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読書ノート「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す」

私たちは物質的な豊かさを成し遂げた末の高原社会に到達している。右肩上がりの永続的な成長を追い求める経済モデルは限界を迎えつつある。
というような論理展開の本。

GDPについても、かなり恣意的に決められた指標であって、計測する意味はもはやないのでは?とのこと。

そもそも、何かを計測する際は、目指す姿があって、その目指す姿にどれだけ近づいているかを計測し差分を明らかにして対策を打つために計測するためのもの。

GDP計測してどうしたいの?ということだけど、物質的な豊かさを実現してしまっているこの日本で、物質的な豊かさを測るGDPを計測したところで何になる??

これ、今私が仕事でやっている、今のビジネスの目指す姿は何か、それを表す指標は何を設定すべきかを考えているところだけど、それと全く同じだなと思った。

そして、そのありたい姿を導出するのが結構難しい。経済学者はここら辺は全然論じないところ。哲学者の役割かも。

・GDPは世界的に減少トレンドにある。
 生産性上昇率も主要7カ国で減少トレンドにある。

日本だけが成長率が下がっていて、日本だけが生産性が悪いかのように言われるけれど、世界見渡してみてみんな一緒だよってことらしい。

・成長が続くというのは幻想に過ぎず、一種の信仰のようなもの。異常事態とも言える。
・長い歴史からすれば、ほぼ成長しない今の状態がむしろ正常な状態と捉えた方が良い。
・理想を実現するための途方もない能力はおびただしく持っているのに、いかなる理想を実現すべきかはわからない。
→物質的な豊かさを実現してしまった今、何があるべき姿で、何を目指せばいいのかを見出すことが非常に難しくなっているのは仕事をしていてもそう思う。売上だけ追っていればいいという時代でもない。分かりやすい成功の姿がないところで、何をあるべき姿として設定していくか、周りが納得するように伝えるのって本当に難易度の高いことだと思う。

・イノベーションによって経済の限界性は打破できないし、事実できていない。実際、インターネットの出現によって新たな成長が始まったというデータは「一切」存在しない。
・巨大な経済圏の中でお金をただ移転しているだけで、全体のパイは増えておらず新たな成長は生み出せていない。
→これは「意外だな」と思う人いそうだけど、実際そうらしい。でも考えてみれば、新たなビジネスが起これば一方で淘汰されるビジネスもいて、完全にプラスで成長というものにはつながっていない。イノベーションってつまりは、ただ移転しているだけで、かつその移転はより偏りのある移転となり、むしろ格差を生み出している。
こうなると、イノベーション=悪と捉えられてもおかしくないのか・・?

・有名な電通の戦略の十戒は今の時代にそぐわないし、倫理に反するもの。だが、これを全く考えずに物を売っているビジネスマンはいない、そしてこれを前面に出さずにしれっとした顔でビジネスしていること自体が欺瞞。
・論理を脱構築する際に攻撃すべき最脆弱ポイントは、暗黙の前提となっている「二項対立」
→これは日常の議論でもかなり使える考え方。AかBかという道筋に則って議論しているときに、そもそもAとBしかないのか?というところに疑義を投げかけて脱構築するというもの。
これは普段の思考でも忘れないようにしていきたい考え方。結構これにハマって変な議論から抜け出せなくなってる人多い。

・国・社会を動かすシステムをリプレースするだけでは問題は解決しない。そのシステムの中で動く人間が変わらない限り。
・「浪費」や「無駄」が自分らしい人生を見つけるためには必要。一見して時間の無駄、時間の浪費と思われるようなことがキャリア形成においても非常に重要。(下記参照)
→これは実感として本当にそう思う。無駄とか何の役にも立たないようなことこそが心の豊かさを産むと思うし、実際私もそういう無駄なことばかりやって楽しんでる。
いつしか石材の見分け方講座に参加したときに講師の先生が「こういう石を見分けるという何の役にも立たないようなことこそが本当に面白いんですよね」と言っていたけれどそれって本質を突いていると思う。実際そうだし。

・ビジネス的に成功した人の80%が明確なキャリアプランを持っていなかったというアメリカの研究結果がある。中長期的なゴールを設定して頑張るのはむしろ危険。偶発的に生成されるキャリアを引き寄せる方向に努力した方が良い。そのためには、好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテークの要素が必要。
→これって中長期的にコツコツそれに向かって一途に頑張るのと真逆・・笑あっち行ったりこっち行ったり、状況の変化を楽しんだり、かといって出会った仕事はすぐ諦めずに粘り強く取り組んだりという計画性のなさこそがキャリアにはとても良い影響を与える、ということらしい。
言われてみればわかるような気もする。

だいぶ前に読んで色々面白いなと思った記憶あったけど、今の現状を何かおかしいと捉えてどうすれば良いか、自分に何ができるかを考えて行動することを呼びかけているような本でした。

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