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涙のROCK断捨離 138.MUSE「Black_Holes and Revelations」

ミューズ「ブラック・ホールズ・アンド・レヴァレイションズ」/ MUSE「Black Holes and Revelations」
2006年

独自の世界観を展開しながら、コアなファンを獲得するだけでなく、商業的な成功も手に入れたミューズが、スター・バンドとしての期待を背負う中で発表した4作目です。

バンドは成功を手に入れて、さらなる成長を目指したことでしょう。
新しいファンを獲得するには、今までの延長だけでは足りません。
ただ、古いファンは好きになったアーティストのイメージを固定化しがちで、必ずしも変化を望まないことがあります。
その点、ミューズの4作目は、基本的に前作を踏襲していて、ファン離れが起こるような変化ではありませんでした。

ただ、個人的には、なんだか丸くなった印象がして、ほとんど聴き込まずに放置していました。
これまでの作品で感じた、周囲に理解されにくい切実な思いを歪んだエレキ・ギターの音に乗せてやっとの思いで絞り出している、とようなギリギリ感が、ここでは薄れてしまったように感じられたのです。

メロディの美しさは相変わらずで、楽曲のバリエーションも増していると思います。
狂気を感じさせるようにバンドが暴れまわる曲が無い反面、場所や時間を選ばずに聴くこともできそうです。
エッジが削れたのではなく、大人になって深みを手に入れたのだと解釈することはできます。
音楽的には評価される点が多いのだろうと思うのですが、私がミューズを好きになったのは、現状に抗う切実さみたいなものだったので、成熟とは相性が悪かったのかもしれません。

今聴き直しても、3曲目の「Supermassive Black Hole」のようなダンサンブルな曲や、5曲目のアコースティック・ギターのアルペジオに合わせてコーラスが入る「Soldert's Poem」などには違和感を感じてしまいます。
(どちらも、この曲が好きだというファンはいると思いますが。)

発売当時、CDショップでも大きくプッシュされていましたから、音楽業界の評価も高かったのでしょう。
このアルバムで、ミューズのファンになったという方も多くいたかもしれません。
聴きやすさという点では、これまでで最も受け入れやすいアルバムであることは確かです。
ただ、今思えばこのアルバムには、私がミューズを離れる火種のようなものが潜んでいたこともまた事実だったのです。

Spotifyでも聴けます。

Top Photo by Sergey Pesterev