スタンバイスタンダード
繰り返す日常。
変わらぬ街並み。
いつもの定位置。
ここから見える景色は嫌いではない。
細い小道を入り、石畳の階段を
いくつか上るとわずかな踊場がある。
コーヒーの香り。
目覚めの一杯。
安定のルーティン。
私はなんの変哲もないただの「村人A」。
いわゆるノンプレーヤーキャラクター、
NPCである。
壮大な冒険の物語を彩る「中」のひとり。
周りから見れば凡庸な光景だろう。
しかし、そこには誰にも譲れぬ誇りがある。
主人公は活路を求めて、ただの「村人A」を懸命に探す。
私はいつも決まって一言
「あの角の店の主人が、何かブツブツ言っておったな」
簡単で地味だが重要な役割。
世界はいくつものピースで構成されている。
私は私、あなたはあなた。
比べる必要も人生に焦る必要もない。
各々が全うする。
それで十分なのだ。
「勇者は村人Aに話しかけた…。」
おっと!どうやら私の出番が来たようだ。
私は言葉を紡ぐ。
展開が勢いづくように。
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