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「カトリック学校における教育の宗教的次元 ―評価と刷新のためのガイドライン-」5「第五部 まとめー教育プロセス全体の宗教的次元」

こんにちは、Salt運営員会委員の小林由加です。最終回は教育プロセス全体における宗教的次元がテーマです。
 
(一)キリスト教的教育プロセスとは何か?
  カトリック学校の特徴は、キリスト教的教育と宗教的次元をもたない人間形成を追求する教育が相互補完的に働いていること。キリスト教教育のプロセスは、キリスト教という宗教的次元において神の恵みを受け止め、生徒の全人的な人間形成を実現するために、生徒一人ひとりがもつあらゆる能力を穏やかに成長させることを目指して、教育の要素が結ばれていることにある。
 
(二)教育目標
 さて、カトリック学校は教育方法や教育プログラムの枠組みを定めた現行法に従いつつ、人類の文化と福音を融合させた調和の取れたプログラムによって目標を達成しようとする。それは、①福音に誠実であること、②人間の知識の自律性と諸学問分野の固有な規則や方法を尊重しながらも、それが全人的人間形成に方向づけられていること、③生徒と家庭の生活環境を尊重して、教育プロセスに適合させること、④教会と責任を共有することである。
 
 このような学校風土の宗教的次元は、教師のみが作り出すものではない。生徒、家族、地域、国家、国際レベルにおいて、愛とキリスト教的自由に基づいた相互関係を築くことが鍵である。教育目標といえば教師主体になりがちだが、生徒を巻き込むことが重要である。
 
「まだ低学年の生徒であっても、学校の雰囲気が心地よいかどうかを感じ取ることができる。彼らは、自分たちが尊重され、信頼され、慈しまれる時、いま以上に喜んで協力する。さらに、教師がいつも援助する姿勢でいる時、また生徒が他の生徒たちと容易にうまくやってゆけると思える時、生徒たちの快く協力しようとする気持ちは、そのような暖かくて親しみのある学校の雰囲気によってさらに堅固なものとなるだろう」
 
 ではやって生徒を巻き込むのだろうか。それは生徒を愛すること、祈ることである。「生徒は教師から愛されていると感じたならば、教師を好きになるだろう」。このような関係は教師があらゆる機会において生徒に勇気と力をあたえ、励まし、支え、親身になることであり、祈ることで築かれる。人間的であると同時に神的な関係が築かれ、そこに愛と恵みが流れる時、カトリック学校が真に本物となる。
 
「カトリック学校における教育の宗教的次元―評価と刷新のためのガイドラインー」を6回に渡って紹介してきました。本ガイドラインは最後に「対話が希望の土台」と力強く述べています。カトリック学校が現在置かれている状況は決して順風満帆ではありませんが、私たちは本ガイドラインに示された海図と神の恵みというコンパスをたよりにして、対話を通して進む力を頂いたのではないでしょうか。

参考文献
・「カトリック学校における教育の宗教的次元―評価と刷新のためのガイドラインー」(1988年公布カトリック教育省文書)解説・翻訳 浦善考、『神学大ジェクト114号』上智大学神学会神学ダイジェスト編集委員会、2011年。
 

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