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NHK党 立花孝志 と 優生思想

2022年 参議院議員選挙の最中、07月03日に放送されたNHK日曜討論。その中での立花孝志氏による「優生思想」とも思える発言が話題となっている。

モンキーポッドでは、立花孝志氏の過去からこれまでの問題視せざるを得ない発言のまとめを2020年03月から公開(随時追記更新)している。
過去の発言についてご存じのない方々には、そちらも合わせてご覧いただきたい。

本記事では、今回放送されたNHK日曜討論で立花孝志氏から発言された内容とともに、「優生思想」について紹介する。

日曜討論で飛び出した優生思想

優生思想とは

本題に入る前に、まず「優生思想」とは何かを簡単にだが触れておこう。

優生思想(ゆうせいしそう)
身体的、精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想。優生学の成果に立脚する。人種差別や障害者差別を理論的に正当化することになったといわれる。遺伝子のみならずナチスによって命の選別にも使われた。

ウィクショナリー日本語版「優生思想」 より

優生学
人類の遺伝的素質を改善することを目的とし、悪質の遺伝的形質を淘汰し、優良なものを保存することを研究する学問である。

広辞苑 第6版 岩波書店

優生学や優生思想の研究は、様々な国の機関や研究所で現在も行われている。その情報量は膨大であるため本記事では紹介せずにおくが、その中の研究結果の1つとして、「不適者達の存在は、経済的かつ社会的に劣悪な背景が遠因となっている」と結論付けている例もある。

かつてこの日本においても「優生保護法」という法律が存在した。1948年に制定された法律だが、1996年に「優生保護法」から「母体保護法」へと改正されている。

▽ 参考:16歳で知らずに受けた不妊手術。強制した国に謝罪を求め、声を上げ続ける

▽ 参考:優生思想の持ち主に投票してはいけない
(優生学と優生思想、自己愛性パーソナリティ障害との関連性)

日曜討論 立花孝志氏の発言

それでは、07月03日の立花孝志氏の発言をそのまま以下に書き起こす。

司会者
NHK党立花さん、立花さんは子供子育て教育予算、これどう充実させるのか、具体策をお願いします。

立花孝志氏
まず、子供を増やせばいいというものではなくてですね、子供の質の問題です。いわゆる賢い親の子供をしっかりと産んでいく。
サラブレッドでもそうです。早い馬の子供は早い、プロ野球選手の子供もすごくプロ野球上手いです。
我々NHK党としては、まず、子供を産んだ女性に、これ第一子だけです。1,000万円を支給する。そしていわゆる、社会でバリバリ働いて、納税されている女性に一旦仕事を休んでいただいて、そして、出産育児に専念していただく、社会保障っていうのは結局は質の悪い子供を増やしちゃダメです。将来納税してくれる優秀な子供を沢山増やしていくことが国力の低下を防ぐ、最終的に弱者を守れるというふうに考えております。

言い間違いかと思われる個所もそのまま書き起こし

この発言が「優生思想」だと問題視されたのである。

立花孝志氏の認識 サラブレッド

では、立花孝志氏が例に出した話を検証してみよう。

まずサラブレッドだが、日本だけで見ても年間約7,000頭以上が生産され(産まれ)ているとされる。その中でGⅠレースを勝つ馬は僅か数頭、現役数年間を活躍してようやく種牡馬になれるのだが、そうして成った種牡馬の産駒が全て優秀なのかというとそうではない。
1990年代~2000年初期にブレイクしていた「サンデーサイレンス」という種牡馬を例に取ると、サンデーサイレンスは多い年で220頭を超える種付けをこなし、10年以上の間多くの名馬を送り出してきた。そしてそのサンデーサイレンス系として「ディープインパクト」「スペシャルウィーク」「ダンスインザダーク」(他多数)といった名馬たちも種牡馬となった。サンデーサイレンスの仔、そして孫まで含めると、世界中で種牡馬になったサンデーサイレンス系の馬たちは400頭以上にも上る。その中には、競走成績は残せなかったが牝系(母親の血筋)を買われ種牡馬となった馬も多い。世界中で年間に産まれるサンデーサイレンス系の馬たちは2,000頭~4,000頭とも言われる。そうして紡がれていく血統馬たちでも、名を残すことができるのは一握りの馬たちだけである。
そして、サンデーサイレンス系に限らず優秀な種牡馬は数多く存在し、代を経ることでそれらの血も交わっていく。しかし、毎年星の数ほど産まれてくる良血馬たちでも、突出して強く速い馬として現れるのは極めて希である。
突出して強く速かった馬でも、代を追う毎にその影響力が薄まることは当然で、意図的に影響力を強めるために同系(同じ血筋)の交配をすると、血が濃すぎる影響でかえって病弱であったり能力が劣る仔が産まれてしまう傾向がある。

