【ボーイ戦術書】No.33 「ボーイ的確定申告マニュアル Vol.6 節税術 効果検証編」

 前回は確定申告における控除項目をベースにひたすら所得控除について語った。

 今回は効果検証編。これらを活用した際の節税効果を確認する。詳細な計算は面倒くさいため、日頃お世話になっている会計ソフト「弥生シリーズ」のサイトに掲載されている「個人事業主のかんたん税金計算」を元に節税効果を算出する。諸々の経費テクニックある程度使っている前提。居住地や家族構成その他諸々などの条件で変わってくるため、目安程度に。

 果たしてどのくらいの節税になるのか……。

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 専業ボーイを想定して計算していく。その程度なのか?とかそんなに稼げねーよ!とかいうツッコミは受け付けません。こちらの記事を参照。あなたの実力次第です。

ベース設定
学生ではない
※前年に似たようなデータで白色申告したものとする

年収 3,800,000円(事業収入のみ)
経費 600,000円

国民年金 約200,000円/年
国民健康保険料 約300,000円/年

 年金や保険料等をちゃんと入力しなかった時の税額や、節税テクニックの諸々を付け足したらどうなるのか等を比べようと思う。


何もしなかった時(白色申告)

 まず無いと思うが、年収と経費しか計算しなかったり、保険料などを自分で支払っていない場合はこれとほぼ同じになる。基礎控除しか適用されないので課税所得額は大変なことに。

事業所得が
3800000-600000=3,200,000円
ここに基礎控除480,000円のみ効く。
※年間所得2400万円以下は全員48万円の控除

来年納めなければならない額
所得税額:178,000円
住民税額:282,000円
国民健康保険料:306,000円
計:766,000円

※事業税(5%と仮定)15,000円追加の可能性あり

 高い。高すぎる。国保、年金、住民税、所得税なども支払っているため実際の所得は220万円程度。経費の少ないボーイ業だから何とかなっているものの、もったいないにも程がある。ちなみに経費を一切つけていないと課税所得380万円になり、もっと酷い事になる。


青色申告特別控除の節税効果

 上記が白色申告なのを青色申告しただけ。青色申告の節税効果を確認できるシミュレーション。青色申告まで手を出しておいてこんな事はまずないと思うが、控除項目に関する保険料等を自分で払っていないのならこうなる。

事業所得:3,200,000円
基礎控除:480,000円
青色申告特別控除:650,000円

来年納めなければならない額
所得税額:112,000円
住民税額:217,000円
国民健康保険料:245,000円
計:574,000円

※事業税(5%と仮定)15,000円の可能性あり

 なんと青色申告特別控除だけで192,000円の節税!

 19万円あったら何ができるだろう……考えるだけで楽しくなる。この通り青色申告特別控除の効果は絶大。事業規模にもよるが、個人事業者必須の項目と言えるだろう。

 青色申告申請して会計ソフトで帳簿つけてe-taxで確定申告するだけ。それで19万円節約できるなんて、最高じゃないか。

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 ここからは青色申告特別控除をしている設定で進めていく。

社会保険料控除の効果

 最初に設定したデータの、国民年金および健康保険料を入力した時の節税効果を計算。

事業所得:3,200,000円
基礎控除:480,000円
青色申告特別控除:650,000円
社会保険料控除:500,000円
※年金20万円+健康保険料30万円

来年納めなければならない額
所得税額:80,000円
住民税額:167,000円
国民健康保険料:245,000円
計:492,000円

※事業税(5%と仮定)15,000円の可能性あり

ちなみに白色申告だと合計665,000円

 社会保険料控除をしっかり活用すると82,000円の節税になる。国民健康保険料が不変だが、計算式の関係でそうなってしまう。

 青色申告特別控除に次ぐ節税効果。万が一今まで社会保険料控除を空欄にしていたのなら、すぐに手を出すべき。


小規模企業共済等掛金控除の効果

 個人型確定拠出年金(iDeCo)で毎月5,000円積み立てていた事にする(iDeCoの最低掛金が月額5,000円)。年額にすると60,000円。

事業所得:3,200,000円
基礎控除:480,000円
青色申告特別控除:650,000円
社会保険料控除:500,000円
小規模企業〜控除:60,000円

来年納めなければならない額
所得税額:77,000円
住民税額:161,000円
国民健康保険料:245,000円
計:483,000円

※事業税(5%と仮定)15,000円の可能性あり

ちなみに白色申告だと合計653,000円

 節税効果は9,000円。一見ショボく見えるが、「51,000円で60,000円分の投資ができた」と言い換えたら相当なリターンだと思わないだろうか?この時点で20%近いリターンが得られている。しかも運用益は非課税。そう考えると凄まじい優遇制度だなと思う。

