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【ラノベレビュー 16】 『君のせいで今日も死ねない』
こんにちは、Kanonです。今回は…
飴月先生の『君のせいで今日も死ねない』の感想記事です。
あらすじ
陰キャでも陽キャでもない、カーストもそこそこの俺。
けれどある日、屋上でばったりと「神に愛された完璧な美少女」と
名高い三峰彩葉が飛び降りようとしているところに遭遇する。
「放っておいて。私、もう死ぬんだから」
そんな彼女を止めて以来、二人で過ごす日々が始まった。空
き教室でピザを食べたり、夜のプールで花火をしたり。「私、
君といるのが楽しいのかも」「君のせいで死ねないじゃん」他
人の視線に怯えつつも、そっと心を開いてくれた三峰。“完璧
な自分”の仮面を取った彼女は、子どもっぽくも可愛くて――。
これは悩める美少女を、平凡で幸せな青春へと導く物語。
こんな人におすすめ
ボーイ・ミーツ・ガールが好きな人
自殺しようとしている女子高生を止める物語が好きな人
周りに合わせて生きるのが息苦しいなと思っている人
クールに見えるけど実は主人公のことが大好きなヒロインが好きな人
こっちもおすすめ!
飴月先生のこちらの作品も、Kanonの激推し作品です!
感想
絆創膏と電話番号
主人公のAくんはヒロインの彩葉が屋上で自殺しようとしているタイミングで出会います。
その後Aくんは彩葉の自殺を引き止めた後、別れ際に彩葉の手に電話番号を書き、その上に絆創膏を貼ります。
そして、
「死にたくなったら、電話してくれ」
というセリフ。
さらに「5コール以内に出るから!」という約束。
このシーンがたまらなく良かったです。
駅のホームで電車に乗って別れる直前というシチュエーションも、死ぬのを引き止めるためになんとか絞り出したこのセリフも相まって、ぞくりとしました。
そして、まあ読者なら誰もが気づくとは思うのですが、電話番号だけ書いて終わりなのではなく、きちんと電話をかけるシーンが来ます。
その時のワンコールごとに絞り出される彩葉の気持ちが読者の涙腺にビシビシ刺さるったら…
それまで彩葉はどんな時もAくんに対して弱音を吐くことがありませんでしたが、最後のコールの後に漏れ出た「…………会いたい」が彩葉の気持ちを全て物語ってました。
ベタ惚れ宣言
物語としては、最終的に彩葉とAくんは付き合うことになるのですが、そのことを周囲に暴露するとき、彩葉は「私がベタ惚れしているだけだから、変な決めつけで悪く言わないでくれる?」と周囲に言い放ちます。
"死ぬこと"を通して絆を深めて、最後にはベタ惚れ宣言っていうあたり、もう重い女すぎて最高かよってなります…
そんな重い女の子ですが、逃げずに常に明るく照らし続けた主人公のAくんは最後までとても優しです。
そして、彩葉が助けを求めた時にはどんな時でも側にいるAくんはイケメンとかいう意味ではなく、とても格好いいです。
普通と特別
彩葉は完璧を演じることで周囲の特別扱いを裏切らないようにしてきました。
故に常に孤独で、自分らしくいられる相手がいないという状況でした。
一方でAくんは自身が普通であることを自覚しており、彩葉のような特別な存在になりたいと願っていました。
最終的には彩葉が自分が自分らしくあれる特別な相手、という意味でAくんは特別な存在になります。
自殺、思春期の悩み、恋という要素がいい塩梅でブレンドされていて、読んでいて飽きることなく最後まで楽しむことができました。
総評
私の好きな要素が盛りに盛られた良作でした。
飴月先生は思春期の少年少女が抱える悩み、特に"存在証明"という部分にスポットを当てて描写するのがとても上手な印象があります。
そして、その"存在証明"のために一組の少年少女を化学反応させるのが巧妙です。
『となドル』のようにシリーズ化もいいのですが、この『君のせいで今日も死ねない』のように単巻で完結する作品もたくさん見てみたいと強く思います。
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