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2020.6.26 思考持久力を育てる古典教育⑤

外国語との格闘

長崎に遊学した後、福沢諭吉は大阪の緒方洪庵の適塾で本格的にオランダ語を修行します。

塾ではオランダ語の試験があり、徹底的に読む訓練をしていました。

福沢自身も、読解をするという地味な勉強をひたすら何年も熱心に続けていたといいます。

月に6回も試験があり、オランダ語を読む実力があるかないかが明確な基準で計られ、順位がつけられました。

これは各人それぞれのテーマで研究し、レポートを出すといった種類の教室とは全く異なります。

個性や主体性といった要素ではなく、外国語を読むための語学力がひたすら求められました。

そうした修行を何年も積んだ結果、福沢には外国語の読解力が技として身についたのです。

今日で言えば、英語の受験勉強を何年もかけてみっちりやったということです。

外国語の文法と格闘し、ひたすら多くの単語を暗記する。

それは春秋左氏伝を繰り返し読むのと同様に、思考の持久力を鍛え、学問をする喜びを深めたと思います。

福沢は、こうして得た外国語力と論理的思考力で西洋文明を咀嚼し、漢文の力で得た自在な表現力をもって、
「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」
「独立の気力なき者は、国を思うこと深切ならず」
などの名文句を生み出し、明治日本の国民に向かうべき近代化の道を指し示しました。

明治日本を導いた福沢の創造力や問題解決能力は、何年にもわたる古典や外国語との格闘を通じ、鍛えられて初めて得られたものです。

それは、小学生がプロ野球の選手になるまでに10年以上も体力作りと守備・打撃などの地道な練習が必要なのと同様です。

見た目はちょっと面白そうに見えるこんにゃく作りを1時間ほど議論して、創造力や問題解決能力が育つと期待するのは、小学生に自由にボール遊びをさせていたら、やがてプロの選手になれると期待する勝手な思い違いをしているのと一緒ではないでしょうか。

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