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このくらいが “ちょうどいい”

最近、大きなマグカップで飲むよりも200mlの小さいカップで飲んだ方が、コーヒーの美味しさを感じられるようになった。
若い頃はとにかく得をしたい、量が多い方が飲んだ気がするなんて思っていた。
ところが、だんだん食が細くなりつつある今日この頃。
量より質になってきているのだと実感した。

以前は、大きいマグカップに、インスタントコーヒーをテキトーに入れてお湯を注ぎ、牛乳を入れて飲みやすくしていた。
それを喉を鳴らしてゴクゴクと飲む。
味わうなどほど遠い感じ…
こんな飲み方をしている胃腸の弱い私は、いつも後悔をする。
年々コーヒーというものに少し距離を置いていた。
だが、コーヒー豆を挽いた時や淹れたての香りはすごく好きなのだ。
コーヒー屋さんの前を通るたび、鼻がヒクヒク反応してしまう。
そこにずっといたいと思ってしまうほど…



仕事でカフェの記事を書くようになった。
無論、コーヒーは絶対的に情報として書くものだ。
そうすると、コーヒーを飲んで記事にしなければ成立しない。
『どうしよう…胃が荒れる…』

カフェに足を運んでみる。
評価の高いカフェ。お値段もそれなりで安くはない。
コーヒーにもいろいろな種類があるのだと迷って、何を飲んで良いのかも分からない。
胃腸が弱いしコーヒーの知識もない。
恥ずかしながら店員さんに聞いた。
「胃が弱いので酸味の少ないものがいいんですけど…」
「酸味の少ないものでしたら、コロンビアかトラジャ…ブラジルは一番王道ですけど」
「じゃぁ…コロンビアでお願いします」
そこのオリジナルのハンバーガーとセットで注文した。

10分ほど経ってお目当てのものが来た。
やはり香りは最高だ。
しかし、コーヒーは黒々としている。濃そうだ。
恐る恐るコーヒーを一口飲む。
『あれ? スッキリと飲める…』
コロンビアは酸味が少なく苦味もそれほど強くない。
ハンバーガーも美味しい。そこでまたコーヒーを一口ゴクリ。
『美味しい!』
飲み終わって少し経ってからも胃の調子は悪くならなかった。

私は、いかに人生の大半を無駄に過ごしてきたのかと落胆した。
たかが、150mlくらいのコーヒーに魅了されている。
虜になっているのも言うまでもない。
でも、これで調子に乗っておかわりをしたら、絶対胃が荒れる。
もっと飲みたいのを我慢し、会計をした。
「とても美味しかったです♪」
「それは嬉しいお言葉です! ありがとうございました。またどうぞ〜」

150mlの幸せ。
私にはこのくらいが “ちょうどいい”

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