拝啓　私が愛したあなたへ　私の声は届いていますか。-映画『Just let me know』-

SAMANSAのショート映画『Just Let Me Know』は忘れられない元恋人たちをつなぐ、ちょっと特別な「ボイスメッセージ」のお話です。

普通のメッセージじゃない、電話でもない、声なのにメッセージ。
会えなくても、声を聞けばなんとなく分かることってありますよね。
言葉遣いや声のトーンひとつ違うだけで、冷たく感じたり温かく感じたり...
特に恋人が自分の名前を呼んでいる時の声は、愛おしさで溢れています。
そしてボイス「メッセージ」だから、面と向かって言いづらいことも言えたりする。

今回は、色彩表現や映像的な演出によって描かれる登場人物の内面の葛藤と成長を描いたショート映画『Just let me know』に散りばめられた、「メッセージ」を考察を交えながら紐解いていきます！

『Just Let Me Know』（2020年）
〈監督〉Tom Ruddock（イギリス）
〈作品時間〉 10分50秒
〈あらすじ〉
元恋人同士のスカイとレオは別れた後もボイスメッセージで連絡を取り続けていた。
はじめはお互いの声を聞いて喜んでいた二人だったが、悩みや不安を打ち明けたり、二人の思い出をなぞったりするうちに、離れた元恋人への並々ならない愛情と埋まらない喪失感が溢れ出す。

◎ボイスメッセージを送ることはよくあること？

この作品ではボイスメッセージだけでストーリーが進んでいきます。
「ボイスメッセージ」というツールは皆さんは普段使いますか？
日本では、メールや手紙、LINEといった文字でメッセージを送り合うことが多く、ボイスメッセージを手紙のようにやり取りすることはあまり見かけないかと思います。
一方海外では、手軽さや直感的なコミュニケーションを重視する文化やライフスタイルに合わせて、長文の打ち込みよりも音声メッセージを好む傾向があり、実に九割以上の人がボイスメッセージを日常使いしているのだそうです。
日本で音を「録る」というと、事前にどんな内容を話すかしっかり準備して臨みそうなものですが、劇中のスカイとレオのボイスメッセージでのやり取りは、「もう行かなくちゃ」や「あ、えっと...」のようなスクリプトの準備されていない日常の一部が垣間見えるようでした。

◎時間に隠されたエンジェルナンバー

劇中、スカイはバス停や駅のホームにいても、列車やバスには乗るシーンはありませんでしたね。ここでの電車やバスは気持ちの向かう方向へ駒を進める手段でした。
まだ自分の本当の気持ちが定まらず、進みたい方向に進めないスカイは乗ることができない。

最後に電車に乗ったのはレオでしたね。
スカイへの気持ちを定め、レオが乗った電車の到着時刻は9：04。

この『9：04』という時間はエンジェルナンバー904を表しています。
エンジェルナンバーとは数秘術の中の一つで、
「９」は終わりと始まりを象徴します。
古代の数秘術では「９」は完了や完成を意味する数字として捉えられていました。ある段階や周期が終わり、新たな段階や周期が始まることを示唆します。
「０」は天からのサポートを意味し、「４」は平和や安定を表しています。

数秘術では、個々の数字の意味を独立して解釈するだけでなく、その数字の組み合わせや連続性にも意味が与えられます。

『9：04』の到着時刻は、終わりと始まりが重なり合う瞬間を表しています。
一度終わった二人の恋が新たな始まりを迎えることを象徴し、天からのサポートと安定の存在を感じさせます。
スカイとレオの関係が「振り返る」ことを受け入れ、再び愛を始める準備が整ったことを示唆しているのです。

一度終わった二人の恋は「振り返る」ことも受け入れて、もう一度恋を始める。
そんな終わりと始まりを感じさせる、ラストシーンです。

◎「地下世界を旅する男の話」を考察してみた

劇中に、「地下世界を旅した男の話」が登場します。
このお話の考察を少し書きたいと思います。
物語はこうでした。
亡くなった妻を取り戻したいと願った男は地下世界を旅し、そこで出会った神に妻の生き返りを懇願しました。願いを叶えるための試練として、神は男に「妻を後ろからついて行かせるから、決して振り返らずにこの地下世界から出ること」を約束させます。何時間も暗い道を歩く男は、足音も聞こえず、本当に自分の後ろに妻はいるのかと不安に思い、地上間近というところで振り返ってしまう。その瞬間妻は消えて無くなってしまったのでした。
劇中ではレオがこの物語をスカイに話します。
そして、レオ自身振り返ってしまうことも、それでもレオにはスカイが見えるということも伝えます。

ここでの「振り返る」という行為は相手の気持ちを疑うことや不安を意味し、それが相手を失うことに繋がることを表してるのではないでしょうか。それでも、最後には疑いや不安があっても霞まない愛情が存在することを伝えているように思えてなりません。
レオとスカイは自分の気持ちと向き合い、失うことへの恐れと向き合いながらも、愛情を再確認し、新たな始まりを迎える二人のラストシーンは、その後の二人を想像してしまうものでした。
この物語を観て、思わず昔の恋人を思い出す、そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まだ観ていないけど気になった方も、もう一度観たい方も、ぜひチェックしてみてください！
お読みいただき、ありがとうございました☺

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