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SF短編映画『オーヴァム』を今見るべき理由とは

#Me Too運動に引き続き、相次ぐ映画監督によるセクハラ問題、
制作現場における女性スタッフの割合など、近年映像業界において問題となっている性差別や女性蔑視。

もちろんそれは映画の業界だけでなく、社会全体においても、
ジェンダー問題はいまだ大きな課題であると言えます。


そんな中、先日SAMANSAで公開された新作SF映画『オーヴァム』。

社会問題に深く切り込んだ作品とされるこの映画を、
なぜ今見るべきなのか-。

今回は、『オーヴァム』をより深く鑑賞するための作品解説を、
テーマの背景を取り上げながら、ちょっと真面目にご紹介していきます。


※ネタバレを含みますので、ぜひ本編を見てからご覧になることをおすすめします!


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〈監督〉
Cidney Hue

〈作品時間〉
7分46秒

〈あらすじ〉
ある女性が謎の部屋で謎の処置を施される。この女性は、人生で重要となる、ある「決断」をしに来たのだった。彼女の目的は一体なんなのか?その処置はどのようなものなのか?決して非現実的な話ではなく、現在アメリカで議論の的となっているある社会問題に深くメスを入れたSF作品。


* * *

女性が施されていた”謎の処置”の意味

まるで近未来の特別な技術を描いているかのようなこちらの作品ですが、
そのテーマはずばり”中絶問題”。

主人公の女性は、人工中絶をするかしないかの判断を下すために
”謎の処置”なるものを受けに来ていたのです。

そして、女性が見ていたのは、
「もし今のお腹の中の赤ちゃんを産んだらどうなるか?」
という、近い未来の人生の擬似体験なのでした。

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劇中では、彼女の夫らしき人物が登場しますが、
彼女は「彼とは別れたはず…」
と戸惑っています。

このことから、望まぬ妊娠であったか、
もしくは彼女の妊娠が明らかになってから彼との関係がうまくいかなくなり、
彼女は1人で中絶をするかしないかの決断に迫られていたと考えられます。


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また、彼が歌っていた子守唄ですが、
あれはイギリスやアメリカなどの英語圏で古くから有名な、
ナーサリーライムズの「Rock a Bye, Baby(ロッカバイ・ベイビー)」
という曲。

本来、マザーグースという童話の一つなのですが、
こちらに影響を受けたとして、イギリスのバンド「Clean Bandit(クリーン・バンディット)」がシングルマザーに向けた「Rokabye」という曲をリリースしていることでも有名です。

これらが作品の意図と関係しているのかは定かではありませんが、
中絶、あるいは出産を1人で背負わなければならない女性の責任の重さと不安が、この作品の大きなテーマになっていると言えるのではないでしょうか。


それにしても、Facebookでログインし、出産後の世界をシュミレーションするというアイデアもなかなか斬新ですね。


なぜ”中絶”がテーマなのか

では、なぜそもそも中絶がテーマとなっているのか。

それは、この作品の制作国でもあるアメリカで近年議論されている、
「ある問題」が背景にあると言えます。

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実はアメリカでは、州によって中絶に関する法律がバラバラなのが現状です。

例えば、2019年5月には、ジョージア州で妊娠6週以後の人工中絶を禁止する法律が制定され、続くミズーリ州では、妊娠8週以後の人工中絶を禁止する法律が可決されました。

また、同じくテキサス州でも、2021年9月に、妊娠6週以後の人工中絶を禁じる厳しい州法が施行され、大きな波紋が広がりました。

さらに、アラバマ州では、レイプや近親相姦などによる望まぬ妊娠の中絶をも禁止する禁止法が可決されました。
この法律では、なんと手術を行った医師にも最高99年の禁固刑が
課されるそうです。

もちろん全く規制がない州もありますが、ほとんどの州では、
上に挙げた例ほど厳しくはないにしろ、ここ数年で中絶を禁止する動きは広まっていました。


こうした問題は、単に合法か非合法にするかという議論にとどまらず、
政治家の選挙活動における一つの道具として政治利用されてしまっており、
当の本人である女性自身の健康や意思が無視されているとの声が多く上がっています。


今この作品が重要な理由

今回取り上げた中絶問題は、現在日本の映像業界や社会でも再び話題となっている女性差別や男女不平等とはまた少し違ったもののように思えるかもしれません。

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ですが、女性の立場の尊重、意思の尊重という面から見れば、
どちらも根本は、決してそれらを蔑ろにしてはいけない同じ問題であると言えます。


映画の最後では、かつてアメリカの最高裁判事を務め、2020年9月に亡くなられたルース・ベイダー・キンズバーグ氏のある言葉が引用されています。

子供を持つかの決断は、女性の人生と尊厳にも関わる
女性自身が決めるべきことだ


もはやフィクションとは言い難い深すぎるSF映画『オーヴァム』、
SAMANSAで絶賛公開中です。



参考:「VOGUE『アメリカ人女性たちの人工妊娠中絶をめぐる戦い。【ジェンダー視点で見るトランプ時代の分断】』」https://www.vogue.co.jp/change/article/a-historic-gender-gap-1


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