別の種牡馬の例では、「オグリキャップ」「メジロマックイーン」「ラムタラ(海外)」などは名前だけなら耳にしたことがあるという人も多いだろう。競走馬としては当時は最強と呼ばれた名馬たちだが、実は後世に続くような後継種牡馬は存在しない。(母系としても数は少ない。)

年間に100~200頭の仔を作り、それを数年繰り返せるサラブレッドでも名馬(とは言わないまでも好成績を残す馬)を誕生させるのは容易ではない。しかし、立花孝志氏の話はそれを人間に置き換えているのだが、一生に作れる子供の数が平均1.5人前後(近年の日本の出生率)の人間と比べることがまず無理があると言っていいだろう。

ちなみに、サラブレッドの寿命は24~25歳といわれており、早ければ2歳で競走馬デビュー4歳で引退5歳から種牡馬入りというケースも珍しくない。そのため、10歳を超えた頃には孫の代が誕生する種牡馬も多い。10~15年で2世代目3世代目になるというサイクルスピードと、種牡馬1頭につき数十~百を超える生産頭数が可能だからこそ様々な研究が行われ、競馬という経済モデルが成り立っていると言える。
現代人の日本人の寿命が「人生80年」と言われるようになって久しい。およそ競走馬の3~4倍ほどあるのだが、仮に優生思想に沿って出生をコントロールできたとして、国民の多くが「優秀」な人々ばかりになるのは、いったい何世紀先の話かという次元だ。
立花孝志氏は、何百年先の未来を視ているのだろうか。

立花孝志氏の認識 プロ野球

次にプロ野球選手についてだが、日本のプロ野球のジンクスの1つにこういったものがある。

二世選手は大成しない

日本のプロ野球の二世選手として有名なのは、ミスター・プロ野球 長嶋茂雄氏のご子息である長嶋一茂氏、ID(Import data)野球の産みの親 野村克也氏のご子息の野村克則氏といったところだろう。その他プロ野球史上では20人前後いるといわれているが、日本プロ野球史上で選手であった者たちの人数と比較すると極めて少ない数である。
2020年にようやく黒田一博氏(元南海ホークス)氏のご子息である黒田博樹氏が広島カープを経てメジャーリーグで好成績を残した。海外のMLBでは昨今(日本人以外の)二世選手が注目を浴びるようになっているようだが、特筆すべき人数が出てきているわけではない。
日本に限らず、MLB(アメリカ・カナダ)の野球史に存在した全ての野球選手がどれほどの数になるのか詳細はわからないが、その人数を想像すると、その子や孫たちが野球で活躍ができる人物に必ずしもなれるわけではないということは想像に難くない。
それは、高校野球で活躍できる選手の多くが、父親がプロ野球選手ではないことからも見てとれる。

立花孝志氏はどのような資料やデータから「プロ野球選手の子供もすごくプロ野球上手いです。」という考えを導いたのだろうか。

立花孝志氏の優生思想

例に挙げた「サラブレッド」「プロ野球選手」の話が上述した通りなので、それに基づいて語られた立花孝志氏の話の続きである「質の悪い子供を増やしちゃダメです。将来納税してくれる優秀な子供を沢山増やしていく」についても、その話の信憑性・信頼性は疑わしいと言わざるを得ない。

そもそも、優生思想において何をもって「優秀」であるかの基準は無い。
立花孝志氏は普段から学歴重視の発言を繰り返していることから、勉強ができれば「優秀」であると考えている節がある。この理論で「優秀」を計るということは、単純に学問における「偏差値」を重視するということになるだろう。国民1人1人の性格・経歴などを精査せずに選別するとなると、「偏差値」で決めるのが一番手軽であると言える。しかし、肝心の立花孝志氏の最終学歴は高校卒、偏差値は39であったとされている。スポーツ面で何か突出していたという話も一切無い。
これが巷で時折話題となっている”立花孝志のパラドックス”の1つである。

