見出し画像

涙のROCK断捨離 95.Johnny_Thunders 「Hurt Me」

ジョニー・サンダース「ハート・ミー」/Johnny Thunders 「Hurt Me」
1984年

前回のコラムで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを継承するバンドとして、なぜニューヨーク・ドールズが挙がらなかったのかな、と公開した後になって思いました。少し考えて、おそらく私の中でニューヨーク・ドールズは「病んでない」と感じているからだと結論付けてみました。

タイプこそ違えど、テレビジョントーキング・ヘッズも、世の中の人とチューニングが合わなくて心を壊してしまうような不器用さを感じます。
社会不適合な自分を恥じ、本当の自分を隠しながら生きているのに、音楽から狂気が漏れ出してしまっている。
この、多くの人が行き交う都会だからこその孤独と、何かのきっかけで目覚めてしまいそうな気弱な狂気は、ヴェルヴェッツを継ぐ者には必須な要素だと、勝手に思っていたわけです。

一方で、ニューヨーク・ドールズのぶっ壊れ感は確信犯な匂いがするのです。病気だとしたら仮病です。おかしな恰好はしていても、実は社交的で世渡りだって上手い方です、きっと。
音楽についても、私の中では、スレイドゲイリー・グリッターのおバカ系グラム・ロックとかパーティ・ロックに分類されています。
テレビジョンがデビューした年には解散していましたし、その後のザ・ハートブレーカーズはロンドンが活動拠点でしたから、ニューヨークでもなく・・・。
あの時代に実際のライブを経験したら、違った印象を持つのかもしれません。
でもそうしたわけで、私の中のニューヨーク・ドールズは、ヴェルヴェッツとは意識の中で分類が違っていたので、前回のコラムを書いている時には思い出さなかったのでしょう。

ひょっとしたら、ラモーンズテレビジョンにとって、ニューヨーク・ドールズは、破天荒なロックン・ローラーとして憧れの存在だったかもしれません。
でも、不器用で社交性のない連中は、あんなキラキラしたスターにはなれないのです。

教師とも仲良くやれてしまう不良と、クラスで同級生からも孤立するオタクみたいなものでしょうか・・・。

ただ、私はグラム・ロックが大好きですし、ニューヨーク・ドールズザ・ハートブレーカーズ も大好きです。

それにしても、ジョニー・サンダースニューヨーク・ドールズで女装まがいの格好をしてグラム・ロックっぽいことをやっていたのに、ロンドンでパンク・バンドを始めてヒット曲まで出してしまえたのは、なんだか不思議です。
当時のイギリスのパンク・ファンは、否定的に捉えなかったのでしょうか・・・?
ジョニー・サンダースは、おそらく生粋のミュージシャンで、ギタリストで、ロック・スターだったのでしょう。ステージがカッコ良ければ全て良し、だったのではないかと。

このへん、詳しくないので改めてCDラックを見てみたのですが、「ジョニー・サンダーズ&ザ・ハートブレーカーズ」のCDが見つかりませんでした。訳知り顔で書いてきましたが、どうやらパンク系のコンピレーションもののCDで聴いていただけのようです。

代わりに出てきたのが、ジョニー・サンダースのソロ「ハート・ミー」です。(前置きが長すぎですね。ホント、スイマセン。)

全19曲、1時間弱のボリュームを、アコースティック・ギターの弾き語りだけでやり切っています。
ボブ・ディランの曲を2曲歌っていますが、基本的には自身の曲で構成されています。選曲にはこだわりがあったようで、キャリアのヒット曲をアコースティック・アレンジにして稼ごうというものにはなっていません。
ただ、本当に地味に弾き語っているだけなので、なかなかなファンでないと、集中力が切れて聴き流してしまいそうです。

1曲目の「サッド・ヴァケイション」は、
親しかったセックス・ピストルズシド・ビシャスのことを歌っているそうです。
歌い出しの

「I’m sorry I didn’t have more to say
Oh Maybe! I could've changed your fate
Oh You were so misunderstood
Oh You could've been anything you wanted to」

という歌詞は、英語力の無い私でも泣けてきます。

こんな歌を歌った彼も、38歳の若さでこの世を去ります。

もしも興味を持っていただけたなら、この音楽と向き合える時間をなんとか確保していただき、バーボンなんかも用意して、歌詞カードを片手にゆっくり楽しんでみてください。
CDが終わりに近づくころには、いい感じで酔えていると思います。

Spotifyでも聴けます。
なぜか、曲数が増えていて、アコースティックではない曲も入っています。

読み返して思ったのですが、これって、ジョニー・サンダースが、もとはニューヨーク・ドールズのギターとヴォーカルをやっていて、その後にロンドンへ渡ってパンク・バンドに転身したっていう情報の下地が無いと、読んでても意味が分からないですよね。
あのニューヨーク・ドールズの! あのハート・ブレイカーズの!  あのジョニー・サンダースが、なんとアコースティックの弾き語りアルバムを出した! ってことが、まず最初にセンセーショナルな情報だったのに、全く触れないまま書き終えてしまいました。
文中に入れるのは、大変なので、ここで補足しておきます。
まったく、不親切ですね。スイマセン。

写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Mitchell Hollander on Unsplash