ただ車両を並べるだけで夢は線路を駆け巡る


架空の地を走るやまびこ電鉄の車両たち

 4月から5月にかけて、なんか知りませんが模型で架鉄を作る意欲がわきまして、あれよあれよという間に車両が量産されました。もちろん10年近く工作なんてしていなかった身ですから、出来栄えはまあごらんのとおり。大したことはしてない割にどうにもアレな感じです
 しかしこうやってできあがった車両を眺めているとなかなかいいものです。現実には存在しないやまびこ電鉄が走る世界が想像できて楽しいのです
 とある盆地の参詣鉄道として生まれたやまびこ電鉄。電車のパワーと速度に魅せられた人たちは「電車なら盆地を勾配で越えて、海岸の町につなげられるのでは?」と考えました。たんぱく質の確保に悩んでいた盆地の民はお金を出し合って山越えの路線を建設し、安定したたんぱく源の供給がなされた結果、盆地で生活できる人口のキャパシティが増加して発展した。そんなストーリーが浮かんできます
 もちろん整合性なんて欠片も考えていませんので、架空鉄道を嗜んでいるほかの人には噴飯ものでしょうが、俺は夢を見ています。自分の見る夢に整合性なんて求めていませんし、人の夢にケチをつけるような人と会話をする気はありません。俺は誰ともこの世界を共有する気はありませんアンダスタン? 


田舎の盆地に導入された4ドア車。好む好まざるにかかわらず地方民鉄は「市場在庫」から車両を選択せざるを得ない

 モハ9884+モハ8881。やまびこ電鉄に導入された初の4ドア車。4ドア車が欲しかったのではなく2010年当時「3ドア車の出物がなかった」ため、やむを得ずクハ205とクハ207を購入して電装した車両という設定。当時やまびこ電鉄が欲していた車両は4両なわけですが、4両というロットに応じてくれる車両メーカーは実質新潟トランシスしかありません。その新潟トランシスにしてもオーダーが集中すれば「欲しい時に即納」できるとは限りません
 なので地方民鉄は新車を買う金があっても買えない。好む好まざるにかかわらず中古車を買うしかありません。そんな経緯でやってきた車両ですが、乗務員の評判は思いのほかよかった。盆地の夏はクッソ暑いのですが、AU75冷房装置はとにかくよく効く。そしてVVVF化した足回りも190kw×2モータ+190kw×3モータ。この余力を活かしてギアリングも97:16=6.07ですから定トルク領域終端が77km/hとかなり高い。つまり80km/hくらいまでトルクを引っ張れるわけですから遅いわけがないんです。まあ運転してストレスを感じないという意味では運転士には結構評判いいと思います。ブレーキだってMBSA-1Aですから100km/hから安心して突っ込めます

190kw×4、ギアリングは6.53でモハ9884+モハ8881と同じくらいの性能ですが、車両質量が重い分ちょっとかったるいかもしれません

 クハ8831+デハ9881。こちらは3ドアですが性能的にはモハ9884+モハ8881と似たような味付けになっています。190kw×4で総出力が若干モハ9884+モハ8881より低いのと、鋼鉄車なのでちょっぴり重たいことからギアリングを98:15=6.53とモハ9884+モハ8881より一段深く取っています。それ故に低トルク領域の伸びは74km/h付近でとまり、そこから重さが効いてガツンとトルクが落ちる感じになります。そのため80km/h以上の再加速では若干かったるいなあと思う運転士がいるかもしれません。中速域までは車体の重さはギアリングでごまかせますが、高速域では質量がもろに効いてきますから
 ただ、冬季積雪状態になるとこの重さが効いてきて安定した運転ができると喜ぶ運転士もいるんじゃないでしょうか
 やまびこ電鉄には連続33.4‰の勾配があるため、当該の区間では1コント運転を禁止しています。なのでこのデハ9881は1C2Mのコントを2基吊って4モータを回していますが、そのため床下スペースが苦しくなってSIVを搭載できない。なので屋上に600VのDC-DCコンバータを持つ119系に白羽の矢が立った、と考えています

床下に2コントならべたらSIV置く場所がなくなってしまいました。DC-DCコンバータを屋上に装備したJR東海119系を購入する最大の理由がここにあったのかもしれません

 しかしC-AU711冷房装置は盆地の夏には焼け石に水ってくらい効きがよろしくないのが玉に瑕。夏の大社前駅で電車を待ってる人たちが、この車両を見た瞬間落胆のため息を上げるのではないでしょうか
 ……とまあ、車両を並べてこんなことを考えていると時間を忘れてしまいます。個人的に鉄道模型工作というものはぶっちゃけ好きではないのですが、こういう愉悦に浸れるならたまには悪くないなと思いました
 たまには、ですよ?