見出し画像

せいてんのへきれき

雲の上

LAXに着いて空港カウンターへ急いだ
関西への深夜便はANAしか運航していない。
乗せてもらえるかどうかはイチかバチかだった。

カウンターにはまだ誰もいなかった。
深夜の空港カウンターは各社がシェアしていたので
私が到着した時はどこか知らないアジアの航空会社の看板が出ていた。

私は近くにいた空港スタッフに事情を伝え
エアラインスタッフがいつ来るのかを聞いてみた。

『とりあえずそこに並んでな、だけど
乗れるかどうかは航空会社に聞かないとわからないよ。』
彼は指さしながら不愛想に言った。

私は言われるまま列の先頭に立ってはいたが今夜の便に乗れるかどうかの保証はなかった。

頭の中はパニックを超えて妙に静かでどちらかと言えば真っ白だったが
次第にあることを思い出していた。


1年前、
この同じ場所で泣きながら並んでいた。
あの時は父が危篤だった。
末期がんと闘っていた父の様子が思わしくないからということで
日本に帰る予定をしていたまさにその前夜に兄から連絡があった。
あと一日なのに。。。。あと一日で帰るはずだったのに。。。

あの時も職場からLAXに向かった、
深夜で予約をしていた旅行会社と連絡がつかずチケットの変更ができないので最後の手段として空港カウンターで泣きつくしかなかった。
大好きな父が死んでしまう....
一人泣きじゃくりながら順番を待っていた。
2時間近く待ったあとようやく私の番というまさにその時
私の携帯が鳴った。
母からだった、
『お父さんのことは任せなさい。とりあえずお父さんの状態は落ち着いたから予定通り明日の便に乗りなさい。』
父が亡くなって1年。

今度は母のために飛行機に乗ろうとしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?