世界が動き始めるまでの孤独と戦う。
最近の私は23時には就寝する。
共に暮らす彼が22時には布団に潜るからだ。
そんな健康的な生活を送る私だけれど、どうしても眠れない夜がある。
何度寝返りを打っても、枕に顔を深く沈めて唸ってみても、窓を開けて夜風に当たってみても。
私は諦めてガサガサと棚から積んでおいた小説本を取り出す。隣で寝ている彼を起こさぬよう、スマートフォンのライトで照らしながら読んだ。
登場人物に自分を重ね合わせ、孤独を忘れようとする。私はいつも彼等に助けられるのだった。
あれだけ長いこと読まれず棚の中で埃をかぶっていた本なのに、読み始めるとあっという間に読んでしまっていた。
小説の世界から、ふっと抜け出す。現実世界が気になり始めた頃、始発電車がまだ眠そうに警笛音を鳴らした。
新聞配達だろうか。まだ眠っていたいと重そうに走るバイクのにぶい音。
隣の部屋から聞こえる、顔も知らない誰かの生活音。
それらは私に世界の目覚めを伝えてくれる。
私はそんな音を聞いて少し安心する。
この音包まれたさに、今しなくても良い何かをする。寂しい夜はそうやって、じっと我慢するのだった。
いつか、自分の言葉を詰め込んだ本を作りたい。