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イカロスの翼


小学校の頃にこんな曲を習った。

昔ギリシャのイカロスは
ロウで固めた鳥の羽根
両手に持って飛びたった
雲より高くまだ遠く
勇気一つを友にして
勇気一つを友にして


ギリシア神話の1つ、イカロスの翼を元にした曲。


小学生の頃に習った曲の中でもベスト3に入るくらい記憶に残っている。

(その他はやはり王道ビリーブなんかが色濃く記憶にある。)


当時の私は

太陽のように、人間が己の器に見合わない、近づきすぎてはいけないものに近づくことはいけないことなのだと、そう理解したように思う。


その結果今でも何となくではあるが、この曲は私にとって「戒め」の意味が強い。

昔から私は私のことを、図に乗りやすいと認識している。

丘はぐんぐん遠ざかり
下に広がる青い海
両手の羽根をはばたかせ
太陽めざし飛んで行く
勇気一つを友にして
勇気一つを友にして


この曲の2番、イカロスはロウで固めた翼を羽ばたかせ、太陽に近づいていく。


人間ははるか昔に空を飛びたいという願いを科学技術の力で実現させたわけだが、イカロスも飛んでいく中で見える海や空、緑の美しさにきっと惹かれていたのだろう。


まるでハリーポッターシリーズに登場する「みぞの鏡」のように、見る人は自然とそちらに引き寄せられてしまうような、そんな感覚だったのかもしれない。



そしてイカロスは、高く昇れば昇るほど、太陽に近づいてしまう。

しかし太陽は、人間が近づくことはできないもの、数十年前には考えられなかったほど、科学が進化している今でも変わらず、その全貌を知ることは叶わない。


赤く燃えたつ太陽に
ロウで固めた鳥の羽根
みるみるとけて舞い散った
翼奪われイカロスは
堕ちて生命(いのち)を失った
勇気一つを友にして


ロウで固めた彼の翼は、太陽の熱で溶けてしまい、結局彼は命を落とす。


近づきすぎてはいけないものに近づく
煩悩のままに欲深く生きる

この曲はそんな人間の醜い部分に対して、戒めを与えているようだ、と私は幼心に刻んだ。


最近になって、このイカロスの翼を、曲ではなく、ギリシア神話として読んだ。


どうやらこれは、私の解釈とは少し違う。

人間が生み出した技術への過信を、戒めることば。
コトバンク


迷宮に閉じ込められた人間、イカロスは、父が作った人工の翼をつけて飛び立ち、迷宮を脱出します。ところが、夢中になって舞い上がっているうちに、あまり高く飛んではいけないという父の戒めを忘れてしまいました。その結果、太陽の熱によってが溶けて翼が壊れてしまい、そのまま海に墜落して死んでしまったということです。
コトバンク


どうやら神話としての物語は、ロウで作ったということを忘れてしまった結果、つまり翼(人工的な技術)を過信した結果、溶けて堕ちてしまった、という内容のようだ。


大人になって、この曲の本当の意味を知るとは思いもよらなかった。


だけどぼくらはイカロスの
鉄の勇気をうけついで
明日(あした)へ向かい飛びたった
ぼくらは強く生きて行く
勇気一つを友にして
勇気一つを友にして

この曲は最後にこのようなフレーズがある。
このフレーズにより、私の解釈は神話の教訓と少し差異が生じたのだろうと思う。


恐れを持たず翼を大空に向けて羽ばたかせる、この曲の詩はイカロスにそのような見方を付与している。


自分の力や確信のない何かを過信せず
また過剰に臆病になることもなく
羽ばたかせないと飾りになってしまう翼を
自分の力で目一杯羽ばたかせないと
人より高く飛ぶことはできない。

そんなことを私は思う。

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