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日本人よ「がんばる」な

2021年、幸いにも“マーケティング”という領域でお仕事をさせて頂けたこと。
とても優秀で勢いのある多くのメンバーと共に過ごせたこと、そしてそんなチームのマネジメントをする機会をいただけたこと。
何よりも、僕自身が凄く成長することが出来た。回りのすべての方に感謝すべき1年だった。振り返ると、そんな風に思います。

「がんばる」ってナンセンス

 2021年一番のホットトピックスとして「頑張る」という言葉について、綴りたいと思うのですが

まず、結論から言うと「頑張る」この言葉、ものすごくナンセンスだと思っています。

 「頑張る」という言葉が具体的に何を示しているのかが分からないし

「頑張る」という言葉はポジティブではなくて、ネガティブな聞こえすら感じるなぁと。

 
2021年、Twitter上で広告業界の先人であり、尊敬していた方とのやり取りをさせていただく中

このようなことがありました。

会話の中で、「マーケティングがんばってください!」という言葉をいただいたんです。

 ふと、返信の手が止まったんですよね。

 「マーケティングがんばってください」

 “マーケティング”の概念や定義については、僕自身は非常に広義に“人生と同じ”としていますが

ここは、人により捉えする範囲が異なり正解というものは無いのではないかと考えています。

今回は深堀り、しませんが、話が進まないので2017年のAMA(アメリカ・マーケティング協会)の定義をそのまま設定して話を進めたいと思います。

 Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large. (Approved 2017)
マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

https://www.ama.org/the-definition-of-marketing-what-is-marketing/

頑張る=自己中?我慢?

  問題は、次の言葉「がんばってください!」です。

先程も言ったとおり、僕は「頑張る」という言葉にたいしてポジティブな印象を持ちませんし、あまり使いません。 

その理由ですが、

1,「頑張る」という言葉からは、目的に対しての「結果」がイメージできない。むしろ、「頑張る」という言葉が示すのは、その過程についてだと思うんです。

 2,そもそも、何を以て「頑張れた」のかが不明確。
それを何かしらの数値や状態に変換して、評価しようとすると「時間」とか「量」とか・・・。

 と個人の主観だけで語っても仕方がないので、いくつか

 「頑張る」を辞書で引くと

1 困難にめげないで我慢してやり抜く。「一致団結して—・る」
2 自分の考え・意志をどこまでも通そうとする。我(が)を張る。「—・って自説を譲らない」
3 ある場所を占めて動かないでいる。「入り口に警備員が—・っているので入れない」

とありました。 

おおぉ。・・・やっぱり前向きじゃないなぁと。

 また、以下の記事からは「自己中心的になる」ということと、言い換えてもよいのかとも思いました。

https://toyokeizai.net/articles/amp/5583?display=b&amp_event=read-body

 自己中心的になる。

困難に耐えてやり抜く。

 日本文化特有の「耐え忍んで尽くす」ことが美徳。というような人生観がこの言葉をポジティブな言葉にしてしまったのではないでしょうか。※文化研究家や人文科でもないのであくまでも阿部個人の感覚で失礼します。

スポース選手はビジネスマンは頑張るの?

 じゃあ、僕らがいる「スポーツ」や「ビジネス」においてはどうなんでしょう。

ひと世代前には「ガンバリズム(辛い練習に耐えることが成長につながる的な)」や「成果は関係なく、頑張った人(言われたことを実直に長い時間をかけてやる。)が評価される」ことが美徳や、評価として横行していたと思います。

ただし、少なくとも一流の指導者や選手の言葉からは、
「頑張る」という曖昧な信念めいたものよりも「知識をつけて、正しいことを正しくする」ことが重要だ。彼らはその結果、自分の望む結果を掴んでいるのということは疑いようのない事実だと感じています。

また、何かしらの目標に「頑張る」ことをおいている企業はどれくらいあるでしょうか。複雑に絡み合う経営や事業において、複雑に絡み合いながら相互に作用し合う係数を、KPIに分解し、仮説、検証、実行を繰り返していく・・・(これ以上語ると、ビジネスのデジタライゼーションやらDXやらに話が膨らみそうなので。割愛するとして)このプロセスの中に、「頑張る」が入り込む余地がどれくらいあるのだろうか甚だ疑問です。

 僕自身、企業の中でマーケティングに携わっていますが
通常「頑張りました!」と言っても、それががどれだけの評価に繋がるでしょうか?
例えばコンサルティングをしている人間が「これだけ頑張りました」とクライアントに語るでしょうか?「ここ、頑張ってください」と言うでしょうか。

