-狩りの下手なライオン-
皆さんは覚えているだろうか。
20年程前に流行った、生年月日から性格を診断する動物占いで、自分がどの動物だったかを。
そしてご存じだろうか。
星座と同様に計12種類ある動物は、特徴でさらに分類されていることを。
アラサーと呼ばれる年齢になって久しい頃、友人が古本屋で動物占いの本を偶然見つけてきたことにより、流行当時のように密かに私たちの間で再燃した。
まずは、誕生日を知っている身近な人間を診断していく。
そういえば、元カレと出会ったクルージングに一緒に行ったのも、この友人とだった。
友人も知る元カレを占ってみる。
「無邪気な羊」:大人になりきれない幼さが残る人。目立つのが嫌なので、滅多に本音は言わない。計算高い駆け引き上手。
・・・当たってるやないかーーーーいっ!
元カレは、表面的には物分かりのいいオトナだったけれど、30を超えても海や温泉で大事な部分をシルクハットで隠した全裸写真をよく撮っていた。
その持ち芸で当時R-1グランプリに出ていれば、アキラ100%は世に出ていなかっただろう。
屈辱的な別れになったのは、「俺が振られた」のではなく、「俺が振った」という事実に差し替えるための彼の巧妙な計算の結果によるものだ。
「無邪気な羊」と別れて程ないある日、前出の友人が、絶対私に合う!という男性を紹介してくれた。
もちろん友人は、紹介してくれるという男性のことをあらかじめ診断してくれていた。
「粘り強い羊」:物腰柔らかで奥ゆかしい気品ある紳士淑女。負けず嫌いの自信家で、思い通りにならないとスネることも。
羊に縁があるね、と笑いながら紹介された彼は、初対面のその日から私のことがすごいタイプだと言って猛烈なアピールをしてきた。
同様に友人から動物占いの知識を入れられていた彼は、「俺は粘り強いから大丈夫だよ」と、元カレのことで軽く人間不信に陥っていた私の心に、半ば強引に入ってこようとした。
彼のしつこさに多少の苛立ちを覚えながらも、私の好奇心の旺盛さが無駄な時間と傷を増やす。
粘り強い?
スネた彼は、登録されてから一週間で私の携帯から消えた。
「粘り強い羊」が消えた後、参加したパーティーで多くの男性と出会うことができた。
盛り上がって朝まで飲み明かしたメンバーの一人がすぐさま誘いをかけてきた。
彼に惹かれている自分に気付きながらも、彼は年下だし、お医者様だし、、、と踏み出せない理由を並べる私に「そんなの関係ない」と言ってくれた彼は、どことなく学生時代の元カレに似ていた。
「頼られると嬉しい羊」:義理人情に厚く、正義感溢れる楽天的な情熱家。密かに自分こそ最高だと思っているので、指示や押し付けは嫌い。
・・・羊ってこんなにもウロチョロしているものだろうか。
消極的な私に「そんなの関係ない」と楽天的な言葉しかくれなかった年下ドクターに、経験豊富な私が頼ることなんてできるわけがなかった。
「感情的なライオン」:マジメで自分を抑えて人に心配りをする社交的な人。竹を割ったようなさっぱりした性格から飛び出す言葉は毒舌、その率直さが魅力。内面は勝ち気で競争に遅れを取るのは嫌い。心を許せる友人の前ではお茶目になっても、外に出れば徹底して自他に厳しく妥協を許さない。自分を犠牲にしても弱い人を助ける優しさがある。
ライオンは羊を食べることができただろうか。
誰か私に狩りの仕方を教えてくれ。
私に幸あれ。