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本当のバリアフリーってなに?

1.はじめに 
皆さんは、[バリアフリー]と聞くとまず最初にどんなモノが頭に思い浮かびますか?
車いす、手すり、多目的トイレ、スロープなど色々思い浮かぶと思います。これらの道具や設備は、私のような障がいを持つ人にとって生きていく上で必ず必要なものと言っても過言ではありません。
では、少し質問を変えてみたいと思います。[そのモノを使った結果、あなたにとってのバリアは本当に解消されますか?]…何を言っているのかよくわからないと思います。人によっては[その人にとってのバリアを無くすための道具を使うのだから解消されて当たり前だろ!]と答える人もいると思います。ところが実際、そんなこともないんですね。じゃあ、なんのためのバリアフリーなんでしょう…そもそも、本当の意味でのバリアフリーとは何でしょう。これから、車いすユーザーのわたしが実際に遭遇したアクシデントをお話していきたいと思います。話の内容を見て、ほんの少しでも興味が湧いた方は、そのことについて一緒に考えていただければ嬉しいです。
2−1 .使えない多目的トイレ!?
私の仕事は、基本的に在宅ワークです。なので、平日は基本的に家に籠もりがちです。コロナウイルスの流行もあり、休日も同じように家で過ごす時間が大半でしたが、このままでは心身ともに良くないと感じ、数年前から休日になるたびに何か目的をもって外出するようにしています。
 この日は、どうしても買いたいモノがあったため、家から少し離れた所にある。家電量販店に行きました。目的のモノも無事に見つかり、安心した次の瞬間、気が緩んだせいで、何もかも緩んだのか、急にトイレに行きたくなりました。
[今から家まで急いでも間に合わない。確実にヤラカシてしまう]咄嗟にそう思った私は、電動車椅子のスピードを上げ、売り場から一番近いトイレまで全速力で向かいました。幸いなことに、すぐに多目的トイレのマークを見つけました。[間に合った…もうこれで大丈夫!]気分は砂漠の中でオアシスを見つけたような晴れやかなものでした。しかし、扉を開けた瞬間、心は絶望で一杯になりました。[いつも使ってるトイレと手すりがなんか違うんですけど…(泣)]
普段よく利用するショッピングモールの多目的トイレは、利用したことのある人なら分かるはず!右にL字の手すりがあり、反対側にUの字で跳ね上げ式のレバーが上に付いたよく見かけるオーソドックスタイプです。一方、今回見事に、私の心をどん底に突き落とし、尿意をゼロにしてくれたトイレは、左右ともにUの字の手すりしかありませんでした。
L字の手すりの縦の部分を力いっぱい握っていつも立ったり、座ったりの動作をしているので、それがないと途端に何もできなくなります。同じ車いすユーザーの方でもどちらのトイレも問題なく利用できる方は一定数おられると思います。しかし、私の場合は残念ながらそうはいきません。何をするにも力か余分に入り、筋肉が緊張しやすいため、仮に運よく、座れたとしても、立ち上がって便座から車いすに乗り移れないため、呼び出しボタンを押さない限り出られないんです。よくこの話を家族や知人にすると[根性が無いだけやろ?]とか[時間が経って力が抜ければいけるんじゃない]と言われるんですが、そんなに簡単に力が抜けたら苦労しません!自分でも苦笑いするしかありません。力が抜けるのを待っていても、足や手の筋肉が緊張してカチカチになっているせいで汗が出やすくなっているので、便座から滑り落ちるスピードのほうが早いです。常の動作には時間がかかるのにこんな時だけ早いのは自分でもムカつきます。(笑)結局、男子トイレにも手すりが付いているのを発見したので、無事に用を足すことごできました。[みんなのトイレって書いてあるのに、俺だけノケモノにすんな!]心の中でそう叫んだあと、トイレを後にし、家路につきました。
2−2 .簡単にバリアフリー対応可能と言うな!      
