米国疾患予防管理センター(CDC)のようなもの、を設置すべき?

 大規模災害が起こると米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)、アウトブレイクが起こると米国疾患予防管理センター(CDC)を日本に作る必要があるという議論が起こります。
 まずCDCをご存知の方はご承知の通り、マラリアコントロールなど感染症対策をきっかけに1946年に創設しましたが、現在では慢性疾患予防・健康増進、労働安全衛生、出生異常・発達障害、傷害予防管理など、様々な保健福祉分野を扱い、10以上の研究所・センターなどの総称で、予算額も1兆円を超え、国立感染症研究所のおそらく300倍以上はあると思います(間違っていたら教えてください)。職員も1万5000人以上で、国立感染症研究所のおそらく50倍でしょう(これも間違っていれば指摘してください)。世界中に国事務所(多くは米国大使館の中など)もあり、現場の感染症対策なども行っています。つまり、アフリカのエボラ熱も含めて、現場での対策も支援しています。
 私は時々CDC本部のアトランタ、そしてアフリカの国々のCDCのオフィスを訪れ、現場での三大感染症の対策を一緒に行っていますが、彼らが持つ多くの人的資源、高い専門性、豊富な情報量にはいつも驚かされます。世界各国はその重要性を感じ、タイ、台湾、中国などでも、「CDC」と銘打った機関や組織を創り、特に中国のCDCは現在、大きく育っています。
 特にCDCから学ぶべきものはEIS(Epidemic Intelligence Services)という1951年から始まった専門家養成コースです。座学のみならず、世界のアウトブレイクの現場で実践を積み、疾病管理、予防を学ぶものです、世界中の医師・獣医師・歯科医師・看護師等など今までにおそらく3000名以上が2年間の研修を修了していると思います。私の友人・知人にもこの研修の卒業生、CDCでその教育に当たっている人がいます。このコースを導入して自国で専門家を養成している国もあります。日本にもFETP(実地疫学専門家養成コース)があり、友人・後輩にもその卒業生がいます。
 現在の政府の国家予算でCDCと同じインフラ、人材を整えることは不可能だと思います。それよりも、現存する、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、国立保健医療科学院などの国立の関連組織・施設に加えて、長崎大学熱帯医学研究所、東大医科学研究所、北里研究所などの大学・研究機関、さらに企業がもつ研究センターや人材、そして、保健所などの行政組織・人材などを有機的につなぐことだと思います。
 この連携・協力にも戦略が必要です。拙著の宣伝をする気はありませんが、そこで強調したことが、ビジョンを共有し、目的を同じくして、関連するアクターが一緒に連携・協力するにはどうすればよいか、ということです。CDCを創る予算と人材がない中、将来の日本のよりよい健康危機管理体制を構築するには、それぞれの組織・機関がもつ機能を強化・拡張しながら、それらを有機的に繋げるしかありません。既にやっていると思いますが、たとえば、これまで育てたFETPやIDES(感染症危機管理専門家養成プログラム)の人材を有効活用できているか、健康危機管理の研修コースなどで育てた人材を有効活用できるか、といったことまで検討して、その効率と効果を高めていく必要があります。これらの研修に参加した専門家を知っていますが、エボラでもSARSでもコロナでも、アウトブレイクが起これば、その渦中で何でもやりたいという人は少なくありません。
 日本は最終的に何をすべきか、という成果の部分よりも、そこに行き着くまでの手続き、手順、役割、責任などのプロセスの段階で挫折する、なかなか前に進まない、その結果の成果物が「あれっ?」というのが少なくないと思います。
 本気で国の将来、自分の子どもたちの未来を考えるならば、まずは最終的にあるべき姿を考え、それをみんなで共有し、そこに到達するにはどうすればよいのか、今、真剣に考える時だと思います。
 人はみな、喉元過ぎると、必ず熱さを忘れますので。

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「グローバルヘルス」を専門というか、ライフワークにしています。中でも、感染症対策、人道支援、保健システム作り、保健政策などをやってきました。インドで、ヨガや伝統医学も勉強して、今も毎日ヨガをしています。