ナショナルギャラリーのギャラリートークでインクルーシブとは?を考えた
金曜の夜は、ナショナルギャラリーが夜9時まで空いてるのでタイミングが合えば足を運んでいます。ナショナルギャラリーは大きすぎることもなく、いろんな時代の絵が網羅的に見れたり、私の好きな印象派のマスターピースも素敵なので、ロンドンで1番くらいにお気に入りの美術館。
(しかも夜だと入場の列や混雑具合も休日の昼間に加えてましな気がしていて、狙い目な気がする笑)
今回は年初めのギャラリートークやイベントがたくさんあるとのことだったので、それらを狙って訪れてみました。特に楽しみにしていたのが、このtaner and natureというギャラリートークです。
ターナーさんの絵は好きだし、イギリスの代表的な画家だし、ナショナルギャラリーにも素敵な作品があるしどんな感じだろう…と仕事終わりにダッシュして向かいました笑
※すでにサイトはこのイベントは終了しました状態だったので備忘にスクショを…
さてRoom34についてびっくり。
すごい人だかりです。ですが、さらにびっくりしたのが説明をしてくれている人がなんと手話を使っている…!そして、それを英語に翻訳して伝えている人がいる…!
tutorさんの紹介までちゃんと見ていなかったのですが、以下の経歴の方でした。
お恥ずかしながらこれまでこういう分野を全く知らなかったので少しびっくり。
(tutorさんの説明以前に、説明詳細にも書いてありました…タイトルしか見てなかったんですね…苦笑)
でも説明してくださったお話すごくすごく面白くて。
ナショナルギャラリー近くのロイヤルアカデミーで学び、30代で教える側になるなど早熟なターナーさんの経歴に始まり、もともと人気はあったけどperfomance paitingをして人気をさらに高めるなどイギリスやヨーロッパでどう受け入れられていたかなどのご説明。
ターナーさんといえばいろんなところに旅行していたことも有名なので、イギリスがフランスと戦争してた時はウェールズとか国内を旅行してたとか、ちょうど帆船から蒸気船にかわる時代だったので旅行しやすくなった等時代背景交えた小話も。もちろんナショナルギャラリーが所有する絵についての説明もあり、本当にあっという間の1時間弱でした。
最初は少し驚いたものの、お話自体がおもしろくどういう言語で伝えているかは途中からあんまり気にせず、楽しんでいました。
(最初は立ち見していたのですが、これは面白いぞと思い前の方が空いたので三角座りして見ていると、それはいいアイディアだといい後ろに立っていたお兄さんも私と並んで三角座りして聞き入ってました笑 本当にみんなそんな感じで、聞き入って&見入っているという雰囲気でした)
そしてもう一度、私が驚いたの質問タイム。4-5人ほど質問されていた方がいたのですが、ほとんどの方が手話で質問をされていたのです。おお、なるほど、気づかなかったけれど聞いている方も手話をされる方達なんだと。もちろん質問内容も英語への翻訳者の方が翻訳し、声に出してくださるので私も何を言っているのかについていける。Tate Brittenにあるターナーコレクションとの関連についての質問もあり、この質問タイムもすごく楽しかったです。
すごく素敵な時間を過ごすことができ、ぷち感動を覚えて、ちょっと世界の見え方が変わるような経験でした。これこそ、インクルーシブってやつなんじゃないかなと。日本でインクルーシブというとなんか言葉の意味取り違えていないか…と思ったり、変な非対称性があるという場面を見たりすることがあったりなかったり…。
ただ、この場で行われていたことは本当に自然で、場にいる人みんなが楽しめて、トークに聞き入っているという雰囲気がありましたし、この自然さって何がそうさせているのだろう?ということをすごく考えていました。
私が思いついたのは主に下記なのですが、他にもいろんな要素があるんじゃないかなと興味を持つきっかけになりました。
・話の面白さ
・説明する方、通訳する方の技術(この分野のご専門であり、堂々と時にユーモアも交えて言葉を発してはいないけど明るい雰囲気で話をされる技量に敬服…)
・聞き手の多様さ(手話をする人もそうでない方も、人種も多様だった)
・ナショナルギャラリーという箱のネームバリュー(ナショナルギャラリーのトークなのだから面白くないはずがない、という安心感はあって参加できたという節もあるのかも)
こうしたことを考えるうちに日本での状況ってどうなんだろう…と調べてみたくなり以下の文章に行きつきました。
http://art-sign.ableart.org/wp-content/uploads/2020/06/615f942f922e61077fc1a18bcca18232.pdf
この中で、記載もされているように確かにオーディオガイドとかって完全に耳から入ってくる情報で、美術館自体が混んでいたりすると近くで解説を読むこともできないし(しかもかなり複雑な表現が使われていることも多い…)、すごくバリアがある状態なんだと初めて気がつきました。自分がマジョリティにいる場合には本当に気がつけないものだな、と…
この文章の中で紹介されている以下のサイトとかを見ると日本でもいろんな取り組みが行われていることがわかり、日本でもそう言った動きってあるのだなとちょっと感動していました。
お話自体が面白かったのは大大大前提で、日本ではあんまり出会う機会がなかった、美術館の鑑賞者とのコミュニケートの方法というものについて考える機会になりました。日本に帰ったら、こういう視点でも美術館やアート視点を見ていけたらなと思うこの頃です。
長々と書いてしまいましたがお付き合いありがとうございました。
おわり
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