禍を転じて福と為す

新型コロナウイルスは私が住むスイスや、車で10分で国境を越えられるフランス、1時間で行けるイタリアなどにも侵入し、多大な社会的・経済的影響を与えています。なんと、みんなが待ちに待っていたジュネーブのモーターショーも中止になるようです。1000人規模のイベントはすべて中止です。

日本でも、政府が全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請し、会社でも在宅勤務、テレワーク、出張禁止などが勧められているようですね。

皆さん、多くの困難や苦労に直面して大変だと思います。が、これからの1-2週間は感染症拡大防止のためとても重要な時期なので、がんばって乗り切っていってください。(日本で一緒にがんばれずにすみません・・・)

ただ、こんな時にはネガティブなことばかり考えていても「もったいない」です。

「禍を転じて福と為す」の絶好の機会でもあるからです。

特に今は、「医療」「教育」「仕事」3つの領域で、発想とサービスの転換をする絶好のチャンスだと思っています。

まず医療。日頃から、発熱したから、咳がでたから病院に行く。心配だから検査をしてほしい。そういう人は多いと思います。実際には軽い風邪のような症状では、医療機関にかかっても本当の意味での治療法はなく、むしろ、他の患者さんからより重篤な感染症をもらったり、自分がうつしてしまったりすることもあります。今回の新型コロナウィルスでも、またインフルエンザでも、医療機関が感染源になることもあります。また、軽症で医療機関にかかって、あまり治療効果のない薬や、ウィルスに効かず、かえって薬剤耐性を加速する抗菌剤を処方されて、医療費を増大させることもあります。

今回、このような医療機関にかかる「受療行動」を改めていくのによい機会だと思います。

それ以上に強調したいのが、デジタルヘルスです。21世紀型、未来型の医療として様々な活用ができます。例えば、ウェアラブルやスマホなどを使って、バイタルサインを定期的にチェック・記録して、必要に応じて、かかりつけ医や医療機関にリアルタイムでデータが送信される。不安・心配な時にはビデオ相談や診察もでき、必要な時には入院加療もできる、など。

私は開発途上国、中低所得国を対象に仕事をしていますが、このデジタルヘルス領域はものすごい勢いで伸びています。中国、インド、韓国なども今後、様々な形で牽引していくと思います。日本も乗り遅れないで欲しい。

「かかりつけ医との対話」といった古典的なコミュニケーションも重要ですが、ITやAIが発達しても「かかりつけ医」の重要性は十分にあると思います。

今後、新たな感染症が流行した場合にも、デジタルヘルスを活用した効果的な闘い方があると思います。次にプリンセス号のような事案が出た場合には、デジタルヘルスを使って、より効果的・効率的に対処できるといいなあ、と思っています。「無理」と思った時点でできません。世界では「無理」と思わずにやっている人たちがたくさんいます。ITの世界の流れは速い・・・。海外にいると特にそう感じます。

「教育」:学校にいかなければ教育ができない、という発想をやめるべきだと私は思います。知識を覚える、詰め込むだけなら、下手な教師がやるより、生徒を惹きつけて学ばせることのできる「プロ」の授業を聞いた方がいい。その意味で、「スタディサプリ」のように、自宅で勉強できる、好きな時間にできる、登校拒否になっても学ぶ機会・権利を与えることのできるものはどんどん利用すべきだと思います。

ただし、先生と生徒、生徒同士が直接会って、議論したり、運動したり、歌ったり、というインターアクティブ、クリエイティブな時間は別に必要だと思います。日本の教師も本当に忙しく大変な職業なので、知識提供型の授業は「スタディサプリ」のようなものに任せ、より創造的、相互学習的な教育活動に時間を費やせるとよいのではないでしょうか。

教育は素人ですが、海外で様々な教育の方法・形態を見ていて、日本の教育に多様性、柔軟性、創造性を持たせないと「まずい!」と思っています。

「仕事」:いわずとしれた「働き方改革」ですが、テレワーク、電話会議など、効率・効果を考えた、これも多様性、柔軟性、創造性のある働き方があると思います。今回、いろいろ試してみて、それを継続、発展させられるといいですね。

という意味では、これまで少しは議論されてきたけど、できなかった、を現実に試行するにはとてもいい機会だと思います。思い切ってやってみるか、という会社、学校、医療機関(はすぐには難しいでしょうが)、があるといいですね。政府も、未来に向けたトランスフォーメーションをこの機会に真剣に議論・実施してくれると嬉しいです。期待しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?