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融資プラットフォームを構築するナイジェリアのEvolve Credit

サムライインキュベートのアフリカ起業家へのインタビューシリーズ、第6回は、クラウド融資ソフトウェアを運営するEvolve Creditの創業者、Akan Nelson氏のインタビューをお届けします。

Evolve Creditは、ナイジェリアで、SaaS型のクラウド融資プラットフォーム「Configure」を展開しています。「Configure」は、銀行同様の機能を果たし、融資担当者は複数の販売チャネルであらゆるタイプの融資商品をエンドツーエンドで構築、立ち上げ、管理することができます。

そんなAkan氏が、どのような経緯で会社を設立したのか、また、Akan氏自身や会社について、今後どのように考えているのかを伺いました。

(第5回インタビュー: カーファイナンスを通して、真面目に働くことが報われる世界を作るHAKKI AFRICAの記事はこちら⬇︎)

1. 起業家としてのマインドセット

起業を意識し始めたのは、ナイジェリアから南アフリカのボーディングスクール(寄宿学校)に入学したときと、アメリカの大学に入学したときです。南アフリカでは、大学を卒業した友人たちがローンを組んで家を借りたり、車を購入することで自分たちの生活水準を上げているのを見て、ナイジェリアの人々の暮らしぶりとは大きく異なると感じました。しかし、当時はまだ若かったので、ローンというシステムが実際どのように機能しているのか、よく理解できていませんでした。

アメリカの大学に進学してからは、金融、特にクレジットカードやローン、住宅ローンについて勉強しました。そのとき、アメリカの人々は米ドルで稼ぎを増やすことができるのに加えて、より良い生活を送ることができる本当の理由は与信へのアクセスであることを理解しました。

ナイジェリアでは、よほど裕福な人でない限り、与信を得ることはまず不可能です。アパートを借りるにしても、家賃を1年間前払いしなければならない。そこから、「なぜアフリカでは簡単にクレジットを利用できないのだろう」と考えるようになったのです。

ナイジェリアに帰ってきてみると、アプリやインターネットから直接融資を行う会社があることに気付きました。しかし、たとえ市場に貸金業のライセンス保有企業が1,000社存在したとしても、市場全体をカバーすることはできません。
なぜなら、1社が融資できる金額は常に限られているからです。その為、ある一定の規模になると、貸出モデルは有効ではありません。そのため、世界的にみても融資事業におけるモノポリー(Eコマース事業におけるAmazonのような)は存在しないわけです。 

そこで私たちは、"人や企業が自社・自身の顧客に簡単に融資をすることができるようなシステムを作ることで、人々がもっと与信を得られるようにできないか?"と考えたのです。つまり、3つの顧客カテゴリーに対応した融資プラットフォームを構築することにしました。

Evolve Credit 創業者のAkan Nelson氏

2. サービスを提供するために選んだ3つの顧客カテゴリー

1つ目のカテゴリーは、貸し手です。貸す能力はあるが、条件に合う人を見つけるのが難しいという人たちです。

2つ目のカテゴリーは、金融サービス業者ではないが、利用者に金融サービスを提供したいと考えている人たちです。例えば、病院は患者に融資をすることで、患者を支援したいと考えています。ナイジェリアのある病院は、バランスシート上では、200万ドル(約2億5千万)の貸し出しが可能です。しかし、病院は、貸出先(患者)を管理し、支払い状況を追跡し、資金を回収するための手段を持っていません。融資状況を管理するためのソフトウェアが必要なのです。そこで、私たちはダッシュボードにログインすれば簡単に融資状況が管理できる融資管理システムを構築しました。

次に、3つ目のカテゴリーは、顧客に融資を受けさせたいと考えている中小企業の経営者です。 例えば、私たちのクライアントの1社は保険会社ですが、彼らは100万社の中小企業のネットワークを持っています。彼らは、これらの中小企業に融資を行いたいのですが、資金も融資管理システムもないため、何もできません。

私たちは、彼らの顧客がアクセス出来るソフトウェアを提供しています。彼らは何もする必要がなく、ただ顧客に私たちのプラットフォームへアクセスしてもらうだけで、私たちが彼らの代わりに融資判断を行うことができるのです。顧客の需要に応じて、資金があってもなくても、あるいは顧客が直接融資を希望しても、どのようにでも融資ができるような柔軟な商品が必要だということがわかりました。

このような結論に至るまでには、長い時間がかかりました。現在は、プロダクト・マーケット・フィットを達成できたことを証明し、シードラウンドの調達を行い、ナイジェリア全土、そしてアフリカ全土へと事業を展開しようとしています。

3. SaaS型クラウド融資プラットフォーム「Configure」を開発した理由

前述したすべての顧客カテゴリーをカバーするインフラがまだ完全に整備されていないためです。例えば、オンラインマーケットプレイスのみでも良いのですが、そこだけでは成長が遅すぎます。なぜなら、貸し出す確率は、一緒に仕事をする貸し手の能力によって制限されるからです。貸し手が非常にリスク回避的で慎重で、審査基準が厳しいと、なかなかユーザーに与信がおりず、プロセスにも時間がかかってしまいます。

