底無。
たまになにもかも逃げ出してまっさらな他人になって、そのまま消えてしまいたくなる。
なにかあったとか、そういうのではない。 きっとそういうきっかけが有っても無くても、私のような不安定な足場に辛うじて立っている、いやしがみついている人間はどう頑張っても消えてしまいたくなる時期がたまに訪れる。
援助交際をしてたとか、JKリフレで働いてたとか、風俗まがいな事してお金得て、人間関係メチャクチャで、いくつも私には名前があって、設定があって、歳があって。
でもそれも全部なかったことにはできないし、自業自得だし、だから他人になりたくなる。
SNSで普通の生活を送っている同級生を見かけても何も思わなかったのに、大好きな人に彼女ができてもなにも思わなかったのに。
それでも私はたまに消えて無くなってしまいたかったり、他人になってしまいたくなる。 そういう時私はまた新たに自分を作る。
マッチングアプリでちょっと好みの人と会って、架空の名前、嘘の職業、嘘の住所を伝えて、一時だけ私は違う私になる。
それがすごく楽だ。
その時は私じゃないから、私の悩みもその時の設定の私にはないし、辛いこともない。
ただすごく、すごく孤独で。 誰も本当の私を知らない。
全部終わってちょっと好みの人と別れた後、電車に乗っていて徐々に架空の私から本当の私に戻っていく。
その時間がどうしようもなく辛い。
架空の私のふりも楽ではない。 辛い。どうしたって私は私なのだ。
どうしたらこんなことしなくて済むのかな、みんなどうしてそのままの自分でいられるのかな。
到底わからない、普通ではないから。
自分から普通の道から足を踏み外して泥沼に落ちてきたから。 全て自分の選択が間違っていて、間違った選択が今の私を構成している。
思い返してみれば、そんな間違った選択をしてしまったのは、自分のせい9割、残り1割はどうにもならない家庭のせい。
もっと普通に生まれていれば、もっと普通に暮らせていれば、もっと普通に、もっと そうやってどんどん私の周りから選択肢が見えなくなり、泥沼の選択を選ぶ。
普通でない事は罪だった。
普通でない私など、身を切り売りしないと行きていく事ができない。
いつも私は私のことを大事にできない。
親が自分を大事にしろって言ってきたって、大事にされてないから大事にする方法がわからなかったし、理解できないし。
ああなんて私は無力でバカなのかと毎日ぐちゃぐちゃの生活リズムの中で思う。
なにもできない。
なにもできやしない。
このままずっと泥沼に沈んで死ぬのだ。
だからきっとまたぐちゃぐちゃの生活リズムの間で死にたくなって、薬をお酒で流し込んで、押し込んで眠る。
明日はいい事ありますようにと、叶わない願いをして。
誰にでも平等に朝は来て、時間が経って、その中でずっと取り残された気持ちになる私を、私しか救える人はいないのに、誰かに助けてほしいと甘えたことが言いたくなる。
本当の私なんて誰も知らないから、誰も助けてくれないのに。
ずっと私はこのままだ。変わる気がない。
そんな自分に慣れてしまって、心地よさまで覚えているのかもしれない。
泥沼がなまあたたかくて、抜け出せないのだ。
ずっと。
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