 美味しい話ではあるが、受け取れるのは定年後だという事だけはお忘れなく。


寄付金控除の効果

 みんな大好き、ふるさと納税の節税効果。上限額がどうのこうのと聞いたことがあるかも知れない。まずは上限額の計算から。上限額は住民税をベースに計算される。先程挙げた各種控除も効かせた状態で計算しないと結構な額のオーバーが出てしまうため注意。ふるさと納税は最後に計算すると失敗しづらいはず。

事業所得:3,200,000円
基礎控除:480,000円
青色申告特別控除:650,000円
社会保険料控除:500,000円
小規模企業〜控除:60,000円
……をベースに計算すると、上限額は37,000円。
ギリギリを狙うと危ないので、35,000円で。

  計算はこちらを使用。

 「所得額」には事業収入-経費、「所得から差し引かれる金額」には各種控除の合計額を入れる(基礎控除を入れるのを忘れずに)


 次は実際に納税した際の節税効果を見てみよう。先述の通り35,000円分で。

事業所得:3,200,000円
基礎控除:480,000円
青色申告特別控除:650,000円
社会保険料控除:500,000円
小規模企業〜控除:60,000円
寄付金控除:35,000円

来年納めなければならない額
所得税額:75,000円
住民税額:158,000円
国民健康保険料:245,000円
計:478,000円

※事業税(5%と仮定)15,000円の可能性あり

ちなみに白色申告だと合計646,000円

 節税効果は5,000円(上限額には自己負担2,000円も含まれるので実質3,000円)。こちらもショボく見えるが、来年の住民税を先払いしただけで3,000円浮いて、お礼の品(寄付額の3割程度の価格)ももらえて、やり方次第で通販サービスのポイントまでもらえる。

 様々なキャンペーンをフル活用する人だと寄付額の3割近くのポイント還元になるようだ。そこまで好条件が揃うことはほぼなく、根っからの楽天ユーザーでもない限り2割近くまでが限界。詳しくは「楽天 ふるさと納税 攻略」などで検索。

 ……と言った事情もあり、ショボく見えてもお礼とポイント還元だけで実質寄付額の4割超のリターンがある。ポイント還元についてはかなり問題視されており、昨年末には納税サイトの団体が自主規制に向けた議論を始めた。ポイント還元に関しては1~2年で大幅に下げられるのではないかと思っている。団体の代表理事に楽天ふるさと納税が入っているため、楽天も例外ではないだろう。



 さて、ふるさと納税で注意してほしいのは申告する年のうちにふるさと納税を済ませておかなければ、その年の節税効果は得られないということ。

 2021年の所得税確定申告は2022年に行うが、2022年にふるさと納税を行った場合、納税額は2022年の所得に対する控除になってしまうので効果が得られるのは2023年。

 ギリギリに行うと手続きの関係で受理が翌年になってしまうこともあるため、年間所得の予想が付いたらさっさと済ませておくのが良い。

 せっかくの計算も納税タイミングを間違えると意味がなくなるので、そこは本当に気をつけてください。


 勤労学生・障害者控除、扶養控除、配偶者特別控除等は省略。勤労学生はともかく、他はボーイだと該当しないものが多いだろう。

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 さて、最後に「何もしなかったとき(白色申告)」と寄付金控除まで活用したケースでどれくらいの差が生まれたか見てみよう。

何もしなかったとき(白色申告)
所得税額:178,000円
住民税額:282,000円
国民健康保険料:306,000円
計:766,000円

寄付金控除までフル活用
所得税額:75,000円
住民税額:158,000円
国民健康保険料:245,000円
計:478,000円

なんと、288,000円!

 今まで超テキトーに確定申告をしてきたボーイがちょっと本気を出すだけで年間30万近く浮く。なんと素晴らしいことか!同じ年収でも控除に関する知識を身につけ、実践するだけで生活は格段に豊かになる。

 ……と言っても9割は青色申告特別控除と社会保険料控除によるもの。若年層の自営業者(業務委託のフリーランス等も含む)ならこの2項目に注目すべき。

 何も知らず、控除入力すらしていなかったのならまずは社会保険料控除から始めよう(自分で払っている場合に限る)。で、意外と簡単なので青色申告特別控除もついでに手を出してしまおう。役所に開業届と青色申告申請書出して会計ソフト用意するだけで良いんだから、やろう。書き方はネットで「青色申告 始め方」とかで調べよう。


一番の節税は脱税とかいうのはやめてね。

市場調査とかやってみたいですね。