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衆院選2021 立花孝志 と 諸派党構想 ①

公示日 2021年10月19日より始まった衆議院議員総選挙、(旧)N国党 立花孝志氏が2019年の参院選後に掲げていた「美男美女作戦」は崩壊、その後唱えていた「医者・弁護士が多数」も気が付けば本人すら口にしなくなっていた。そして迎えた第49回 衆議院議員総選挙。立花孝志氏が打ち出したのは、小政党・小政治団体を自分たちで作り、その他個人を急遽集めた「諸派党構想」であった。

本記事では、「諸派党構想」に集まった団体・人物、そして(旧)N国党公認として立候補した者たちを見ていきたい。

(旧)N国党公認 立候補者30名

まずは、衆院選立候補者を一覧で紹介する。
※党名末尾に★がある場合は(旧)N国党関係からの派生団体
※存在が不明瞭な団体は記載していません。

北海道6区 齋藤忠行氏 [ 比例重複 ](内部告発者を守る党★)
岩手2区 荒川順子
宮城2区 林マリアゆき氏 [ 比例重複 ](子供の未来を守る党★)
群馬3区 説田健二氏(議席を減らします党★)
埼玉3区 河合悠祐氏(愛の力党)
千葉7区 渡辺晋宏氏(農業党★)
東京7区 猪野恵司氏(バレエ大好き党 ★)
東京16区 田中健氏 [ 比例重複 ](NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)
東京22区 長谷川洋平氏(炭を全国で作る党★)
神奈川15区 渡辺麻里子氏(歯周病をぶっ壊す党★)
長野3区 池高生氏 [ 比例重複 ]
山梨1区 辺見信介
愛知1区 門田節代氏(女性宮家・女系天皇反対党★)
三重1区 山田いずみ氏 [ 比例重複 ](アシタノワダイ)
滋賀1区 日高千穂氏 [ 比例重複 ](NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)
大阪16区 西脇京子氏(愛の力党)
奈良3区 加藤孝氏(HAGE党★)
和歌山2区 遠西愛美氏(女性議員50%を目指す党★)
広島3区 矢島秀平氏 [ 比例重複 ](ブラック校則をぶっ壊す党★)
高知1区 中島康治氏 [ 比例重複 ](中島やすはる後援会)
高知2区 広田晋一郎氏(皇紀2700年党)
福岡6区 熊丸英治氏(刑事訴訟法の開示証拠の目的外使用禁止条項を削除する党★)
熊本3区 本間明子氏(女性が輝く党★)
大分1区 野中美咲氏(愛煙党★)
宮崎3区 重黒木優平氏(あなたの声をきく党★)
鹿児島4区 宮川直輝氏(パチンコ党★)
沖縄2区 中村幸也氏(ゆたぼん党★)
(以下、比例単独)
北関東ブロック 黒川敦彦氏(つばさの党)
南関東ブロック 渡辺敏光氏(NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)
九州ブロック 齊藤健一郎氏(NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)

以上、計30名。
比例単独3名、比例重複8名で全11の比例ブロックに全て擁立できた格好となっている。

ちょっとした有名人立候補者

今回の「諸派党構想」で立候補をされた者たちの中で、これまでの経緯から少しは顔と名前が知られているだろうと思われる方々をピックアップして紹介しておきたい。

■ 北海道6区 齋藤忠行氏 [ 比例重複 ](内部告発者を守る党★)
2021年04月、(旧)N国党から「元NHK集金人」という肩書を携えて衆議院北海道2区補欠選挙などに出馬。落選。

■ 埼玉3区 河合悠祐氏(愛の力党)
ピエロ風の白塗り顔で選挙に出ることで知られている。千葉県知事選挙、東京都議会議員選挙にも出馬したが、いずれも落選となっている。

■ 東京16区 田中健氏 [ 比例重複 ]
参議院議員 浜田聡氏の元公設秘書。2020年04月の衆院静岡4区補選で同姓同名のもう1人の「田中けん」として立候補した人物。参議院会館で騒動を起こし、その後秘書を辞職した。

■ 愛知1区 門田節代氏(女性宮家・女系天皇反対党★)
(※11/14 ご本人様のご指摘により紹介文の一部を削除致しました。詳細の確認が不十分であったことを、お詫び申し上げます。)
2019年の参院選でのユニークな政見放送が話題に。その後、地方選挙に挑戦するも落選。

■ 熊本3区 本間明子氏(女性が輝く党★)
かつての「美男美女作戦」に名を連ねたうちの1人。
現在も現役で(旧)N国党を支えようと奮闘している。ホリエモン新党・堀江政経塾にも携わり、関連の選挙では時折マイクを握って演説をする、界隈では知られた存在。

