『人生は常に出会い直しを必要とする』の言葉が、溺れそうなくらい沁みたんだ②
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また数年が経ち、私は結婚することになった。結婚写真は私の昔からの夢で、自分(偶然にもパートナーも同じ干支なので、正確には自分達だ)の干支が描かれている京都のお寺で撮ることになった。撮影後は、パートナーの友人に会うために大阪に寄ることになっていた。
大阪…ハルが住んでいる!、私は共通の友人から聞いていた数少ない彼女の情報を思い出した。今がチャンスかもしれないと思うも、すぐには行動に移せなかった。
「時間が経ちすぎている…」
「彼女も私も変わったかもしれないし、昔のような関係には戻れないかもしれない」
「それに、私から距離を置いたのに、また仲良くしたいなんて、わがままだよね」
「連絡しても返事はないかもしれない。それでもいいの?」
沢山の自問自答が脳内で行き交う。考えれば考える程、気持ちは沈む。考えては諦め、でもやっぱり、諦められなかった。
上手くいくとは限らない。だけど、それでも…その時は全部受け入れようと覚悟を決めた。自問自答を繰り返し、3ヶ月が経っていた。
もう彼女の連絡先も知らなかった私は、まずはその共通の友人から連絡先を教えてもらわなければならなかった。第一関門だ。友人はハルに断りを入れて私に連絡先を教えてくれるはずだから、ここで断られることだってある…。
友人にメッセージを送った。ドキドキした。既読がついたか、こまめに確認してしまう。でもメッセージを送信した当日に返信は来なかった。翌日、ソワソワしながら待ってると、連絡先を付けて返信が来た。
私はホッと胸を撫で下ろした。そして、第一関門突破!と心の中で呟いた。
次はいよいよハルにメッセージを送る。十何年ぶりのメッセージはぎこちなくて、よそよそしい文面になってしまった。もう少し気楽な雰囲気で…と何回も書き直したけど、なかなか上手く書けない。最後は、会いたいという気持ちが伝わればいいと、簡潔なメッセージに仕上げて、えいっ!と勢いに任せて送信した。
彼女から返信は来るのか、来たとしてもその返信は…?。ここが第二関門で一番の山場だ。またソワソワして、数分おきに送ったメッセージを読み返したり、既読がついたかどうかを確認していた。第一関門の時より、ドキドキしている自分に気づく。
そして数時間後、返信が届いた。
『私も会いたい』
その文字を見て、ホッとしたと同時に目頭が熱くなった。「ありがとう!」と声に出して、そして「やったー!」とガッツポーズを決めた。
メッセージをやり取りすると、実は彼女は大阪に住んでいないことが分かった。そして「あの子(連絡先を教えてくれた共通の友人)に、何回訂正してもなぜか大阪に住んでることに戻るんだよね」と。
けど、今回はそんな天然ボケな友人に感謝しかなかった。だって、その勘違いがなければ、私はハルとの再会のきっかけを掴めなかったから。
しかし、ハルは大阪に住んでいない。ならば、私達の再会は延期?と思ったのも束の間、彼女は大阪まで会いに来てくれると言う。
嬉しい…。彼女も本当に会いたいと思ってくれていることが伝わってきて、胸が熱くなった。
私達は日時と待ち合わせ場所を決めた。当時、私の携帯が古く、LINEアプリが開けないこともあったため、念のため彼女の携帯番号も聞いておいた。待ち合わせ当日、どんなハプニングが起っても必ず会えるようにしておきたい。再会までの階段を一段ずつ慎重に上ってきた私にとって、彼女の携帯番号はお守りのような存在だった。教えてもらった番号を紙に書き写し、大切に財布にしまった。
再会の日。大阪駅。目印に当日のお互いの服装を教え合い、待ち合わせ場所に向かった。お互い白のニットを着ていることを知り、「被ってるな〜」とちょっと笑った。待ち合わせ場所に近づく。またドキドキする。この再会までに私は何回ドキドキしただろう。
あれ?ハルに似ている!駅ビルの玄関口に立っていた女性は、遠目からでも彼女だと分かった。私は小走りで駆け寄り、「ハル!」と声をかけた。私の顔を見た彼女は「久しぶり!」と言ってくれた。そして、少しのぎこちなさと緊張を誤魔化すようにお互い笑い合った。
私達は近くの喫茶店に入り、喋り始めた。まずは会っていない時間をどう過ごしてきたかを手短に報告し合った。そして、長い長いお喋りをしていたあの頃のことも振り返った。
ハルが言った。「私の旦那がどんな友達なの?って聞いてきて、色んな事をずっと喋っていたって言ったら、どんな話を?って聞かれて、あれは…」
「人生!」と二人同時に答えて、笑い合った。
そう、私達は私達なりの人生を一所懸命に語り合っていた。そして「あれは青春だったよね」と二人で懐かしんだ。
再会した二人の取り巻く環境は、二十代の頃と比べて大きく変わっていたけど、私達自身はそんなに変わっていなかった。やっぱり似ているなぁと感じる場面が短い時間の中でも感じ取れたし、それどころか、それぞれが準備した手土産が、化粧水パックとハンドクリームのセットで、丸被りしていたことに笑い合った。お互いの考えていることが手にとって分かるように感じた。
それからの私達は、月に一回程テレビ電話でお喋りをしている。答えの出ない人生の話を。長い長いお喋りの再開だ。
翌年、私は旅行で再び京都にいた。夕飯の帰り道、東本願寺の前を歩いていたら、ライトアップされた金言が目に入った。
『人生は常に出会い直しを必要とする』
その言葉にドキっとしながらも、歩き続けた。でも、言葉が私の中で反芻し始める。そして、ハルを思い出す。
沁みる…言葉が沁みて沁みて溢れてきて、私の心は息継ぎしないと溺れそうだ。
何かに感謝したくなって、でも何に感謝していいか分からなかった。ただ言いたくなった。
ハルと出会い直しをさせてくれて、ありがとう。
そう心の中で言い放ち、私はまた歩き続けた。
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