Aalto Summer School 2024 - 後半
この記事は「Aalto Summer School 2024 - 前半」の続きです。
Aalto大学のサマースクール後半について書きたいと思う。
締めくくりのファイナルプロジェクトでは、一週間ともに過ごしたグループのメンバーと「私たちの未来へ影響を与えうる試作工芸品」を制作した。
Day5:Futures Frequency
未来がどうなっていて欲しいのか、なぜそう思うのか、現状の問題は何かなど、少し先の未来について考えてみる講義。
このSITRAのサイトを素材として、仮想未来のサウンドを聴きながら想像を膨らませたりした。ちなみに私が希望する少し先の未来は、交通手段が発達して世界中への移動が今より短時間で済むことだ。
Day6: ゲスト講師(Moi Namaste)
インドとフィンランドのテキスタイルデザインを融合させたブランドMoi NamasteのCEOを招いた講義。ビジネスが生まれた経緯や大切にしていること、伝統文化やデザインへの敬意の払い方などを彼女独自の目線で堂々と語っている姿はとても印象的だった。最近、世の中的にも”領域横断的”なムーブメントがあると思う。異業種同士でサービスやプロダクトを通じてコラボレーションしたり、官民協働のプロジェクトがあったりなど。だが、むやみにコラボレーションと言っても、各々の良さが損なわれては本末転倒だということだ。実際に講義の中ではナイキ社が、あるアフリカ民族の伝統的な刺繍柄を誤って転用したことで販売中止となり大きな影響があったというケースが紹介された。文化に敬意を払わない、そんなことある?と思うようなことが実際に起きているのも現実だ。
講義の途中、CEO自らが自分たちのサービスの改善点を私たち学生に問いかける場面があった。その意見を真剣に受け止める姿をみて、なんて謙虚な経営者なんだと思いながら見ていた。
Day7:Seurasaari Open Air Museum
7日目の講義は、ヘルシンキ市内のすぐ近くにある島・セウラサーリSeurasaariを野外活動として訪れた。多分1時間もあれば周囲を一周できるような規模感の島だが、フィンランドの古い家屋を展示したオープンミュージアムや、一息できるカフェなどがあり、内容は盛りだくさんだった。
ここを訪れた目的は、ファイナルプロジェクトの制作で使用する素材とアイデア探しのためだ。
特に印象的だったのが、100年以上前の家屋の中にあったフィンランド家具だ。実際にその家屋で使われていた物の劣化が激しければ、同じ年代に使われていた物をわざわざ持ってきているらしい。今も愛されるミニマルなデザインが印象的で、歴史のエッセンスを脈々と受け継いでいる国なのだと感じた。オープンミュージアムを散策する中で撮った写真をいくつか掲載する。
Day8: スタートアップ企業訪問(大学内)
8日目は大学構内にある研究機関やスタートアップ企業を訪問した。冒頭でも述べたように、Aaltoは学術とビジネスと関わりが深いイメージがあったが、実際に企業と協働しながらプロダクト開発を進める学生さんの話を伺うことができた。ちなみに、この時私たちに説明をしてくれたうちの一人が、私のステイ先のルームメイトであり日本人交換留学生のYukitoさんだ。Yukitoさんは留学生活のことを毎日3行日記にまとめてnoteに投稿していらっしゃる!ので事業内容も含め興味のある方はぜひ。
また大学構内には、Woamyというスタートアップ企業がある。セルロース由来の環境に優しい緩衝材を扱っており、オフィスや工場内を案内してもらった。消耗される緩衝材に、環境配慮だけでなく、ラグジュアリーなイメージを与えたプロダクトは斬新だった。少なくとも私はここで、ファイナルプロジェクトを制作する上で「環境配慮」はもちろん、意匠面をどう工夫してコンセプトを昇華させるかがキーワードだと感じていた。
Day9-10: Final Project Hands-on workshop
これまでの講義の集大成としてファイナルプロジェクトに取り組んだ。課題は「私たちの未来へ影響を与えうる試作工芸品」だ。
結果として私たちはTARP(テントの帆)をモチーフにしたランプを製作した。ランプシェードの部分はセルロースなどの自然素材を使用し、光がうまく透過するように素材を薄く伸ばす工夫をした。実際に試作品に実装はできなかったが、本来はソーラーパネルを実装し、屋内屋外両用のランプにすることで災害時にも持ち運べるようにした(これは私が災害大国日本の出身であることからアイデアを挙げた)。
光はいつも何かを照らし、帆はその照らす先に舵をとってくれる存在。このランプが私たちの未来を照らす存在になれば良いと思う。
私たちは、「自然素材」「インテリア」という領域で課題を作成したが、現在と未来の自然を対比させた箱庭のような作品など、メタファー的なアート作品を制作しているグループもあり、自分にはない発想から刺激を受けた。
以上がAalto大学サマースクール2024を大まかに紹介した内容だ。
私がこの講義を受けて感じたことがある。
特に私は社会人として働く中で、どうしても「コストと締切志向」が中心になっていた。これはこれで正解だと思うし、なくてはならないマインドには変わりない。しかし、その限られた時間とリソースの中で「考える時間」をどれだけ割けられるかどうかが、私の今後の課題だと感じた。
Day1で私たちに投げかけられたのは、「WHAT IS DESIGN?」
今の私の中にある答えをなんとなくまとめてみる。そして多分これからも変わって行くと思う。
デザインは実用的だ。
デザインは疑問と発展だ。
デザインは敬意だ。
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