うちの母は旅行に行くのが大好きです。北は北海道、南は沖縄まで色々な所へ一緒に行きました。もちろん泊まる旅館は、できる限りバリアフリー対応可能なところを選んでもらっています。
去年か一昨年の11月頃のことでした。母の希望で、兵庫県のとあるホテルに2拍3日の温泉旅行に行くことになりました。事前にホテルに問い合わせをした際に[車いすの方でも安心してご宿泊いただけます。もし、ご希望なら室内用の車いすも貸し出し可能です。]と言われたので、安心しきっていました。ところが、いざホテルの中に入ってみると、自動ドアが開いてすぐ、目の前に階段が見えました。
慌ててスタッフに[エレベーターがあるから車いすでも大丈夫だと聞いたのですが…]と訪ねたところ、驚きの答えが返ってきました。それは、[エレベーターはこの階段を上がった先にあります。ご不便をおかけし、申し訳ありません]というものでした。内心は今すぐにでも帰りたい気持ちでしたが、旅行の用意を私の代わりにやってくれた母の手前、そんなことを簡単に言い出せるわけもありません。怒りの気持ちをグッと抑え、階段を登りました。
幸い、段数は3段ほどで、手すりも付いていたので、割と簡単に登ることができました。降りるときは、登りよりも遥かにしんどいので大変なのてすが、これ以上書くと長くなるのでやめておきます。(苦笑)
段差を登り終えると、上で別のスタッフが室内用車いすを用意して待機してくれていました。私は、その人に対して[ありがとうございます]と言いました。そして、車いすにブレーキをしてもらったあと、ゆっくりと腰を降ろしました。この時はまさか、車いすのタイヤの空気が抜けているなんて夢にも思いませんでした。
車いすにお尻が付いた瞬間[シュー]と音がしました。原因を調べてもらった結果、パンクしていてもうタイヤが駄目になっていることが分かりました。
なぜこんなことになったのか、代わりの車椅子はないのか、腹綿が煮えくり返るような怒りを抑えながら、その場で苦い顔をしているスタッフに尋ねると、[タイヤの点検が不十分でした。申し訳ありません。それと、こちらでご用意できる車いすは、この1台だけなんです。申し訳ありません]と言われました。もう少し私の身体が元気なら確実に掴みかかっていたと思うくらい腹立たしかったです。
その後も、散々なことだらけでした。部屋の中の段差もなかなか高く、室内を車いすで移動できると聞いていたのに、全然違いました。ホテル側いわく、家族で泊まるため、この部屋でも問題ないと思ったそうです。こんな思いをするくらいなら最初から[バリアフリー対応可能です。車いすでも大丈夫です。]など言わずに、断ってほしかったです。ちなみに、玄関から自動ドアまでの間にはきちんとスロープが設置されていました。(苦笑)
3.終わりに
ここまで、私が実際に体験したことを皆様にご紹介してきました。読む人によっては、[このくらいのことで、怒っていてはきりがないだろう]とか[宿泊先に関しては事前調査が足りていないだけではないのか]と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かにそれも一理あります。しかし、写真で見たり、言葉で聞いたりするのと、実際に見るのとでは、やはり違うものがあります。それに、たとえそれがクレームに聴こえたとしても、相手に自分が出来ることとできないことをはっきりと伝えることは、勇気がいることですが、とても大切なことだと私は考えています。2‐2でご紹介した宿泊先のように、事前に問い合わせをしたにもかかわらず、最初に聞いていた話と違うなんてことを避けるためにも重要なことではないでしょうか。
書き始めた当初は、ここでおしまいにするつもりでしたが、そうはいきません。まだ疑問が残っている方がいると思います。[2つ目の話はともかく、1つ目のトイレの件は、理由があるとはいえ、あなたが勝手に慌てただけじゃないか。]と…確かにその通りです。誰も悪くありません。きちんと利用できなかったからといって店員に[私はできないんですけど!?]なんて文句を言ったりもしていません。私が店員なら、そんなお客は嫌です。
ではなぜ、こんなアクシデントが起きたのか、私なりに考えてみました。おそらく、理由は単純で、手すりを設置した側が考えたバリアフリーの質と、こちら側が求めていたものが一致しなかったためだと思います。
私も含めて、様々な障害を持つ全ての人が安心して利用できた時、本当の意味でのバリアフリーは完成するでしょう。けれど、障害には様々な種類があります。それが軽度のものか重要なのかによって、理想とするバリアフリーの質や種類も変わってきます。なので実現するまでには、まだまだ時間がかかると思います。
実現するための第一歩として、まずは、障害にも様々な種類があること、そして、健常者にとってはなんてことない動作でも、思っている以上に大変なんだということを知ってほしいです。それと同時に、そうやって苦労してる部分もあるけれど、意外と日々を楽しく過ごしている私のような人間がいることも知ってほしいです。
最後に、車いすに乗ってるのを見ただけで[可哀想にねぇ]と私に言った全ての人たちへ…そんな哀れなものを見る目で私を見るな!毎日楽しく過ごしているぞ!ざまぁみろ(笑)

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