漢方薬×健康管理の新しい形を目指す!「株式会社オフィス薬局」笹森さんのスタートアップを振り返る
漢方薬の提供やオンラインでの相談、服用管理など漢方薬という選択肢を通じて人々の健康管理をサポートする「株式会社オフィス薬局」。
代表取締役の笹森さんは薬剤師として経験を積みフリーランスとして活躍した後にスタートアップを選び、短期集中型の事業創出・資金調達プログラム"The First Movers”を受けました。
The First Moversのプログラムを受けて変化したことや今後のビジョン、そしてThe First Movers後に新たに見えてきた課題について伺いました。
周囲の影響でスタートアップ型の起業を決断
———まずは起業前の経歴を教えてください。
東北医科薬科大学の薬学部に進学して6年間さまざまな知識を学び、薬剤師の資格を取得しています。卒業後は地元でチェーン展開している調剤薬局に就職しました。
調剤薬局では調剤業務の他に管理者業務を任されていたこともあり、人材関連のリクルート活動を経験した後、7年目の夏にフリーランスとして独立しています。
———薬剤師としてフリーランスをしていらっしゃたのですか?
はい、複数の調剤薬局と契約をして自分自身を派遣する形でフリーランスをしていました。フリーランスの薬剤師もフリーランスのエンジニアのように、個人派遣に近いイメージで案件を受託していきます。
私が始めた当初は、派遣会社にマネジメントされる方法が圧倒的大多数でした。私のように派遣会社を使わず自分でマネジメントをするというのは少数だと思います。
今は専門のエージェントも増えてきてはいるので少しずつ変化はしていると思いますが、まだ少数だと思います。
———フリーランスとして薬剤師を続けるのではなく、起業をしようと意識し始めたのはいつからですか?
実は、大学在学中から意識はしていました。薬剤師が独立する場合はお医者さんが開業するのと同じように、調剤薬局を開業するケースが多く、漠然と「調剤薬局を開業したいな」と思っていました。
また、実家が調剤薬局を経営していたので、身近に経営や組織、会社を経営するという環境があって、起業したいという意識としてはかなり早い段階からありました。
———調剤薬局を立ち上げるという起業ではなく、スタートアップを選んだのはなぜですか?
周りの影響が大きかったです。当初はフリーランスをやりながら調剤薬局を事業継承して会社を作るという方向で話が進んでいました。しかし、薬剤師の配置などリソースの面で話が流れました。同時期にスタートアップ的な起業をされた方と頻繫に連絡を取り合っていて、スモールビジネス的な流れではなく外部資本を入れて起業する方法があるという話を伺い、スタートアップを意識をするようになりました。
The First Moversに出会えたことが事業内容変更のきっかけに
———The First Moversに出会ったきっかけや応募した事業アイデアを教えてください。
2019年12月~2020年1月にかけてスタートアップ的なアイデアを決めて調達に向けて動き出していました。
起業プラットフォームのStartQounter(現:StartPass)にも同時期に入会していて、資金調達の方法をさらに模索していたところ、主催者からThe First Moversを紹介していただきました。エンジェル投資をされている方数名と資金調達の面談をしていたタイミングだったので、その中の1つの選択肢としてプログラムへ応募しました。
当時の事業アイデアは「法人向けサービスのほうが導入インパクトが大きく一定数の顧客を確保できるのではないか」という思いから、企業向けの福利厚生サービスで漢方薬を提供するというものでした。今思えば非常に荒いアイデアだったなと思います。
———The First Moversのプログラムに参加してよかった点はありますか?
資金を提供していただいたうえに、事業や戦略についての考え方を体系的に学べたところです。
起業後にコンサルなどにお金を支払って学ぶ場は世の中に多く存在しています。しかし、The First Moversはその逆パターンで、起業して売上を作る前に資金を調達しながら事業や戦略を学ぶことができました。
アイデアの部分では、自分が考えていること・やりたいことを価値提供や体系的な部分に落とし込んだときに、筋が通るような発想ができていないことに気付くことができました。
まずは、当初の企業向けの福利厚生サービスをどういうモデルで誰に価値を提供しているのか洗い出しました。その過程の中で、自分の経験と照らし合わせたときに、法人営業をした経験が少なく得意ではない分野であること、エンドユーザーまでの距離が遠いということが明確になりました。
このことは、自分の強みや弱みを含めて誰に価値を提供するのか事業モデルを見直すきっかけになりました。企業向け福利厚生サービスから薬剤師としてのカウンセリング経験を生かしたBtoC向けのサービスに変更することが最適な判断だと俯瞰的に思えました。
———他にも事業内容を見直すきっかけとなったことはありますか?
