時所得同様事業と関わりがないお金になるため、会計ソフトに連携した口座に入金しなければ記帳の必要はない(ことになる)。口座に入金した場合は一時所得と同じやり方になるはず。

 個人的には雑所得が一番微妙なチョイス。青色申告特別控除は雑所得にかからないため、これでやるくらいなら雑収入か売上で処理した方が良いと思う。

 細かく言うと、事業所得(収入から経費を抜いた分)が青色申告特別控除(65万円)より少なければ雑所得扱いは確実に損。上記サイトを参照にしてください。


 長くなったが、チップは売上か雑収入での記帳がオススメ。一時所得扱いを説明する自信があれば一時所得で行くのが得ではあるが、かなり難しいだろう。余談ではあるがスカウトバックなども雑収入で良いと思われる。


その他

給与収入

 副業としてボーイ業をやっている人、他にバイトをしている人なら使うかもしれない。給与が事業用として登録している口座に振り込まれる場合のみ記帳することになる。

科目:普通預金(事業用の口座)
取引手段:事業主借
摘要:給与振込
取引先:会社名

 「事業主借」とは「事業主に借りる」こと。つまりプライベート資金による支払いを指す。給料は勤めている会社からの振込ではあるが、ボーイ業とは関係ないので個人資金扱いとなる。

 事業用口座以外へ振り込まれる場合は、記帳はしなくてもいいが確定申告の際に給与収入はしっかり入力するのでお忘れなく。

 

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 収入に関わる仕訳は大体こんなところ。現金商売かつ、やる事が決まっているのでほとんど入力には苦労しないはず。

 かなり長い解説になってしまったが、やる事自体はとても簡単。その日の収入に適切な科目、取引手段、取引先をくっつけるだけ。これを毎日繰り返す。その積み重ねだ。

 次回は個人的に一番楽しい経費編。お楽しみに。

 

市場調査とかやってみたいですね。