見出し画像

「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは!
「不思議な薬箱を開く時」です。
手強い病気が現れてくる昨今。
それに対抗するための新薬も、
いろいろと開発されています。
人類は、大昔から、
痛みや苦しみから逃れるために、
薬を研究してきたのです。
では、今日も、お薬箱を開けてみましょう。

画像1

お薬番号・36

「他人の見ているものがわかる薬」

誰かが見ている何かを同じように見ることができるとしたら?
あの人は、どこへ行き、何を見ているのか?
そんなことが気になる時は、
このお薬が、お役に立つと思います。
このお薬は、アラビアの医師、
アヴドゥール・レシェンが、
サルタンの命により、
開発したものです。
背信の輩を探させるためにということでしたが、
サルタンが溺愛していた美しい妻が、
自分のことをいつも見ているかどうかが、
知りたかっただけだという説も。
まあ、しかし、サルタンの命に逆らえば、
首が飛んでしまいますから、
頑張るしかないですね。
この製剤法は、いくつかの資料とともに、
ボローニャ大学に保管されていました。
アヴドゥール医師は、度重なるサルタンからの無理難題に嫌気がさし、
イタリアの商船を使って亡命しましたから、
その際に、持参したのでしょう。
イタリアの商人としては、
お金になりそうな交換条件を受け入れて、
アヴドゥール医師の亡命を手助けしたのですね。
では、調剤料をご紹介しましょう。

画像2

「他人の見ているものがわかる薬」処方

シェルクク蛇の毒液・・・・・・・・10㏄
ミュラのチンキ・・・・・・・・・・3㏄
ポーポー・・・・・・・・・・・・・1個
ザクロの果皮・・・・・・・・・・・1個分
羊の結石・・・・・・・・・・・・・2個
オオコウモリの眼・・・・・・・・・・・2匹分(4個)
琥珀の粉末・・・・・・・・・・・・12g
眠り鮫の肝油・・・・・・・・・・・・・1匹分
海綿・・・・・・・・・・・・・・・大1個

画像3

諸注意
シェルクク蛇は、猛毒です。
気をつけて、毒液を採集してください。
眠り鮫は、ホオジロザメや、アオザメなど、
海底から真水が噴き出している場所で、
じっとしている鮫のことです。
本来ならば、泳ぎつづけていないと、
呼吸が出来ないのですが、
そこでだけは、じっとしていても平気なようです。
そこを上手く捕まえてください。
オオコウモリは、別名をフルーツバットと言われています。
上質の果物だけを食べさせて育てたオオコウモリの眼を
使用してください。

画像4

備考欄

あの人は、いつも何をしているのか?
人の生活を覗き見するこの薬は、
サルタンの好奇心や疑念から生まれたものです。
好きな人の日常を知りたくなるのは、
ある意味、あたりまえなのかもしれませんが、
あまり、いい趣味とは言えません。
相手が見ている世界を知ることで、
幻滅してしまうこともあります。
視点カメラというのがあって、
それを付けると、その人がどこを見ているのかが、
わかるカメラがありますが、
ああいう感じに似ていますね。
自分だけを見つめていてほしい、
愛あればこその素直な気持ちですが、
相手の美点に、視点を合わせているのも、
愛だと思います。

画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?