全体の施策を始める前に考えたこと
この記事では、具体的な施策を決めるにあたり、考えたことと行った事前準備について書いていきます。
集客だ!と息巻く前に、わからない事がたくさんありました。
1番の疑問は、チームが地元住民への無料招待をしているのにも関わらず、なぜ集客増加につながらないのか?
それには、認知が足りていないだけなのではないか?という仮説はありましたが、そもそも魅力がないのか?はたまた強力なライバルがいるのか?
このあたりもざっと調べておこうと思いました。
それを明らかにするためには、まずはチームを取り巻く環境=ホストエリアのことを知らなければなりません。次に、チームの魅力探し。これは、チーム×お客さんに関する事で、お客さんがわざわざ足を運びたくなる魅力はどこにあるのか?を調べました。そして、同じエリアで集客を食い合う競合との戦力比較も重要です。
この3つを、今回は時間もないためざっくり情報収集です!
SAMEYAが今回広報のお手伝いをしたのは、ラグビーリーグワン3部に属する「清水建設江東ブルーシャークス」(現在は2部に昇格)。ホストエリアは、東京都江東区です。
ここを舞台に、SAMEYAは3つのステップで情報を集めました。
①街を知る:ホストエリアの地元の人とつながり、話を聞く
「郷に入っては郷に従え」が鉄則ですが、まずはその「郷」を知らねば話にならないという事で、徹底的に調べました。スポーツチームが根差す「地域」というものは、本当に多種多様です。それぞれの地域の特性をちゃんと理解していないと、結果はついてこないと感じていました。
これは、震災がきっかけで関わった東北・気仙沼で体感したことです。地域社会には、物事を進めるのに、その地域独自のプロセスやルールがありました。(きちんとプロセスを踏まないと進むものも進まない、なんてことも・・・)「よそ者」だったSAMEYAにとってそれは、驚きの連続だったことを覚えています。
だからこそ、ホストエリア・江東区をきちんと知らなければ、と思ったのです。
もともと江東区には縁もゆかりもないと思っていましたが、何という偶然か、別の仕事を通じて、江東区で街づくりをされている社長さんとお友達だったのを思い出しました。早速連絡を取り、地域の方をたくさん紹介していただき、とにかく話を聞くことにしました。
話を聞くときに意識したポイントはこちら。
街として、住民として、何を大切にしているのか?
街での物事の決まり方は?
街で力を持っている人は?
地域の課題は?
これは、キングダム的にいえば「戦場での火の起こしどころ」を探る作業。(言いたいだけw)チームと地域の接点を探し、今後具体的な施策を実現させるために、ヒントを見つけたいと思っていました。
幸運なことに、今回SAMEYAは地域のキーパーソンとのつながりがありましたが、もし僕がホストエリアに全く知り合いがいなかったらどうしていたか。
それでも、やっぱり街の人に話を聞きに行っていたかなあと思います。街ブラをして、長く地域で営業していそうな老舗のお店に入って街の変遷を聞いたり、地域を主軸に活動している人を探して突撃してみたり、役所の観光振興課、スポーツ推進課を訪ねたり。地道に輪を広げていっていた気がします。
②チームを知る:地域の人に印象を聞き、ファンと触れ合う
チームの魅力を整理するのに特に意識したのは、外からの視点です。チームを外から見た時にどうなのか?今回は、「ホストエリア」と「ファン」の2つの視点からチームを見た時の印象を調べます。地域での認知度や印象、さらには応援してくれるファンにとっての魅力やスタジアムの特徴、応援する理由などをヒアリングやツイッター上でエゴサしていきました。
認知度はほとんどないけど、期待感はありそうです。また、区民無料招待という情報がほとんど届いていないこともわかりました。
「ファン」については、会場でキッチンカー営業を行いながらファンの人にヒアリングしたり、Twitterで検索をして調べました。(ラグビーファンの皆さんはTwitterでの交流が盛んです)
具体的な選手やプレーよりも、ゲーム外のコンテンツに魅力を感じてもらっていることがわかりました。
③自分のチームと競合を比較する:デスクリサーチ
デスクリサーチというとかっこいいですが、単にググるだけです。笑
チームに関わるようになってから、区民無料招待をしているのに集客が伸びないことを疑問に感じていました。もしかしたら、ものすごい強力な競合がいるのかもしれない。ブルーシャークスと同じ「夢の島陸上競技場」をホームスタジアムとする、プロラグビーチームのシャイニングアークスを競合に設定し、比較してみました。
相手は、ラグビーリーグワン1部リーグに属する強豪チーム。海外の有名選手が所属していたり、SNSのフォロワー数に圧倒的な差があったりチームのビジネス資源は歯が立ちません。さらに、江東区の有名和菓子店とスポンサー契約して選手にプレマッチミールを届ける等、地域との連携もはじめていました。
しかし江東区が戦場という事を考えると、全く勝ち目がないようには見えませんでした。競合のチームの名前は「シャイニングアークス・東京ベイ浦安」。調べてみると、チームの軸足は浦安にあり、リーグの規定の関係で「夢の島陸上競技場」をホームスタジアムとして使っていることがわかりました。江東区とも相互連携協定を締結したり、地域企業とのスポンサーアクティベーションもしていますが、知名度はシャークスといい勝負で特に変わらない印象でした。
また、①で調べた、地域の特性から見ても勝ち目はありました。ホストエリアの中でも、特に亀戸や深川というエリアは人間関係が濃密で、地元愛が強いことがわかっていました。ビジネス資源で劣っていても、しっかり人間関係を築いていけば、勝ち目があると思いました。
また、我々のチーム名は「清水建設江東ブルーシャークス」。わが町「江東」の名がチーム名に入っているのも、「おらがチーム」になる重要なポイントだと感じました。特に地域愛のあるエリアでは!
残された時間でできることとは・・・?
「環境×自社×競合」を調べ、集客に効果のありそうな施策の方向性を並べると、下記のようになりました。
でも、この提案の方向性はシーズンスタートからじっくり腰を据えて取り組むものも多く時間がかかりそうです。しかし、具体的な課題は目の前の集客・・・時間はかけられません。
最終戦はもう目前!1か月を切っている!やばい!時間ない!
ただ今回、ラッキーだったのは、競合が強すぎたり、チームや競技としてのラグビーに関してネガティブなイメージがあるわけでもなく、シンプルに区民の方々に情報が届いていないだけな可能性が高いこと。そしてそれを証明するように、競合チームと比較をおさらいしても、圧倒的な情報メディア(自前のSNS)の弱さ。そこから情報を流しただけでは認知が上がるのはかなりの時間を要する・・・
そこで、やるべきことは、もっと区民へ対して露出をとり、ラグビーに全く触れたことのない人でも試合を見に来たくなるような情報発信をすることだと考えました。そしてできる限り、その発信に地域の話題や地域が大事にしていることを入れ込んでいく。
そんなイメージでやるべきことを固めていきました。
次の記事ではこのイメージを元に、実際に発信するメッセージや、人に情報を届ける手段の広告・広報について書いていきます。