実は、立花孝志氏の優生思想は2019年参院選後あたりから指摘されているのだが、その事実を知る人々は多くは無い。

上述した優生学の研究結果の一例「不適者達の存在は、経済的かつ社会的に劣悪な背景が遠因となっている」は、逆説的に言うと「人は遺伝的な影響よりも、経済的な余裕の下、教育の受け方(環境)次第で優秀かつ有能な人物へと成長する」と言えるのだが、それはあくまである程度の成長過程を経て判断されるもので、「優秀な人物の子であるから優秀である」とはならず、優秀な人材を多く求めるのであれば、広く人々が経済的不利益を負わない環境を整え、より多くの子供たちへ教育と経験を与えることでその分母を増やすことでしか実現し得ない。と、私は考える。

洗脳とパラドックス

日曜討論 別の一節

同じく07月03日のNHK日曜討論の場で、立花孝志氏は憲法9条について以下のように語っている。

立花孝志氏
憲法9条で国民の生命財産を守れるなんていうのは、もう、有り得ないです。話し合いで解決ができるんだったら、北朝鮮に拉致された日本人とっくに帰ってるじゃないですか。ですから、日本共産党さんのような左翼政党の言うことに騙されないようにしていただきたいと思います。テレビに騙されないでいただきたいと思います。ぜひ、Youtubeをご覧いただく、ということで、綺麗ごとでは、大切な人や国は守れません。強くなることでしか人は優しくなれません。憲法9条2項、これを廃止し、原発を直ちに再稼働し、日本では武器が作れる日本にしていく。強い国になってこそ、永遠の平和を手にすることができます。

日本国憲法 第九条
国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては永久にこれを抛棄する。
第二項
陸海空軍その他の戦力の保持は許されない。 国の交戦権は認められない。

憲法9条と立花孝志氏の言動については、すでに”選挙ウォッチャー ちだい"氏が詳細なレポートを出されているので、そちらをご覧いただいた方が早いだろう。

これは私の見解だが、立花孝志氏が一番言いたかったのは「テレビに騙されないでいただきたいと思います。ぜひ、Youtubeをご覧いただく」この一言ではないだろうか。

参院選が始まる約一週間前、06月16日の報道ステーションでの途中退出劇の際に立花孝志氏が述べた「テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。」というフレーズに沿っているのだと推測されるが、昨今では「TwitterやYoutubeこそが洗脳装置である」という意見も出始めている。それは、他SNSでもある機能だが「ブックマーク」「お気に入り」「フォロー」「チャンネル登録」といった”自分好みのものを優先表示する”機能が原因であると考えられている。
一般的な学生や社会人では、1日24時間の中でTwitterやYoutubeを見て過ごせる時間には限りがある。自分自身がフォローや登録をしているものは基本的に自分好みであるため、その他のものよりも目にする機会は必然的に多くなり、動画などは1本見るだけでも時間を要することもあるため、その他を見る機会は無くなっていく。すると、自分好みの情報ばかりが集まって来てしまい、”その情報が真実である”という刷り込み効果が発生してしまう。
最初に知った情報や思い込んだ事を”真実”として扱う人々は少ない。後に違う情報を目にしたとしても、そっちが間違っていると考えるようになる。こういった刷り込み効果を利用しているのが「カルト商法」「カルト宗教」というわけだ。

普段から自分が接しているTwitterやYoutubeにそのような効果が本当にあるのか、と疑われている方も多いだろう。できる方は試してほしい。一週間、他からの情報を入れずにNHK党の立花孝志氏や立候補者、その支持者だけを見続けるとどうなるか。結果はおそらく大きくは2通りだ。

① 気持ち悪くなって見れなくなる。
② 素晴らしいと思い込んで応援をはじめる。

どちらになるかは、あなた次第だ。

賢い有権者とバカな有権者

立花孝志氏はこれまで「賢い有権者はNHK党を支持してくれる」と豪語してきた。賢い人間は少数派で、それは自分たちだと主張してきた。

しかし昨今、Youtube動画やTwitterなどで「炎上商法でバカの票を釣りにいっている(大幅要約)」との発言が一部で話題になっている。これは、この参院選で2%を取るためには既存の支持者だけでは足りないため、炎上商法や暴露話に喜んで飛び付き投票することを期待している戦術であることを立花孝志氏自身が認めているのだ。

さて、ここで思い出してほしい。
07月03日のNHK日曜討論で立花孝志氏が説いた「優生思想」、仮に今回の参院選に投票行動で参加する人々の中に、その「優生思想」の排除対象者がいるとすれば、どのような人々が対象になるだろうか。

これが、2つ目の”立花孝志のパラドックス”である。


NHK党 立花孝志 と 優生思想(終)