融資マーケットプレイスは、先進国のようにすべての貸し手がアクセスできる信用履歴を個々人が保有し、それに基づいて意思決定できるようになれば機能します。現在、ナイジェリア市場で行われる融資依頼の大半は200ドル以下ですが、貸し手は小口融資をしたがらない為、通常そのような依頼は受け付けません。そこで、下位層の人たちが取り残されないよう、あらゆる社会階級たちに役立つプラットフォームを作りたいと考えました。例えば、中小企業にシステムを繋ぎ、ユーザーのローンの用途が携帯の通信料の支払いだと分かれば、その人の支払い履歴を分析して少額融資をすることもできるかもしれません。

お金を貸すという行為は簡単に出来るものではなく、誰しもが慎重になるため、顧客の債権に関する情報をすべて活用するのは、実はとても大変です。また、100ドルの融資をする手間は、1,000ドルの融資をする手間と変わりません。貸す側からすれば、10人に100ドルずつの少額融資を行うよりも、1人に1,000ドルを融資をして、リスクを最小限に抑えたいと考えるのは当然です。ですから、下位層の人々にどうサービスを提供するか、とても工夫が必要でした。私たちは、可能な限りの情報を収集し、様々なAPI連携をすることで、融資サービスを行おうとしているのです。

4. 起業を通じて最も楽しかったこと

正直、これまでの道のりは非常に困難なものでした。一から事業を立ち上げることは、非常に難しく、ストレスが多く、根気も必要です。しかし、感情に流されてしまえば、チームと顧客が離れることを意味します。

私が最もやりがいを感じるのは、自分自身の成長と共に、チームが困難の中で成長していくのを肌で感じられる瞬間です。Evolve Creditを立ち上げた当時の自分を振り返ると、その進歩に驚かされます。当時は怖かったことが、今ではそれほど怖くなくなりました。

例えば、最初の資金調達を受ける前に、投資家にピッチをする必要がありました。ピッチをする前は、怖くて吐きそうで、何を話すべきかわかりませんでした。そこで、同じ起業家の友人たちにメッセージを送り、アドバイスを求め、助けてもらいました。今、私たちはシードラウンドの資金調達を経て、ピッチを成功させるために何が重要かを理解していますし、それがどれだけ大変なことか、この経験が起業家としての成長に繋がったことも理解しています。

ナイジェリアのように情勢が不安定で混乱しやすい国では、文句ばかり言っていても仕方がない。起業家として、少しでも状況を良い方向に変え、社会に影響を与えることに注力するべきです。

前置きが長くなりましたが、新しい創業者や起業を考えている人へのアドバイスとして、起業する前に、ストレスや不安をどう解消するか、前もって真剣に考えておく必要があります。例えば、私は運動を習慣化してストレスに対処しています。とてもシンプルな質問に対する長い答えでしたね。

Evolve Credit Akan Nelson氏 & サムライインキュベート 米山 怜奈

5. ステークホルダーが創業者のために支援すべきこと

それぞれのステークホルダーが、自分の得意な領域で起業家を支援することに注力すべきです。異なるタイプのステークホルダーの中にも、異なる強みを持つ人がいると思います。

VCもそれぞれ強みが違う。VCの中には、資金面以外での支援が苦手な人もいます。もしそうであれば、自分たちをよく理解し、他のVCより大きな金額を投資すべきです。もしあなたのチームが資金調達が得意であれば、他のVCよりも多くの資金を集めてスタートアップに出資できるかもしれない。

VCの中には、資金はあまりないが、非常に有名な起業家を支援し、豊富な経験を持っている人もいる。彼らは人と人を繋ぐことに専念し、スタートアップの事業拡大を支援するはずです。起業家が何を必要としているかという問いに対する答えは一つではありませんが、様々なステークホルダーが得意なことを提供し、それを起業家が選択できるようにすればいいのだと思います。

私の経験では、起業家に最も必要なものは、3つあります。まずは、「お金」と「人脈」です。Renaは人脈づくりがとても上手です。そして3つ目は、「採用」です。 優秀な人材を見つけるのは本当に難しい。仕事のやり方を知っている人はいても、スタートアップで働ける人材はそう多くはありません。これは、上下関係や体系化されたシステムがある従来の会社で働くこととは全く異なる点です。起業家は常に、より良い人材を求めています。時間が経てば、もっと多くの人がテック業界に参入してくるでしょうし、急成長するビジネスを一から立ち上げることの意味を理解する人も増えてくるはずです。


<編集後記>

読んでいただきありがとうございました!
Evove CreditのSaaSプラットフォーム”Configure”を通して様々な企業・人のローンへの提供を可能にすることで、金融へのアクセスをより身近なものにしていく社会を目指すAkanを今後も支援していきます!