どうきょのいきさつ


3年半ほど前に父が死んだ。
末期の胃癌だった。
一年半の闘病の末に、 
自宅で看取ることができた。

父亡き後最初の一年は
片付けやらであっという間に過ぎた。
2年目辺りから母に対して
あれ?と思う事例が増えた。

映画を観ても内容を覚えていなかったり、観たこと自体を忘れていたり。
そのうち、やたらに批判的な感想を
述べるようになる。

音楽を聴いてもケチをつける。
昔のものは良かったとか、
最近の若い人はとか、
以前はそんな風には余り言わない人だったのにと感じた。

これが年寄り特有の懐古主義か、
くらいにしていたが
今考えると始まりだったのかもしれない。

なんとなく不機嫌な日が増える。
イライラした表情が一目で分かる。

母は専業主婦だが、地域に根差した
様々な活動を30代から続けている。
年齢なりにセーブはしているが
それでも上手くこなせない。
もっと分量を減らせば、とアドバイスすると怒り出し話にならない。

イベントに弱く、
正月に家族が集まるとなると
パニックになる。
時々、口論になった。

私はこの頃から
同居を考え始めた。

私は実家の地続きの古い家に
住んでいた。

母の母、私の祖母が住んでいた家だ。
土地と家屋は母が相続している。
私は離婚後そこに住んで
二人の娘を育てた。
なんの資格もキャリアも無い私は
非正規雇用で働いていた。

亡くなった父は
誰でも知っている航空会社に高卒で入社し、高度経済成長期の恩恵を
存分に受けた世代なので
私に家賃を請求すること無く、
二女の学費も出してくれた。

私の離婚直後
元夫のDVの影響か
長女が精神を病む。
以降彼女は精神科受診が
欠かせない生活を続けている。
(でもそれなりに回復はしている)

そんなこともあり、
両親に経済的余裕もあったので
私はそこに甘え、家賃は支払うこと無く生活して来た。
ありがたいことだと
深く感謝している。
話が逸れた。

母は3年目、昨年から
明らかに変わった。

今まで使っていたパソコンが使えない。
スマホに買い換えると自ら言って
変えたのに、使い始めたとたんに
文句を言う。

忘れ物失くし物が 
多発した。

ネガティブな言葉が多い。

今まで普通に出来ていた
風呂の沸かし方が分からない。
テレビの電源が入れられない。

一つ屋根の下に住んでいれば
すぐに対応できる些細な困り事が
どんどん増えはじめた。

そうこうする内に
祖母の家にガタが来はじめた。

水廻りのリフォームが
できていないし、
サッシは一部だし、
日当たりが悪く極端に寒い。

これはもう
同居一択だろうと
母を説得した。

弟が大工なので
実家二階をリフォームして
祖母宅老朽化をメインの理由として私と、私の二女と、母の
女三人暮らしをしよう!と
話をした。

それが昨年夏だ。
母は納得してくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?