林檎の妖精 #21

ゆっくりと光のもとへ近づいていくと、徐々にその正体が見えてきた。

(・・・列車だ。)

そう、私がもう一度乗りたいと心から願っていたあの列車だった。あまりの突然な出来事に声が出ない。

「お父さん!電車だよ!!」

琴は興奮した口調で、私の手を引っ張る。

わたしはまだ上手く喋れない。

「ねぇお父さん、乗ってみようよ!!」

琴はテーマパークにある乗り物のような感覚で私に提案してきた。この列車に一度乗っている私は、そんな気楽に考えることは出来ない。

これがもしあの【夢幻鉄道】だとしたら、今まさに誰かが夢を見ているということだ。これで、うちの娘達の夢ではないことが確定した。

(・・・一体、誰の夢なのだろう。)

悩んでいる時間はない。この夢を見ているどこかの誰かが起きるまでの限られた時間しか、あの世界にはいられないのだから。

「ねぇ、お父さん!」

「・・・あ、あぁ・・・よし!乗ろう!!」

琴と一緒に駆け足で列車に乗り込むと、ドアが閉まり列車はゆっくりと走り出した。

乗り込んですぐのとこにある席に、琴と並んで座った。離れたところに車掌が立っているのが見える。私は立ち上がって周囲を見渡してみた。

今日は私達以外に、乗客はいなかった。

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Created by Ryohei Osawa

こちらは、キングコング西野亮廣さんが現在制作を進めている【夢幻鉄道】という作品の「二次創作」となっています。

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