漢方の代替品を探すという視点は、とても勉強になりました。
漢方薬で解決できることや得意な症状を挙げていき、それに対して現在代替品として活用しているものはどのようなものがあるのか考えることができたというのは参考になったなと思っています。
代替品という思考をすることによりアイデアを活かすという判断ができたので、これはプログラムを受けて出せた答えかなと思っています。
また、コンテンツを考えていたときに最初はインスタグラムを始めとしてあれもこれもと一気に多くのことをやろうとしていました。
チャネルや価値提供を絞ってターゲットを最適化するほうがいいとのアドバイスを受け顧客への最適な価値提供に集中できて、サービスのベースを作りあげることができました。
有効な選択肢の一つとして漢方薬を広げたい
———漢方薬に着目した背景には、どのようなことがあるのでしょうか?
薬剤師として勤務をしていたときに患者さんとの会話やドクターが処方する薬の内容を見て、漢方薬の可能性は大きいなと感じていました。
医療費が高騰している中で、漢方薬は予防的な意味としても使えるのではないかと感じました。
漢方薬自体が対応できる症状とセルフケアの相性はとてもいいと感じており、個人で勉強をしながらいつか事業で取り入れたいなと考えていました。
———漢方薬を通じて実現したい今後のビジョンを教えてください。
漢方薬が商材として認知されることで漢方薬市場が広がり、顧客の悩みに対する有効な対策や選択肢の一つとしてより多くの人に届けばいいなと思っています。
漢方薬は中国由来ではあるものの、ラーメンやカレーなど海外から入ってきた文化と同じように日本独自の発展を遂げています。
漢方薬ですべての人の悩みが救えるとは正直思っていません。しかし救える人がいるのは事実だと思うので、いかにしてその人たちを増やしていくのかがポイントになると思います。
少しでも漢方薬に興味を持つ人が増えれば「手が届きにくい」「理解しにくい」と思われるケースが減り、漢方薬を使用し悩みを解決できる人が増えるのではないかと感じています。その結果、社会に貢献できる価値につながるのではないかと考えています。
The First Moversを終えて次の課題が見えてきた
———The First Moversのプログラムを終えて、今の状況を教えてください。
基本的にThe First Moversのプログラムを終えた段階から、事業内容は変更していません。
事業アイデアを実現していくという階段を一歩登ったところで、顧客に対して課題と解決策を正しく提供できているか悩んでいます。
課題を抱えている顧客に提供したい価値が正しく伝わっているのかという部分も含めて、新たな課題が見えてきているところです。
———サムライインキュベートとの事業伴走は今でも続いているのでしょうか?
はい、週に1回のミーティングを設定し8月か9月からずっと一緒に伴走している状態で、かなり手厚くフォローしていただいています。
———最後に、起業する前の方や起業に向けて試行錯誤している方にメッセージをお願いします。
The First Moversへの応募を迷っている、もしくは応募するのが恥ずかしいという思いで一歩が踏み出せないなら、ぜひ応募して挑戦したほうがいいと思います。
私自身、The First Movers参加前のビジネススキルや能力というのは今振り返って見ると恥ずかしいと思う状況でした。しかし事業伴走していただいたりお話させていただいたりする中で1年で大きく成長でき、また考え方も変わったなと実感しています。
応募することでマイナスになる要素はないと思ったので、まずはやってみるということが大切かと思います。
The First Moversに参加すると短期間で成長できる
今回は「株式会社オフィス薬局」代表取締役の笹森さんに、起業までの経緯や今後のビジョン、そしてThe First Moversに参加されたうえでの実際の印象や良かったことなどを伺いました。
サムライインキュベートが運営する短期集中型の事業創出・資金調達プログラム"The First Movers"では、スタートアップ企業家と二人三脚で伴走する"Hands-In支援"をおこなっています。
The First Moversに少しでも興味を持たれた方は、お気軽にお問合せください。