そう考えると、「頑張る」がスポーツやビジネスにおいて、不要な概念であることはある程度明白なのではないだろうか?そう思っています。

より良くなりたい。これって本能じゃね

次に、僕自身「マーケティングもスポーツも本質は生きることと同義だと思っています。」とTwitterのプロフィールに記載している通り、人は「生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで、より良く生きたいと願うもの」だと考えています。生物が生まれてから、種を保存しようとする本能だと思います。

「より良く」という部分は人によって、環境によって、タイミングによっていくらでも定義が異なると思いますが、その人が思い描く「より良い」状態になるために、何をすべきか考える。考えて、行動して、振り返って、また行動する。長期的な目標を立てて、中期的な目標に落とし込んで、短期的な行動に落とし込む。その中で、今という瞬間、どういう振る舞いをすれば、言葉を発すれば良いかを考え行動する。
大半の人(人と言いましたが生き物全体と言い換えても良いかもしれません)が、無意識にそうやって生きているのではないでしょうか。

その無意識を意識化することで理を体感する事ができるし、わからなければ先人の残した書から知識を入れ、実戦を通して体得する。

ビジネスも、生きるということも、マーケティングも、つまるところ、「人間が生きていくという活動の中の何処を切り取ったか」くらいの違いしかない。本質的には同じこと。

マーケティングのプロとは「無意識の行動を、意識し、可視化し、理を理解しようとし」結果を出すこと、人だと思っています。

前段に戻って、「マーケティングがんばってください!」という言葉を投げかけてくださった方に対して

僕は
「マーケティングってがんばるものですか?」

と問いました。僕にとって、マーケティングも人生にも「頑張る」という曖昧な概念がなかったもので。

この問に対する、その方の返答は

「プロフにあるように「マーケティング=人生」だというなら、人生そのものをがんばることと同じじゃないですか?だったら頑張るものじゃないんですか?」 

Twitter上の某氏のご返答

そして、もうお一人、この投げかけにお答えいただけた方がいらっしゃいまして。その方の回答は 

結論を言います。マーケティングも頑張るものです。人間の社会活動である限り普遍的に「頑張る」対象であり続けるからです。人間が関わる以上「態度・行動」が結果を左右するわけです。マーケティングの定義に「頑張るものである」なんて書く必要がないことはあなたもプロなのですからご存知のはず。

Twitter上の某氏のご返答

 

というものでした。だいぶ強気です。

お二人の中には

“人生”や“人間の社会活動”には「頑張る」という言葉・概念が普遍的に存在する。

という人生観が存在するということがわかりました。

人生は、自己中心的になり、困難に耐えてやり抜くもの
仕事も、自己中心的になり、困難に耐えてやり抜くもの

根本的な違いが明らかになったのだと思っています。

頑張ったところで飛行機は宇宙に飛び出せない

有名な話し。僕も良く話しますが

“頑張っても”飛行機はその仕組において宇宙に飛び出すことは出来ない。

大切なのは、頑張ることではなくて、どうすれば、「宇宙に飛び出す事ができるか」を解き明かす事。

頑張ることは、ともすると、不変な係数・定理を変えようとする事に等しいものだと。

なので、僕はチームメイトに対しても「頑張るのはやめよう」と言っています。

「頑張る」ことは求めないので、チーム・組織全体の目標に対して、“何をすれば”物事が前に進むのか、正しいと思う方向に進めるのか。
答えを導き出して動く。その結果を受け止めて、さらに良いものにしていく事をして行くことのほうが大切だと話しています。

頑張りは評価が難しいばかりか、間違った行動を評価してしまうことで、ともすると、みんなを間違った方向に導いてしまう可能性すらある。これは僕が色々なものをマネジメントさせていただくうえで大切にしている考え方です。

頑張ってふんずまっちゃってる

こんな中、他人に対して「がんばってください!」という発言できるマインド。そして、「マーケティングがんばってください」と発言できるマインド。人生や社会活動が普遍的に「頑張る」対象だと言い切れるマインド

このマインドを持つ方々が、今日、様々な業界において、上の方で、頑張ってふんづまっていることが、日本の成長を阻害している大きな要因の一つなんじゃなかろうか。そう、思い至っています。


マーケティングにおいても、ビジネスにおいても、スポーツにおいても、そして生きる上でも決して頑張る(自己中心的になる、困難に耐えてやり抜く)必要なんてなくて、いかに最短距離で目標に到達するか。失敗を失敗として受け入れてレコードしながら、進歩するか。

これがシンプルに大切なことだと。僕はそう思っています。

 F1に置いても、それこそ400億円からの予算をかけて最先端のテクノロジーと頭脳を集結し、最適解をリアルタイムで探しながら、やるべき事をやっている彼らに「頑張ってますね」なんて言ったら失礼過ぎますし。

そんな事を考えながら今日で、仕事納め。
しっかり休んで、2022年も頑張ります。

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