時代の流れをリードする、日本音楽界注目の個性派トランぺッター”佐藤 秀徳”さん
日本では数少ないプロのトランペット奏者として、幅広い活躍で一般の人のみならず音楽業界にもファンが多い佐藤 秀徳さんにお話を伺いました。
佐藤 秀徳さんプロフィール
出身地:福島県郡山市
経歴:東京藝術大学卒業。 ソロからオーケストラ、ミュージカル、ジャズ・ポップスのフィールドなど多方面で演奏しているフリーランスプレイヤー。シアターオーケストラトーキョー(Kバレエカンパニー)、横浜シンフォニエッタ、東京金管五重奏団などに所属。アンサンブルノマドレギュラーゲスト。 1999年〜ライヴパフォーマンスグループ「チャンチキトルネエド」(2013年活動休止)のメンバーとして海外公演や全国ツアーに参加し各方面から高い評価を得た。 2013年NHK連続テレビ小説「あまちゃん」2019年大河ドラマ「いだてん」などをはじめとする劇伴音楽でも多く演奏している。大友良英スペシャルビッグバンドメンバー。
2016年にはギタリスト佐藤紀雄とのデュオ「Barchetta」の活動もスタートさせ、オリジナルの世界観を作っている。これまでにソリストとして、多摩ウインドオーケストラ、江戸川吹奏楽団、東京ガス吹奏楽団などと共演。 故郷福島県では、ソリストとして多くの音楽団体と共演するほか、後進の指導にも力を入れている。2010年に福島県出身のトランペット奏者3人とピアニストで結成したQuartet Made in Fukushimaでは、県内をはじめ東京、福岡での公演、CD制作、2017年にはNHK-FM「リサイタル・ノヴァ」出演するなど、精力的な活動を続けている。
「全ての人が自由な発想で生きられる社会が理想」
Q:どのような夢やビジョンを持っていますか?
佐藤さん(以下敬称略):具体的な夢やビジョンというのは実はなくて、漠然としているのですが、自分にしかできないことを常にしていきたい、と思っています。その時々にビジョンや目標があって、 その先に何があるかわからないけれど知りたい、そこに行きたいという気持ちで生きてます。毎日とてもフレッシュです。
Q:その夢を持ったきっかけは何でしたか?そこにはどのような発見や出会いがあったのですか?
佐藤:「大きな夢を持たなければ実現しない」と言われて育ってきたんですよね。たぶんみんなそうだと思うんですけど。これはすごく大事なことだと思います。僕にも大きな夢がありました。ただ途中から、具体的にイメージできない、はっきりしなくなっていって、そのことが大きなストレスと障害になることも身をもって知りました。大きな夢を持っていれば◯、なければ×、の ような風潮がすごく不安になりました。夢だけの話ではなくて、これが正解でそうじゃなきゃ不正解。のようなこと、世の中にたくさんあると思うんですよね。 それで僕は正解と思われるほうに行こう行こうとしていたけど、どうしてもよくわからなくて、逆にそうじゃないほうに興味が湧いたんです。こうならなきゃ、ではなくて、こうなりたいを優先する。それが自分の中ではすごくスッキリして。僕がなりたいのは、僕なんだ、見えるところにはなくて、作るんだと思ったんです。単純なようだけど、そういうスパイラルに入っているときには見えないものなんだと思います。自分に正直に道を選ぶ、というのは。
Q:その発見や出会いの背景には何があったのですか?
佐藤:僕が音楽を仕事にしたいと思ったのは、11歳のころ、オーケストラで演奏することを夢見たところから始まりました。オーケストラに入りたい。日本には素晴らしいオーケストラがたくさんあって、大学時代からオーディションを何度も受けてきましたが、なかなかいい結果は出なかった。しかしさまざまな演奏の仕事や仲間との演奏活動の中で、オーケストラ以外の音楽にもすごく惹かれるものがあって、僕は僕のやり方で、自分の在り方を探していきたいと思ってきたんです。いろいろなことを自らの意思で決めて、道を切り開いていくという生き方に魅力を感じるほうが上回ってきて、これが僕のやり方なんじゃないかって。自分の中で、何が一番大切でこだわりたいのか、よく考えるようになりました。今は大好きなオーケストラをはじめ、いろいろなジャンルの仕事が僕の何本かの大きな柱になっています。 もう一つ重要なことは、今までの人生で、本当にたくさんの素晴らしい人たちに出会えてきたということです。導き、助け、時に厳しく、しかし常にあたたかく。誰一人いなかったとしても、今の僕はいないと思います。感謝しかないですね。
Q:佐藤さんにとって音楽とは何ですか?
