ローズ・カラー・キャンパスライフ
夜の第147講義棟。今は「嵐山第14支部」と呼ばれる廃ビルの一室で俺はニューロ・リンクしたスーパーコンピューターと格闘していた。
何分たったのか。床にエナジードリンクの缶が転がっている。生協印のEDも吹き飛ぶヤバイ品らしいが、ヤル気があったところでこのプロトコルは股を開いてくれない。俺でも開けないとは何のデータなんだ。
「早くしろよこの野郎!!おっせぇぞ!!」
「すいません!!!!もう少しです!!!!!」
3Dプリンター製のチープな銃を俺の後頭部に当て、線の細い男が喚く。素材はおもちゃと同質とはいえ、向けられる殺意は鉄のそれと変わらない。今は必死なところを見せるべきだ。
「おめぇがもっと早けりゃよぉ!!ヨシハルはああならずに済んだのによぉ!!」
ヨシハルとは隅で死にかけている奴のことだろうか。急ぐあまり無理やりデータドライブを外そうとし、防護システムの電撃によって全身を焼かれた。それに関してはすべてあいつのせいだろう。
「すいません!!!本っ当にすいません!!!!」
生協に拉致されたうえ無理やり連れられたこの作戦には俺含め30名ほどで臨んだが、戦闘で過半数が死亡、そして数々の防護システムにより残りは俺とこいつだけだ。
畜生。どいつもこいつも。
こんな三下共の思うがままなのか、俺は。そう思うとだんだんと悔しさがこみあげてくる。
「見つけた。」
ふいに女の声がした、と同時に風を切る音。そして後頭部から殺意が消える。
何が起こった。興味が恐怖を上回り、一気に振り向く。
そこには首がない若者だったものと、金属質な腕から血濡れのカタナを生やした女がいた。わからないまま叫ぶ。
「助けてください!俺はー」
「サム=マサムネ。」俺の言葉を遮り女は続ける。
「電子学科特別留学生。いえー、
裏学長。そう呼ぶべきね?」
ここは県全体が大学だった特区「ニューキョウト」。
学生運動により、2年前に独立した新国家である。
【続く】
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