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飛騨路を越えて

昨日からお盆休みに入ったので、去年同様に18きっぷの旅に出ている。もちろん1人。主人は仕事のため、獅子丸(我が家の犬)と一緒にお留守番だ。主人には、獅子丸に変なものを食べさせないように強く言ってきた。変なもの=人間が旨いもの、なのだが、このままではグルメ犬まっしぐらであり、犬の体にも恐らく良くない。

さて、旅。大阪を早朝に出発し、米原、岐阜、美濃太田を経て、正午前には下呂温泉に着くはずだった。だが今、私は、下呂どころか高山も越えて、飛騨古川に来ている。そして3Dプリンタやレーザーカッターが並んだファブカフェで、この文章を書いている。

飛騨古川は、白壁土蔵の町並みで知られる旧城下町で、町歩きが好きな私は一度行きたいと思っていた。今回の18きっぷ旅も、行きたい場所をリストアップし、飛騨古川を何とか絡ませようとしたが、高山線は恐ろしく普通列車が少ない。大阪を出て、下呂には11時頃に着くのに、12駅先の飛騨古川に着くのはなぜが16時を回る。それでは宿がある下呂には戻れない。

★岐阜→(16駅)→下呂→(9駅)→ 高山→(3駅)→飛騨古川

完全に諦めていたが、岐阜に着く際の車掌のアナウンスに、私は一瞬固まった。

「特急ワイドビューひだ 飛騨古川行きは9時3分、4番乗り場からの発車です」。

これで行けば何時に着いて、何時に下呂に戻って来られるのか。こういう時の私の動きはめちゃくちゃ早い。遅くとも18時前には下呂に戻って来られることが分かったので、すぐに岐阜駅の改札を出て切符売り場へ走り、特急券と乗車券を購入した。

18きっぷでは節約がモットーなどと言っていた自分を都合よく忘れ、迷いなく5900円を差し出した。こうして私の18きっぷ旅はあっけなく中断した。

▲特急ワイドビューひだ

しかし、特急は快適だ。この快適さを深く理解させるために、18きっぷがあるのではないかと思うくらい。

検札の車掌は「どちらまで行かれますか」と声をかけながら、乗客の切符にハンコを押していく。大阪にはない優雅さをかみしめつつ、眼下に広がる木曽川と荒々しく切り立った渓谷を眺めた。