フライドポテトが皮膚病を治した話

大意:汗疱(かんぽう)めいた症状に1年ほど悩まされていた私。日雇い派遣でフライドポテト屋台のお仕事を手伝ったら、翌日完全に皮膚病が治っていた。完全な憶測だけど、塩は肌に良いのかもしれないというお話。


およそ10年近くも皮膚病に悩まされていた。最初に発症したのは、確か大学に在学中だったと思う。最初になぜか左手の薬指がむずがゆくなった。掻いたりこすると少し気持ちいいので刺激を加えると、赤く充血してくる。そのうち、直径1mmくらいのできものも浮かび上がるようになった。この時になると、かゆみもそれなりに強いし、薬指だけ皮膚が厚くなりカサブタ状になって見栄えも悪い。強い刺激を加えるとリンパ液もしみ出してきた。カサブタ状の皮膚は自然にはがれるが、また同じようにカサブタを形成する。薬指だけならまだよいけれど、次第に左手のひらにも出て左肘の内側、左上腕部にも出るようになった。

皮膚科に受診しても具体的な病名は知らされなかったため、自分で調べたらどうも汗疱の症状に似ていた。ただ、診断がくだったわけではないので、実際はよくわからない。皮膚科の薬は効いたのか効かなかったのかよくわからず、薬をつけてガーゼを巻いてしのぐしかなかったためもどかしかった。

時間が飛ぶ。大学在学中に私の左手は治らず、皮膚科の薬で小康状態を保ちながら、大学院、会社勤め時代とかゆみを覚えたままだった。その後、私は会社員という立場を3年であきらめ、フリーランスになった。

急なお金が欲しい時があったので、日雇いの仕事に従事する。いろいろな仕事に就いたが、ある日応募したフライドポテト屋台の仕事が私の闘病生活にピリオドを打つことになった。

その仕事はJ市で行われるお祭りの出店の手伝いであった。駅から15分ほど歩くと、店主とその奥さんを含めて4人のお店の方が働いていた。あいさつを済ませると、コンロを運んだり開店準備に取り掛かる。

お祭りは盛況で、フライドポテト屋のお客は絶えない。夕方から始まったお祭りは日も沈み夜8時にはますます人が増える。だいたい3~4組のお客が待っているため急がなくてはならない。

さて、油を扱う職場であるから、調理台などにわずかな油分がつく。手にも指にもつく、作業時には必ずつく。指先にべったりつけば備えてあるペーパータオルを使いもするが、わずかな油分であればこっそり左腕にぬぐってしまう。お客が多い手前、ペーパータオルで拭く時間が無いことも多い。同じように、指についた塩分も腕でぬぐってしまっていた。

お祭りも終わり、屋台の片付けを手伝って解散となった。日当をもらい、帰路につく。仕事に集中していて遠のいた左腕のかゆみも気のゆるみと共に戻ってきていた。



翌日、目を覚ますと左腕に違和感がある。毎朝左腕のかゆみで目を覚ますようになっていたが、この朝はそれがない。驚いて目をやると、荒れていた皮膚が元通りなめらかになっていた。最初はわけがわからなかったが、私はじきに昨日のフライドポテトのおかげではないかと直感した。屋台の仕事を手伝った以外は普段通りの一日だったからだ。

では、フライドポテトの何が作用したか。

油ではない。屋台では普通のサラダ油を使っており、サラダ油が私の皮膚に何のはたらきも持たないことはよくわかっていた。過去に、かゆみに耐えかねて油を塗りつけても何の効き目も無かったからだ。ジャガイモを患部に当てたこともあったが当然改善はしなかった、ポテトも効果は持たない。

残された可能性は塩しかなかった。おそらく、屋台での仕事の合間に左腕でぬぐった塩分が作用したのではないか。そういえば、発症しはじめた大学生時代に「皮膚病の子どもに海水浴を勧める時代があった」というインターネット記事を目にしていた。その時の私は海水を患部に塗りつけもしたが、それほど効き目が無かったのですぐやめてしまった。海水と食塩にどのような差があるのかはわからない、しかし海水は効かず食塩は効いた。

屋台で働いた日を境に、かゆみを覚えることはほとんど無くなった。肌の赤みも無くなり、改善した状態であることが分かる。4、5日すると再びかゆみを覚え始めたため、再度塩を塗ると症状は無くなった。こうして二週間ほど塩を繰り返し塗るうちに炎症を起こしていた部分は縮小し、完全に消えてしまった。

8月に実家に帰った時には家族を驚かせた。私の左腕は見た目も痛々しく毎度家族を心配がらせていたが、その左腕がまったく元通りに治っている。喜んでくれると同時に、みんな不思議がっていた。

なお、インターネット記事では天然塩を使って肌の不具合を解決する趣旨のものがあるけれど、私はここまでで工業塩しか使っていない。屋台の塩の種類は分からないが、コスト的に特別な塩は使えなかったはずだ。天然塩が特別な効果を持つかもしれない事は否定しないが、安物の塩でも私の皮膚病は解決できたことは述べておきたい。

それから数年間は暑い時期に左手薬指の側面がかゆくなることはあったが、1日すれば治まっていた。最近は指先がかゆくなる頻度は年に数回ほど。肘の内側と上腕部は何も起きず、どれだけ汗をかいても全くかゆくならない。

私の皮膚病が何だったのか、今ではもう知る方法も無い。皮膚科ではっきりとした病名が告げられなかったため、あれが汗疱であったのかもわからない。だから、ここまで読んでくださった方には本当に申し訳ないのだけれど、汗疱に本当に塩が効くのかは謎のままだ。ただ、もしあなたが私と同じような症状に悩んでおられるなら、塩をおすすめしたい。

この文章が今皮膚病にわずらわされている方の参考になれば幸いである。良い回復を。

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