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海外の物流スタートアップからみる日本の事業機会とは?

こんにちは!サムライインキュベート Internの藤本(@Homura_fujimoto)です。

今回は物流シリーズ#4として海外における物流スタートアップをご紹介します。 最近の潮流としてSaaSやシェアリングサービスなどの海外で成功を納めたスタートアップのビジネスモデルが数年遅れて日本へ導入され、成功がみられています。

その中で現在海外で成功を見せている物流系スタートアップやトレンドの分析を通し、これからの日本の物流領域においてどのような事業機会があり、イノベーションが起こるかを今回から読み解いていきます。

資金調達状況からみる物流スタートアップ市場

現状の物流スタートアップの資金調達状況からみていきましょう。McKinsey & Companyが作成した世界の物流スタートアップの資金調達調査によると、総資金調達額は急速な伸びを見せています。特に直近6年の年平均成長率は76%と、物流領域への世界の投資家からの強い期待が読み取れます。

海外物流スタートアップ資金調達状況

出典:McKinsey & Company, "Startup funding in logistics"

特に目を引く2018年には中国配送大手Cainiao Logisticsによる$3.3Bなどの大型資金調達が集中し、前年度比で約3倍となる$10B(約1兆1000億円)まで達しています。

合わせて、物流領域の市場環境は昨今の新型コロナウイルス感染症流行に伴い、一時的に世界の総貨物量は減少したものの、外出規制によるインターネットショッピングの更なる拡大や、欧米での感染者数減少による景気回復の見通しに合わせて貨物量は増加傾向です。特に海運や空運では輸送量の逼迫を背景に歴史的な運賃高騰がみられています。

世界のスタートアップ全体においても2021年度も前年度比で総資金調達額は増加しており、これからも継続した成長が見込まれます。このように世界的な流れとして、物流領域とスタートアップの両面で継続した成長が見込める環境にあります。

一方、日本の物流スタートアップの資金調達状況はどうでしょうか。日本の物流スタートアップ Top10の累計資金調達額は以下の通りになります。

国内物流資金調達

出典:INITIAL

合計すると152億6,500万円となり、2018年の1年間での全世界の物流スタートアップの総資金調達額の約1.38%です。加えて、日本の物流スタートアップで累計資金調達額1位の企業価値が約100億円に対して、世界ではユニコーンスタートアップ(創業10年以内かつ、企業価値$1B以上/約1100億円以上)が10社以上存在します。

直近ではタイのEコマース向け配送サービスを提供するFlash Expressがユニコーンスタートアップ入りしており、アジア全体としても成長が見られることから、依然として日本でも伸びしろを多く含んだ領域と言えます。

物流領域への投資や支援の現状

先に述べたように世界的にコロナ禍においてもスタートアップ投資は増加しており、物流領域もインターネットショッピングの更なる拡大や、景気の上向きによる貨物取扱量の回復に合わせて、成長基調と言えます。その中で世界のスタートアップの成長に不可欠な投資や支援を見ていきましょう。

2018年に$10Bまで到達した世界の物流スタートアップ投資では、Sequoia CapitalやAndreessen Horowitzなどのメガベンチャーキャピタルの投資も活発な一方、Logistics VCやDynamo Venturesなど、運用額は20億円から100億円と小さいながら、世界各地で多くの物流領域に注力して投資を行う特化型ベンチャーキャピタルが生まれています。

事業会社においてもアメリカ配送大手のUPSや、トラックレンタル大手のRyderなどがCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設立し、積極的に投資や協業支援をしています。加えて、アメリカ配送大手のFedExやデンマーク海運世界2位のMaerskもアクセラレータープログラムなどの開催を通じて積極的に協業やスタートアップ支援を行っています。このように投資額だけでなく、成長支援の面でも世界的に物流スタートアップの成長環境が整っていると言えます。

日本においての支援や投資はというと、弊社6号ファンドのように物流領域を注力領域としているベンチャーキャピタルはある一方、物流領域のみに特化した独立系ベンチャーキャピタルは存在しません。しかし、以前の記事にて取り上げました、セイノーホールディングスによる70億円規模の”Logistics Innovation Fund”や、日本郵政キャピタルなどの事業会社によるCVC設立、アクセラレーションプログラムの開催は活発に行われています。
 
また、今後もヤマト運輸や商船三井、SBSホールディングスなど陸海問わず、多くの物流関連企業が数十億円規模のCVC設立を予定しており、日本においても物流領域への関心の高さが読み取れます。
このように日本においても物流スタートアップの成長環境は整いつつあります。

成功を見せる海外物流スタートアップ

続いて世界全体の物流スタートアップを見ていきましょう。ここでは総調達額を基準として主要な物流スタートアップをマトリックスで分類して掲載しています。

世界物流領域マップ

世界主要物流SU2021

今回は主要なスタートアップのみを取り上げましたが、非常に幅広い領域で多く事業展開していることがわかります。掲載した中でも直近で株式市場への上場が多く予定されている非常にアクティブな領域である自動運転技術を紹介していきます。表中では右上の4つのブロックに含まれています。
 
直近で東京オリンピック/パラリンピックにて選手村内の自動運転バスが話題になっているように、物流においても世界的に自動化が進みつつあります。自動運転技術では上記したように長距離、中距離、短距離の3つに大分類することができます。

現在の日本では中距離、短距離の開発が盛んであり、倉庫から倉庫の中短距離輸送や短距離のデリバリーロボットによる輸送などの実証実験が行われています。また、長距離においても有人車両の後続車の無人走行という形で実証実験が行われており、走行距離で数万キロを達成しています。

一方、欧米を中心に既に多くの国では生活道路から幹線道路、高速道路まで幅広い場所にて、トラックによる長距離輸送、倉庫から店舗等のルート配送、飲食店から顧客へのフードデリバリーなどの実証実験や商業展開までが数多く行われています。長距離/中距離輸送のトラックでは複数のスタートアップが実証実験において、走行距離で十数万キロを達成しており、実際に主要幹線や北米大陸横断での商用貨物輸送にも成功しています。

短距離のデリバリーロボットでは、アメリカのスタートアップであるStarship Technologiesが既に欧米の100以上の都市にて実証実験と10万回以上の配達を行っています。そしてアメリカやイギリスなど複数の国と都市にて商業展開を実施しており、路上を走るデリバリーロボットが当たり前になりつつあります。

そして多くのスタートアップが目指す株式市場への上場では先の表にて取り上げた自動運転技術開発のTuSimpleが2021年4月にNASDAQへIPOにて上場しており、同じく自動運転技術開発のEmbark TrucksやPlus、Aurora Innovationについてもそれぞれ2021年5~7月に配車サービス大手Grabの上場で注目を浴びたSPACでのNASDAQやNYSEへ上場に向けてSPACとの合併を発表し、下半期に合併を完了し、数百億の資金調達と株式市場へ上場予定です。

他にも多くのユニコーン企業が誕生しており、非常にアクティブな領域と言えます。このように世界と日本では技術や実証実験の量、規制緩和など多くの要素で差ができてしまっている現実があります。

日本での事業機会は?

今回取り上げたように海外と大きく差がついてしまっている物流領域ですが、逆に大きく課題の多い市場に対しプレイヤーが少なく、大きなチャンスが眠っている領域とも言えます。

そこで次回は海外で成功を納めている海外スタートアップの個社紹介から、日本の物流領域で具体的にどの領域にチャンスがあり、課題があるのかをみてゆくことで、事業機会を発掘していきます。


最後に

サムライインキュベートでは、物流領域で起業しようとしている起業家の方々へ向けての出資・事業立ち上げの伴走支援を行っています。

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