■ 沖縄2区 中村幸也氏(ゆたぼん党★)
Youtuber「ゆたぼん」のお父さん。

■ 比例 北関東ブロック 黒川敦彦
政治団体「つばさの党(旧 オリーブの木)」代表
2021年07月に、(旧)N国党の選挙対策本部長に就任している。

■ 比例 九州ブロック 齊藤健一郎
ホリエモンこと堀江貴文氏の運転手兼秘書を務めるという人物。ホリエモン新党の参加者で、堀江政経塾にも携わっている。2020年09月に堀江貴文氏の餃子屋騒動の発端となった(マスクをせずに入店した)人物である。

目立った人物は上記8名といったところである。一部では有名な「アシタノワダイ」などもあるが、SNSでの(旧)N国党界隈で知られた人物に限らせていただいた。

諸派党 その中身、多くの派生団体

純粋に(旧)N国党「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」のみの看板での立候補は4人(比例単独2人 重複2人)である。

では、他の26人は諸派党構想に集まった者たちなのかを見てみよう。

★マークの(旧)N国党関係からの派生団体は17(人)。元々から(旧)N国党に所属していた者も含んでいるが、多くは堀江政経塾に縁のある人物たちである。堀江政経塾とは、あの「ホリエモン新党」が元となって設立されたオンラインサロンである。また、堀江政経塾に関わりがなくとも、以前から立花孝志氏と友好関係にあった者も含まれる。つまり、★マークの団体・人物は「諸派党構想」に共感して集まった外部の団体・人物というより、元々の身内に近い者たちと言っていいだろう。
故に、立候補30人中17人が派生団体、派生団体に属さず「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の名前だけの者が4人、計21人が実質元々の(旧)N国党(繋がり)からの立候補者である。

派生団体の中にある「議席を減らします党」「HAGE党」については、記憶にある方も多いことだろう。2021年06月に行われた船橋市議会議員補欠選挙に出馬していた政治団体である。当時の(旧)N国党関係の立候補者は5団体で5人、立花孝志氏の案で”紙に印字しただけのポスター”が5人ともに使用され、「有権者をバカにしている」「あからさまな選挙ビジネス」等、様々な批判が上がっていた。

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船橋市議会議員補欠選挙のポスター等については、選挙ウォッチャー”ちだい”氏が詳しく分析されているので、興味のある方はそちらも合わせてご覧いただきたい。
NHKから国民を守る党・動向チェック(#282)

諸派党構想に参加する団体の多くは、(旧)N国党からの派生団体であることは上記で述べた通りだ。そしてその多くは、作られて間もなく、活動実績も実体も無いに等しい団体だと言って過言ではないだろう。

では、なぜそのような団体を次から次へと作り、諸派党構想と称して衆院選に臨むのか、立花孝志氏のこれまでの言動と現在の状況を含め、考察してみよう。

票を金換算する 諸派党構想

2021年09月29日、立花孝志氏は自身の動画内で諸派党構想参加者のお金に関わる説明を行っている。
(諸派党構想のお金関連については、この時点より以前から説明がなされており、すでに党HPでも資料が掲載さてれいる。)

「立候補には供託金300万円必要だが、仮に1万票取れば、男性は1票あたり50円くらい、女性は1票あたりほぼ80円、だいたい年間50万円は返ってくる。300万円出しても必ずリターンがあります。(要約)」

わかり難いと思うが、選挙での得票数に応じた政党助成金は1票あたり約78円(ほぼ80円)で計算されており、その中から男性立候補者には1票につき50円くらい(キックバック)、女性立候補者には1票につきほぼ80円(キックバック)するので、年間約50万円は返ってくる。という意味である。

さらに、
「(残りの)立候補地区は早い者勝ちで、党HPの立候補受付フォームから問い合わせてもらえれば、こちらの口座情報を教えるので、そこに300万円振り込んでくれればすぐに公認優先権を獲得できます。(要約)」そして、「今回の選挙は300万円出せば誰でも公認する」とした。

2021年10月04日、衆院選の日程が発表された頃、立花孝志氏は諸派党構想参加者のお金関連の変更を発表する。

衆議院議員選挙(立候補者へのキックバック)
男性:1票=4円×12ヶ月×最大4年=192円
女性:1票=6円×12ヶ月×最大4年=288円
「衆議院は解散の可能性があるため、期間は保証できない。」と説明。

さて、1票あたり約78円の政党助成金の金額をそのままに計算してみよう。
仮に男性1人が1万票を獲得したとすると、政党助成金は年間78万円。男性にキックバックされる金額は1万票×4円×12ヶ月=年48万円である。衆議院任期満了まで続いたと仮定すると、48万円×4年=192万円となる。
1万票×78円=年間78万円のうち、(旧)N国党の手元に残るのは年間30万円。最大4年で120万円である。
女性1人の場合、1万票×6円×12ヶ月=年72万円。72万円×4年=288万円。(旧)N国党の手元に残る金額は、年6万円、最大4年で24万円だ。
上記は、1人の候補者につき、である。

