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食レポの達人?歯触りまで思い描ける食の表現/『やわらかなレタス』『ぬるい眠り』【読書記録】

江國香織さんの作品は昔から好きで、色々なものを読んできた。
エッセイ集『やわらかなレタス』、短編小説集『ぬるい眠り』を改めて読んだので感想をまとめておきたい。

まず『やわらかなレタス』は食にまつわるエピソードが綴られているのだけど、食べ物の描写がとても美味しそう!解像度が高いというのだろうか、こだわりを感じる、カスタマイズされた表現がされていて、江國さんの見ている世界をそのまま見ることができるような気がした。目の前のものに全集中している感じを愛おしく思う。

言葉についてのアンテナの高さ。作家なのだからそうだろう、という気もするが、単語や言い回しのひとつひとつを意識して使うのは骨の折れることだ。
たぶん言葉についてだけでなくもともとそういうたちの人で、細かいことが気になって立ち止まる回数が多いのは苦労しそうだな、と思う。でもそれがこの人の文章を面白くしているのかもしれない。

小説でもやっぱり、食事をはじめとしていろんなことの描写が秀逸だった。これを読む前に「ゆる言語学ラジオ」でオノマトペ回を視聴したこともあって擬音語・擬態語アンテナが敏感になっていたので、気になったものを少し挙げると、

まず春巻きを咀嚼するときに使われていた「じゃこじゃこ」。このワードはあまり聞き馴染みがないけれど、使われてみるとぴったりで、これしかないなという気すらしてくる。しかも、カラッと上手に揚げられた美味しい春巻きに違いない。
ミネラル・ウォーターを飲む様子は「ゴブゴブ」。勢いや飲む水の量感が伝わってくる。

読みながら手触り、歯触りが感じられるようで、私も一緒になって心地良くなったり、あるいは嫌悪を抱いたりした。こうしてまざまざと情景を思い描かせてくれる、そんな読書の愉しみがあった。

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