佐藤:僕の中で音楽は全て、なのですが、全てというのが音楽そのものであり、トランペットであり、人であり、そして家族であり。 音楽を通して在る世界、それが僕の生きる世界なのかなと思ってます。それはすごく幸せで。もしかしたらそれは音楽じゃなくてもいいのかもしれない、とも思える自分もいます。音楽=自分。というのが今で、この先のことはわからない。わからないっていうのは、楽しいじゃないですか。とはいえ、たぶんずっと音楽をするんだろうと思うんですけど。
Q:今興味のあることや、今後の活動で楽しみなことはありますか?
佐藤:僕は福島県の出身で、子どものころに音楽の素晴らしさを教えてくれる先生がたくさんいて、音楽の純粋な楽しみ方、というのを知りました。そこには正解はなくて、楽しむことができたら◯というような世界だったんです。30歳を目の前にして、何か地元に恩返しをしたいとグループを作って、さて活動開始しようと思った時に大地震があって。地元のことを想う気持ちも増して、何かできないかずっと考えてきました。今、演奏活動にプラスして子どもたちの指導にも力を入れているのですが、子どもたちのスポンジのように吸収する力に目を見張ります。しかも、その子たちは何年か経てば大人です。音楽の素晴らしさを真っ先に伝えたいのは、子どもたちだなと。教育というとちょっと違うかもしれませんが、僕が今感じている全てを、たくさんの子どもたちにも伝えたい、と思っています。自由に生きて、自由な発想とそれを出せる社会。そして、みんなだれかに愛されて、支えられて生きているということ。これからの時代にきっと必要なんじゃないかと思うんです。そして何年か経って、大人になった彼らがどのような世界を作るのか、すごく興味がありますね。
今やっているプロジェクトの一つで、1月にギターとトランペットのデュオをレコーディングしたのですが、夏ごろにリリースされる予定です。この組み合わせはあまり例がなくて、さらに収録曲はとてもバラエティに富んだものになりました。このCDを持ってリリースツアーも計画していて、これは楽しみですね。
Q:AI時代についてどう思いますか?
佐藤:きっと今まで人間がやってきた仕事が減ると思うんです。自由な自分の発想を確実に持つ必要があり、オリジナリティーがより大事になっていくと思います。一人一人の発想が大事にされて、それぞれが個性を表現できるようになれば、それは人間にしかできないことだと思います。人にしかできないことと、AIの境界が分かれていくと思います。でも考えてみると、今までも人間がやってきたことを機械がやったり自動になったりしてきた中で、人間にしかできないことを見出してきたし、きっとこれからはもっと豊かな生き方ができるのではないかなと、楽しみですね。
ありがとうございました!佐藤さんは現在都立拝島高等学校吹奏楽部にて金管楽器の指導もされています。3月の同校吹奏楽部定期演奏会にも出演しますので是非足を運んでいただけたらと思います。
都立拝島高等学校吹奏楽部定期演奏会
日時:2019年3月26日(火)18時30分開場 19時開演
場所:羽村市生涯学習センターゆとろぎ大ホール
佐藤さんのご活躍は以下のHPで御覧いただけます
【編集後記】
インタビューを担当した難波と中澤です。中澤の職場の同僚である音楽科の難波教諭に「素敵な演奏家の方を紹介してほしい」と頼んだら、音楽も人間性も頭も顔もいいすっごく素敵な人がいるということで紹介されたのが佐藤さんでした。トランペット界で知らない人はおらず、クラスの吹奏楽部のトランペット担当の生徒は佐藤さんに指導を受けることができたことに感動し、号泣していました。日々の活動の中で積極的に一流の音楽に生徒が触れる機会をつくる難波教諭と共にインタビューができてとても楽しかったです。お二人が出演する拝島高校吹奏楽部定期演奏会を楽しみにしています☆
この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
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