国政政党のやることにしては一見そんなに大きな金額には見えない。しかし、昨今の(旧)N国党の台所事情は相当深刻であったと推測される。
2019年の参院選後に一般個人から借り入れた約5億円、そしてその前からあったと言われる借り入れ約1.5億円、そしてそれらの返済と党とその他の維持費・必要経費も決して安いものではないのだ。事実、「次の衆院選のために」と言って借り入れた約5億円が、当時の話の通り今回費やされたという話は出てこない。
そういった事情等を踏まえると、政党助成金を得るための大チャンスであるこの衆院選は絶対に逃すことはできない。なんとしても出来るだけ多くの候補者を擁立しなければならなかったのだ。

しかし、立候補者個人を相手に「キックバックをするから自腹で立候補してほしい」と言ってしまうと、2021年02月に共同通信社から疑われたように公職選挙法違反となる可能性がある。が、個人ではなくキックバック相手が政治団体が相手ならば話が変わる。今回、新設の政治団体が多く作られ集まった裏には、そういった背景が見え隠れする。
(参考:東スポWEB「NHK党・立花党首に公選法違反の疑い」

今回の衆院選には関係なく余談になるが、次回の参院選についても同様にする旨の説明を行っている。

参議院銀選挙(立候補者へのキックバック)
男性:1票=2円×12ヶ月×最大6年=144円
女性:1票=3円×12ヶ月×最大6年=216円
「当選しなくても、誰が出てもほぼ儲かる。」だそうだ。

「真意」と「真実」

(旧)N国党のホームページで公開されている「諸派党構想の資料」には、こう書かれている。

立花孝志が提案する『諸派党』とは
NHK受信料を支払わない方法を教える党(NHK党)を『諸派党』として、政党ではない政治団体からの候補者を、政党である『諸派党』の候補者とすることで政党以外の政治団体にも、国政選挙の得票に応じて公平に政党助成金を分配する仕組み。
(資料よりそのまま抜粋)

書いていることだけを見ると正しく、素晴らしく見える。

立花孝志氏自身も、「我々が奇抜なことをするのは、弱小政党が注目を集めようと思ったら、それくらいやらないと見てもらえない。今の若い人たちや選挙に行かないような人たちにも、もっと選挙や政治に興味を持ってほしい。そういう願いでやっています。(要約)」と語っている。

言っていることは間違ってはいないし、共感する内容でもある。

しかし、2019年の参院選以降、立花孝志氏が残した言動や振る舞いを見返すと、とても本心でそのように願い、行動しているようには見えない。

そもそも、「政党以外の政治団体にも、国政選挙の得票に応じて公平に政党助成金を分配する」としているが、活動実績も実体も不明瞭な政治団体に、広く国民から集められた税金が流されることが正しい行いだとは私には思えないのである。それこそ、その政治団体を応援したいと思っている者たちの寄付で賄うべきではないのか。私たち有権者は、彼らの身内でお金を回すために急遽作られたような政治団体へお金をあげるために税金を払っているわけではないはずだ。

(旧)N国党本体についてもそうである。
国民を愚弄するような選挙手法を繰り返し、有権者を「バカ」呼ばわりし続けた結果激減した支持率。それでも党として維持したいと言うのなら、応援したい者たちの寄付で賄えば誰も文句は言わない。それを無理やり税金である政党助成金に求めようとするから無理が生じているのだ。
寄付が嫌だと言うのなら、以前したように借金でもすればよい。応援したい人がいるなら貸してはくれるだろう。返せるかどうかは知らないが。

この点については、2019年参院選当時にN国党に投票した方々にはよく考えてもらいたい。こんなことをさせるためにあなた方は票を入れたのか。こんな税金の使い方をさせるために新しい公党を誕生させたのか。今の日本のどこにそんな余裕があるというのか。

また、今もツイッターを含むSNSで(旧)N国党を注視している者は多い。
そういった者たちと(旧)N国党に所属している人物や熱狂的支持者のやり取りを時折目にするが、これまでの経緯や成り行きを踏まえて問いかける前者に対し、後者はその場そのときの立花孝志氏の発言のみを鵜呑みにし、聞く耳を持たないためまるで会話にならない。という風景をよく見かける。

これまでモンキーポッドの記事内で何度も言っていることだが、立花孝志氏の発言の多くは、そこだけ聞くと正論であり、まるで全て彼が正しいかのように見える。だが考えてみてほしい。ではなぜ、最初からそうしなかったのか、と。かつての「予備校前演説騒動」がその最たる例だ。あの件で迷惑を被ったのは予備校にいた若者と周辺住民である。


誰かが何かを語り、それが「真意」だと告げられても、それが本当に真意であるかどうかは確認することはできない。これまで起きてきた事実と、今目の前にある現実を見て皆様には判断をしてほしいと切に願う。

今回、諸派党構想が打ち出された背景に焦点を当て、私なりの考察と見解を述べてみた。約2年間ほとんど変わらぬ手法、人員、名ばかりの新設政治団体、お金問題、諸派党構想の裏にあるその背景に、皆様にも目を向けてもらった上で判断していただきたい。


衆院選2021 立花孝志 と 諸派党構想 ①(続)
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